GELTO DV 黒モデル

第二次大戦の少し前、1936年から作られた高橋光学のゲルト。特に、ピカピカメッキのシルバーゲルトが有名で、多くの方が紹介されている。



私のところに来たのは、ジャンクまとめてセットの陰に隠れていた物であった。相場とはかけ離れた価格だったから多くは期待していなかったのだが、程度は意外に良かった。
黒塗り、皮張り仕様でオーソドックスだがゲルトにはあまり見られないタイプだ。

レンズとシャッターには問題なく、ヘリコイドの固着とカウンター不良だった。ヘリコイドは外から一部が見える形式だから、汚れが入りやすく、固着は不思議無いところだが、少し油を差してしばらく待つと簡単に動き出した。見える溝を清掃して滑らかに動くようになった。



ネジの相手が接着が剥がれてガタガタしていた軍艦部は、見たことが無いつくりだった。検索ではこの形の軍艦部は発見できない。DVだから戦後すぐのものと思われるが、良くわからない。怪しげなカウンターがついているが、材質が悪くて整備できない。赤窓があることと、120フイルムからの切り出しなので20カットは写せるから、ここは結局形だけの整備となった。



D-Vはウラブタがアセンブリーで外れるタイプのはずだが、これは戦前型同様上から落とし込むタイプだ。このフイルム入れはなれないとなかなか面倒だが、ほぼ同じ形式のヴィルジン・ジレッテを愛用しているから慣れている。それでも汗をかいたときには大変だ。



レンズはアナスティグマート・グリンメル、5.0cmでF=4.5である。このレンズはどの機種にも共用されているようだ。



塗装や皮の材質はそこそこ良く、手入れしただけで十分になった。



当然ながら沈胴式で、少し前進する。少しがたつくのもお約束のようだ。



しっかりした赤窓。これがあれば20カット写せるのでむしろありがたい。

《試写》

手持ちの関係で全てプレストにて写してみた。



左は適正露光だが、右は太陽を入れたので最高速で一杯絞り込んでもまだオーバーだった。上下はヘロへロなのがわかるだろう。127では良くあることなので、もう驚かないが、平面性は極めて悪い。しかし、描写は面白いのだ。



これもオーバーなのだが、なかなか雰囲気が出る。



やってしまった二重写し。滝が二本になった・笑



港にて。ピントが合いながらずれがあり、絞り込んでいるが周辺落ち。しかし不思議と力強い描写だ。



目測なのに50センチまでと、理不尽に接写が出来る。最短距離で実験してみた。意外に使える。

ゲルト・高橋光学は戦後まもなく消えたので、わからないところが多いが、意外なほどまじめなつくりだ。一部の材質が悪く、簡単にネジが舐めたり穴が広がってしまったりしている。これは物資の不足した時代を考慮すれば、無理からぬことだ。
ヘリコイドは手抜き無しのもので、数ミリとは言え35ミリより画面が大きいし、今の120フイルムから切り出せば、少なくとも20カット写せるのだから実用性は高い。フイルムさえ切り出せば難しさは無いので、かわいらしい実用カメラとして使える。

この手のカメラは、飾られるだけで使われないことが多い。しかし、カメラは飾り物ではない。使ってこそカメラなのだ。


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