Ensign AutoRange220

 既に消えて久しいが、エンサインはイギリスを代表するカメラメーカーだろう。19世紀後半から第二次大戦後まで、幾多の名カメラを送り出し、経営に行き詰って消えたが今もその製品の評価は高い。
それらの中の代表的機種はなんと言ってもオートレンジだろう。距離計が連動するのはそれほど驚きではないと思うのは現代カメラだけのこと、コンパクトさを求めた蛇腹カメラでは、連動距離計を搭載するものは極めて少ない。エンサインの他には、スーパーイコンタ、RFベッサ、バルダスーパーポンチュラ、マミヤ6、パール、スーパーフジカ6などが有名どころか。それぞれその社のスプリングカメラとしては最高級機種で、それぞれに今も魅力的カメラである。

 前置きが長くなったが、このカメラは仲間のSCRさんから拝領した。画像掲示板のキリ番を踏んだら、これを送ってくれたのである。高価なものだけに畏れ多くて足を向けて寝られない(いろいろな方に世話になっているので、足を向けられる方向はごく限られてしまった・笑)
それだけに、しっかり整備してしっかり写すのは言うまでも無い責務と心得る。



 66と645のカメラで、1941年ごろに作り始められたらしい。コンパーラピッドを使い、レンズはロスエクスプレスが特に有名だが、これはLUKOSというレンズがついている。エンサインコレクターのページのところで見たが良くわからない。エンサインといえばロスエクスプレス、ロスロンドン、エンサーなどは知っているが、ルコス(?ルーカス)というのは初めてだ。知られているものはいずれも素晴らしい切れ味とコントラストを誇るものだから、これもそれらの延長にあるだろうというのは、ノンコートのこのレンズを見た瞬間から感じた。



送っていただいたものは完道だが極めて二重像が薄い。私の目では実用できないので、ハーフミラーを交換することにした。ほぼ定番の開け方だが、なぜか巻上げ軸が抜けない。止む無く強引に持ち上げて軍艦部を開いた。



向かって左側にファインダーがあるのが変わっているが、距離計としてはわかりやすい構造だ。



ハーフミラーは接着ではなくはめ込みで、薄い板バネで固定されている。引き上げれば簡単に交換できる構造だ。レンズボードの前後運動で全群が動き、その動きを二枚のカム板で反射鏡に伝える方式。像の調整は非常にわかりやすい。



ハーフミラーは見事に薄くなり黄変していた。交換は手持ちのコニカEEマチックのものがぴったり使えた。



シャッターはリンクで切るタイプだが異様に重い。シャッターブロックを外して確認すると、リンクの固定ネジが緩み、力が上手く伝わっていなかった。



ネジをロックタイトで固定したら直った。シャッターブロックを外したので、ついでに各部に給油した。









《試写》

試写はSCRさん提供の、ARISTA PREMIUM 400にて実施した







ぐずついた天候だったがコントラストはきちんと出ていて、しっかりした画像だ。最後のカットはフードをつけずに太陽に向かって写したが、ゴーストは発生しなかった。ただし、コントラストの低下と像のにじみは発生した。

☆原始的なカメラだが、意外なほど使いやすい。一枚目を赤窓で出したら、以後はカウンターで枚数が確認できる。実質的にオートマットとして扱える。枚数表示板はピンで止まっていて、裏返しにすると66-645の変換が出来る。内部の切り替えは斜光板で行うから途中で変更は出来ない。これはなかなか便利で、有効な構造だ。
 写りはさすがにオートレンジ、周辺まできっちりしている

《謝辞》

SCRさん、素晴らしいカメラをありがとうございます。実に面白いです。末永く大事に使わせていただきます。

Juiy 31/2009 kan


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