YASHIKA 72-E

 私はハーフが好きだ。ただしちょっとへそ曲がりで、ペンではなくリコーやフジ、ヤシカなどかつては傍系だったものがお気に入りだ。もちろん、異常な高値のペトリハーフやフジカミニ、オリンパスワイドには興味は無い。ハーフはサブカメラ、高価であっては意味が無いからだ。(もちろんくれる人があれば謹んで頂く・笑)

 ヤシカはハーフ14、ハーフ17という高性能なシリーズがあり、侮れない実力派である。そして、それらの原点は今回報告する72―Eである。



 1962年代のヤシカは次々にハーフカメラを出している。ラピードやセクエルなどの野心作を出した後、手堅く安価な実用機として発表された72-Eについては、ビュッカーさんと他に少し報告があるだけで、例をあまり見ない。数があまり出なかったようで、すぐ後のハーフ14ほど出てこない。
 しかしスタイルや考え方などは後のハーフ14にしっかり受け継がれている。つまり、72-Eはそれらの初期型と考えられる。各カメラの初期型には、後の発展の元としてメーカーの気合が入っているので、良いレンズが多い。

 「72E」は私が最も乗り込み好きだった、ホンダCB,CL72のエンジン名そのものだから(正確にはC72Eなどと表記する)ますます気になっていた。



 ヤフオクでほとんど対抗馬もなく落としたのが届いた。予想通りしっかり汚れているし、シャッターは動かず巻上げも出来ない。構造的には特別ではない(独特の絞りなどを除き)ので、さらっと分解した。



下部は簡単な作りで、巻き上げに応じてシャッターセットレバーをバネで引っ張る部分と、手動であわせるカウンターしかない。ここは特に問題ないので清掃給油した。



前板はなく、内側から4本のネジでレンズバレルが止められている。本体とのつながりは、露出計からの電線とシャッターチャージ部のみだから分解は容易だ。



絞りもシャッターも羽根が外れていたので、後ろから分解するのだが、硬化した電線が邪魔してシャッター羽根が上手く組めない。不動なのと私には露出計はほとんど要らないので、思い切って切断した。後で必要なら再配線すれば良いだろう。(おそらくやらない)



絞りは4枚だから、慣れていればそれほどでもない。何でバラバラになったかというと、中玉兼ヘリコイド部が緩まず、その下の羽根を押さえる所からはずれてしまったから。



何とかシャッターと絞りを組みなおした所。これでシャッターも絞りも直った。



レンズ回りが直った(つもりだった)ので、軍艦部も分解して各部清掃、組みなおすことにした。



古い接着剤が残るとでこぼこになる。剥がした皮を徹底清掃して張りなおす。











☆この段階で試写した。結果はすべてにフレアーの嵐だった。原因は後玉の曇りだった。最初の分解時に汚れているので清掃したつもりだったが、きれいになっていなかったのだ。幸にも平面なので、磨いたら何とかなった。

 こう書くと簡単だが、たとえ平面でもごく直径が小さいので、往復運動だと周辺が強く磨かれてかまぼこ型になってしまう。これを避けるために平らなガラスの上で少しずつ位置を変えながら回転運動で磨く。単調で根気と注意深さがいる作業だ。





弟たちを従えて記念撮影。ハーフ14、ハーフ17の原型だと良くわかる作りだが、わずかに小柄だ。(ロゴは後で色を入れた)

《試写》

フイルムはいつものアリスタ・プレミアム100にて

「最初の試写」





 磨く前のもの。非常に軟調なので、これでも画像処理で上下を詰めているのだが、軟調だけでなくハイライトは全てフレアーが入った。こういうのを「このトーンもノスタルジックだから使える」という慰め方があるが、それは言い訳というか、強がりだ。少なくとも私は先ずはきっちり写るようにし、その上で必要ならソフト化すると言う考えなので、ピントが狂って画像が歪む危険を冒して磨いた。







 改善した。全く別のレンズかと言う画像になった。

☆カメラとしての評価だが、後のハーフ14などと比較すると、全てマニュアルだというのが特徴だろう。露出計は指示するだけだから、撮影結果は使う人の腕にかかっている。露出に自信が無いならオートの方が優る。その点をクリアーしているなら、こちらの方がテクニカルだ。プログラムシャッターではないから思いのままに使える。

 もちろん時代的結論はオートになってゆくわけだが、現代に遊ぶには全てマニュアルという潔さが楽しい。小さいカメラには珍しく、アイレットが両側についている。私は肩か首から下げたいのでありがたい。スナップ式は右手に限定されるし、他のカメラとの併用が面倒なので、無ければ強引に増設する。従って手抜きされていないのは好感度が高い。

 レンズの評価について、このカメラはあくまで私が再研磨したものなので参考に留める。はっきり言えるのは、この状態でも立派に使えるという点だ。。ハーフで記録する役割を立派に果たせる実力を持つ。従って、完全品はもっと良いと推定できる。


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