RICOHFLEX V>

JFCのお仲間、カーミさんからの宿題。これを解くのに一週間かかった。

リコーフレックスVは昭和25年新発売の普及版二眼レフである。終戦からまもなくで、カメラは輸入品か 戦前のものが多かった。国産高級機は軒並み当時でも1万円はしたので、サラリーマンの月給の数倍、 とても庶民のものではなかった。以下はリコーのホームページに掲載された説明を引用させていただいた。


敗戦日本の何も無い時代に、必要機能をしっかりそなえたカメラとして現われました。まともなカメラは 2万円以上でしたが、リコーフレックスは6千8百円の価格が爆発的人気となり、定価販売の銀座三愛の 前は地方から買い出しに来る人までの行列ができました。 町中ではプレミアムがつき、1万1千円で売ら れたこともありました。このカメラが 日本のカメラの普及のキッカケを作ったことは、歴史に語られるよ うになりました。(リコー・カメラライブラリーより)


我が家にはずいぶん惨めな形で到着した。皮は全てぼろぼろで、あちこち錆びている。レストアするレベルと言うより 「完全分解修復」レベルである。かわいそうなので、まずは全部品をバラバラにした。



ここまでばらすのにせいぜい15分しかかからない。もちろん先に各ネジに注油ししばらく放置した。 ねじの頭がつぶれたらレストアの面倒は何倍にもなる。

このカメラは部品点数が少なく非常に整備性が良い。というよりいかに 安く作るかを追求した結果だろう。これなら四畳半でも組み立てられるというのがよくわかる。
以後のこのシリーズはほとんど共通した作りで、わずかにレンズ・シャッターなどが後に改良されたらしい。

ワイヤブラシとペーパーというおよそカメラレストアでは使わないもので、掃除した。
真鍮のワイヤブラシなら塗装面以外は使える。アルミを磨く時はカーワックスをつけると清掃・艶だし・防錆が 同時にできるので、お奨めできる。ただし、ワイヤを動かす方向は一定にして細かい擦り傷をつけないよう注意が必要。 金属以外は歯ブラシが良いだろう。

ここから各部の点検と調整だが、シャッターとヘリコイドに問題ありだった。



シャッターの構造はまことに簡単、100分の1秒を基本として、途中へ引っかかるタイムラグで25・50分の1 を作っている。油切れだったので、レンズを外してベンジンに漬け、注油した。壊れるところがほとんど無い シャッターなのであっさり回復した。



絞りは10枚でボケ味が良いことが期待できる。少し渋いがそのままとした。

ヘリコイドはテイク側のギヤ部分が外れない。イモネジの頭が腐食で無くなっている。仕方ないので前球全体を ベンジンに漬け、汚れ落としをはかった。新しいグリスをつけた。(きれいになったが動きの渋さは残った。)



「ニッペ・さびチェンジ」を塗った。これは赤錆を安定した黒サビに変化させるもので、それ以上サビが進行しない 効果がある。薬剤と水性エマルジョン塗料を混ぜたもので、塗ってしばらくすると赤錆が確かに黒くなった。
このあと、水ペーパーで軽く研いで、塗装した。

塗装は本来、凸凹修整・サビ落とし・パテ飼・研磨・プライマー・サフェーサー・下塗り・上塗り、とやるのが 本格塗装。パテ以降はその都度水ペーパー研ぎする。しかし、これだけ痛んでいると塗装のみピカピカにしても かえって違和感がある。そこで、使い込んだ感じを出すため、汚し塗装とした。具体的にはつや消しブラック と艶ありブラックを交互に吹いて、あまり光らず、少しざらっとした表面とした。

皮も全面張替えである。いろいろ探した結果、昔の皮ジャンパーを使うことにした。カメラとほぼ同じ時代のもので、 多少赤みがあり、いい味なので採用した。



皮の貼りかけのところ。



皮は貼りたい部分に糊で紙を貼り、周りをまず爪などで印をつけ、次に鉛筆などで形を取る。これを皮に 裏から貼って、(当然型紙は裏返し)切り出す。穴などはポンチとカッターで切ると良い。



皮を切る時には必ず定規を当てる。今回は一般的なカッターで行った。角の丸みはあとからつければよい。



貼りあがり。このあとオイルとワックスで磨いて外観完成。(同時に組み立てた)



ピント合わせ。まず無限遠をテイクレンズであわせる。ピントグラス(スリガラス)をフイルム面に固定し、 シャッターはレリーズでバルブ(開放)固定し、ルーペで見てしっかり合わせる。
次にギヤ付きリングを外した状態で、ビューレンズのヘリコイドを直接廻し、無限遠を出す。 そのあとギヤ付きリングを固定する。近距離でのピントを確かめ、何度か行うと良い。


完成図!




ああ堂々の完成写真。まあ苦労した甲斐があって、概観は直った。問題は写るかどうかである。
完成即試写。失敗ありだが何とRDPVである。さてどうだろう。ただしヘリコイドは非常に固く、片手では まわりにくいので、あらかじめ両手で合わせての撮影になる。とてもつらいがまあ何とかなるだろう。 このくらいで大変ではレストアしたカメラを使うなんて無理だから。


《試写》


港へまわった。問題発生と言うより大ボケをやってしまった。シャッター速度を100分の1にしたつもりが、 何とバルブにしてしまっていた。結果として4枚撮りのフイルムにしてしまった。アーもったいない。



我が家へ入る道。意外なほど自然な描写だ。



ここからは港にて。カモメが乱舞している。



川と海が接するところ。空も海も青い!



富士山と田子浦港。定番です。



亜哉さんと怪鳥好みの船。




まあこういう結果だった。どうもこのレンズは後のタイプより描写も発色も優れているように感じた。 ご覧になった方の感想はどんなだろうか、気になるところだ。




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