UNIVERSAL MERCURYU>

このカメラは私にとって不思議な縁で手許に来たので印象深い。
先日出来上がったペンタックスSpの試写に田子浦港に行った。カーフェリー乗り場には初老のカメラマンがいた。
ひとしきり写した後、カメラ談義になった。しばらく話す内彼が「家にいらないカメラがあるので捨てようか と思う」と言い出した。機種はオリンパスペンDともう一台ひどいのがあるそうだ。

捨てるくらいなら譲ってくださいとお願いしたら、快諾を得て後日うかがうことになった。
約束の日、門の前で待っていてくれ、玄関でお話した。ペンは非常にきれいで、巻き上げ系を直せば使える レベルのもので、とても捨てるには惜しい。もう一台はとんでもなく汚い見かけぬカメラ、でも国産では 無いのが見て取れた。友人の方が燃えないゴミから発掘してくれたそうだ。
何も礼などいらないと言う伊東さん(持主)のお言葉に感謝していただくことにして、後日報告を約し、お暇した。

家に帰って点検すると、全ての稼動部分がアルミ腐食で固まっているが、どこかで見たカメラなのでネットで 調べた。戦後まもなくのアメリカ・ユニバーサル社の物と判明、けっこう貴重品のようだ。これがごみ置き場 に捨てられていたとは信じがたい。何としても動くようにしようとがんばることにした、



前から見ると実に不思議な形だ。これはロータリー式のメタルフォーカルプレーンシャッター、つまり オリンパスペンFの元祖のような形式だ。あまり不思議なものなので、以下に作動を説明する。



後のふたを取ると扇形の二枚の板があり、シャッターセット後の部を押して動かすと、二枚の間が変化する。
つまりアパチゃーサイズの変化で露出時間が変る。角速度が一定なので、明るさは均一になる理屈だ。



バルブで止めている。この状態が露光中だ。



完成図である。ここまでにおよそカメラレストアでは使わない道具を使った。
真鍮のワイヤブラシ・サンドペーパー・コンパウンド・カーワックス・etc・・・・・

特徴あるシャッターがクルンと回ったときは、感動の瞬間だった。楽しいレストアだ。
勢いで試写してみることにしたが、巻き上げトラブルで一度失敗、再挑戦の結果だ。カメラのキタムラの 周りで速攻で写し、スピード仕上げさせて見て、何はともあれ写っているのにまたまた感動してしまった。

この楽しみを与えてくれた伊東さん(静岡県沼津市原地区在住の紳士)に改めて感謝する。ありがとうございました。

【諸元】

Universal Camera Corp. USA
1945年(I型は1938年)
35mm ハーフサイズ(18x24mm) 65枚撮り
目測式、直進ヘリコイド
Tricor 35mmF2.7(3群3枚)
他に75、125mmレンズあり、レンズ交換可
ロータリー式メタルフォーカルプレーン
T、B、1/20〜1/1000秒 ホットシューF接点
撮影最短距離 1.6 フィート
145x95x60mm / 600g

(The Classic Camera のデータを参考にさせていただきました。)


《試写》



キタムラそのもの。少しオーバーだがしっかり写っている。



同じくだ。富士山の曇りはスモッグによる。



西友工事中。



工事中の人。暗いところがしっかりしている。



オーバーで飽和気味だが色は悪くない。周辺落ちも無いがなぜか筋がついている。



黄色はフレアーっぽい。近景の緑とは対照的だ。



これは60センチを目測で写したので少しピンが外れているしオーバーだが、 近接撮影1フィートまではできる。使い道は広い。



200分の1でランニングショット。さすがにぶれているし、フレアーもあるが、モノクロに使えそうだ。



車への写り込みは美しい。赤はよく出るようだ。



逆光にはやや弱い。



画面の左右で画質が大幅にぢがう。これを特徴として生かせば面白いだろう。

とにかく面白いカメラだ。シャッターを切るとシャッターセットノブがクルリンと回る。それも目に見えるほど のんびりで、これでは写される人も笑うだろう。こののどかさが持ち味だか、画質もなかなか侮りがたい。
決して完全とはいえないコンディションでこれだけ写るのだから、ハーフ判でもあり、お出かけ用には最適だろう。

私のカメラはまだ完全に安定しているとはいえない。時々シャッターの回転がいい加減遅くなる。しかし そういうことが苦にならない楽しさがある。これもカメラの魅力のうちだろう。


OLYMPUS PEN D

これもマーキュリー2と同じく沼津の伊東さんからいただいたカメラだ。

巻上げ不良と巻き戻しノブ破損が症状だがね外観も内部もいたってきれい、ここまでの管理の良さがしのばれる。
皮をはがしてレンズを外し、シャッターをブレーキ用の掃除スプレーで洗ったあとベンジン処理(JFCの 優さんのテクニック)し注油した。一日経ったらシャッターは動くようになった。




ところが、巻上げ部はまったく駄目である。何度見てもシャッターチャージのストロークが不足している。
いろいろ点検したが、どうもおかしい。先輩のたかさきさんのレストア報告で注意せよと言われた、巻き上げ の元になるシャッターチャージ部のリングが最初から無いのに気づいた。
ボールペンの金属部で代用品を作ったが、チャージはできない。



思い余ってたかさきさんに相談したところ、見てくれると言うので四国に送った。

わずか四日で戻ってきた。巻上げ快調になった。ただしシヤッターが切れにくいので良く見ると油が少しついていた。 これを清掃して一件落着、無事試写にこぎつけることができた。
たかさきさんにはあらためて感謝する次第だ。



《試写》

急ぎだったので、特に被写体は選んでいない。手当たり次第に写してみた。(画像をクリックすると拡大します)



定番のパンフォーカス。



中心部のみ。4倍に拡大している。ピントは非常に良い。



水仙。まあまあの描写。露出はオーはーだった。



傘を差して映り込みとピントチェック。文句無し。



激しいコントラストだが、暗部もつぶれていない。立派なものだ。



風で枝がぶれるのを狙った。逆光でも発色良し。

ハーフカメラでここまで写れば上出来だ。発色はペンFTなどとそっくりズイコーの色だ。穏やかな色調は十分 今も現役でつかえることを証明している。お出かけカメラになりそうな予感がする。

いただいた伊東さん、レストアを手伝ってくれたたかさきさんに改めて感謝する次第だ。「ありがとうございました。」
伊東さんにはこのページのコピーを添えてお礼申し上げるつもりだ。



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