45体験

写真をやっているといつも越えられないと意識する壁があった。45版以上のいわゆる大判である。プロはみんなこれだと(実際にはそんなことは無いのだが)言われると、肩身が狭い。使わないで論じるのは嫌なので、いつかはと思っていた。
その背中をおもっいっきり後ろから突き飛ばしたのが、Idacさん(カメラッコ氏)と610さん(九州男児)だ。お二人の脅しに乗って、ついに手を染めてしまった。(嘘だという声あり)



といっても、ビューカメラで何時間もかけてセッティングするなんて真っ平ごめんだ。前の仕事でチラシ用のブツ撮をずいぶんやっていたので、いい加減飽きている。生きた景色が撮りたいから機動力のあるプレスカメラを選んだ。

これは「45初心者体験記」である。

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さて、45(シノゴ)は基本的に一枚ずつのシートフイルム(カットフイルム)を使うので、それを安全に入れるケースが必要になる。フイルムはとても大きい。



上が45、下はブローニーである。倍以上の面積だ。ちなみに、35oとは13倍だそうだ。



一番左がカットシートホルダー、両面に一枚ずつ入れるタイプで、もっとも普通に使うもの。中央はポラロイドのフイルムを入れる。10枚撮りで単価は高いがその場で確認できるので、なかなか便利である、これにはネガとポジを同時に取れるタイプがあり、非常に便利だが、露出はクリティカルで難しい。右のものはレディロードなどと呼ばれるもので、封筒状の入れ物に入ったフィルムを使う。装填が楽ということだが、単価が高く、トラブルも多いのであまり使う人は多くない。私の場合、手持ちでも撮影するからこれはむしろ使えないと思う。このほかには「グラフマチックホルダー」という連写可能のものがあるそうだが、とても手が出ないほど高価だ。


二枚撮りホルダーには暗室やダークバッグでフイルムを詰める。黄色の印の部分の下側に滑り込ませるのだが、暗室作業に慣れていないと、なかなか難しいだろう。フイルムのノッチ(切り欠き)をこの状態では向かって右下にすると、正しい乳剤面がレンズに向かうことになる。引きブタを白い面を外にすることと、留め金をロック状態にして事故防止する。フイルムの乳剤面に注意し、傷つけないことは言うまでもない。



オークションで手に入れたダークボックス、業務用なのでとてつもなく大きい。これなら夏場でもひどく苦労して汗をかくこともあるまい。フイルム詰め替えとタンク装填には必需品だろう。
ということで、今までのダークバッグは、いろいろなフォーカルプレーンシャッターを直す部品に変った(笑)

さて撮影だが、一般的に次の手順になる。三脚撮影での作業手順だ。

@ 撮影スポットを決め、三脚を立ててカメラをすえつける。



A テイクレンズを取り付け、ストッパーがセットされていれば無限遠に伸ばす。セットされていなければおよその焦点距離より少し短めに出しておく。(この時、暗いレンズでセット位置が不明なら先にシャッターを開け、絞り前回にしてピントグラスを見て位置を決める。ベッドの繰り出しはしないで少し短めにセットすると良い。精密にあわすときにベッドの調節しろとして必要だ。)
B シャッターを開き(BかTにする)絞りを開放する。プレスレバー(シャッター強制開閉レバー)があればそれを使う。古いレンズでは、BとTはチャージしないで使うタイプがあるので注意。エバーセットはこの点では楽だ。あれで高速があって正確なら良いシャッターなのだが、1/100までではちょっと不足すぎるか。



C ピントフードを開け、およそにピント合わせして、大体の構図を決める。スポーツファインターなどを併用するとすばやくおよその方向が出る。



D 必要に応じてアオリを使いながら、ルーペ(4倍程度)で細かくピントを合わせる

☆この時、周辺までピントを確認する。もともと45以上に使えるレンズはまず大丈夫だが、イメージサークルが小さいレンズ(いろいろな物を流用するとき)では、イメージサークル(そのレンズでまともに撮れるフイルム免状の広さ・絞ると大きくなる)が足りないものがある。アオルとこれが問題になる。もちろんトリミング前提で撮影するのも立派なテクニックだ。

☆出来れば被り布を使って回りから目に入る光をさえぎるとピントグラスが良く見える。これを「獅子舞」と呼ぶが、スタイル優先の私(笑)はこれは絶対に嫌いだからやらない。見ている人がいないときはジャンパーなどで代用しているのは秘密である。これなら絞っても結構見えるし、構図の確認もしやすいのだ。特に、戸外でアオリを使うときには絶対的に必要だろう。(でもやらない)

E 露出計で明るさを決める。三脚を使う場合、被写界深度優先のこと、深度は非常に浅い。レンズの焦点距離が相対的に長いのだから当然だが、深度はアオリで変えられるので必ずしも絞り込む必要は無い。むしろ、前後のボケを使うと対象が浮き上がる効果がある。
F シャッターを閉じ、絞りを絞り、一度空シャッターを切る(シャッタートラブルの有無を確認)
  当然レリーズを使用する。ボディーにレリーズスイッチがある場合も、レリーズの方が振動しにくい



G フイルムホルダーを装填する。カメラ位置を変えないように注意する
H 遮光板(ヒキブタ)を抜き取る。以後引っ掛けてフイルムを感光させないよう注意し、フイルムホルダーの開口側に立って直射光線をさえぎるなど事故防止したい。
H ヒキブタでハレ切りしながらシャッターを切る。ただし、くれぐれも画面にヒキブタを入れないよう、あらかじめどの辺までハレ切りで切るかレンズごとに覚えておくと良い。



I ヒキブタを裏返しにして外に黒いマークを出し、露光済みがわかるようにして入れる
J 最初に戻る

もちろんフィルター効果やフードによるハレ切りの確認などはピントグラスで行うが、これは45に限らない常識なので割愛した。


ざっと考えてもずいぶんな手順だが、スピグラなどは手持ちでスポーツファインダーと距離計(黄色の部分)で写すことも可能だ。普通のファインダーも使えるが、広さを見るだけなのでたいした意味は無い。交換したレンズの画角に合わなければ交換するしかないが、そんなものはまず売られていないからだ。望遠系ならスポーツファインダーにアクリル板に枠を書いたものをはめ込むと良い。


以下は試写したカットについて、反省を入れて説明する。



ポラロイドでファーストカットを写した。後で分かったのだが、ピントグラスとフイルムホルダーで位置のずれが生じている。おかげでピントが甘い。


3枚目の中央部を拡大した。これでピンが合っていれば十分使える。



シートでの初カット。露出と現像が悪い。まだアオリを使う余裕が無く、建物が歪んだ。



晴れた港での試写。初めてまともにベッドダウンとティルト・ライズなどを使い、パンフォーカスなどの練習をした。このときの現像で、現像液の注入トラブルがあり、改造することになった。



逆光ではスポットメーターなどで細かく露出を測るべきだと感じた一枚。これは手持ちでの撮影。


ここからは、BUSH−Pressmanにて古いフランスのFothで撮影したものである。一時69用に改造していたが、45に戻したもので、なかなか使えると感じている。



私の机の隣のサブ机、どうにもならないほどジャンクカメラが積みあがっている(苦笑)


雨のち曇りの中での撮影、どちらもフジの150oだ。



こちらは再びFothにてー、浮島沼の沼川付近。最後のカットはベッドダウンとティルト、ライズの併用だが、さすがに周辺は吹っ飛んでいる。69用のレンズで絞りも36までだからこれは仕方ないところだ。もう少しライズすれば、使える面積が増えたと思うが、ピントグラスが暗いのに、ピーカンで獅子舞をしないからよく見えなかったのだ。言い訳にはならないが。

ちなみに、これの中央部をトリミングしたものは、結構使える絵になっている。古いレンズだからといって、決して侮れないことは明らかだ。




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現像タンクとその内部。6枚同時に現像できるが、狭いバッグの中ではほとんど無理だ。リテーナーが付属しているが、これも使いにくい。ホースをつけたのは、注入排出のスピードアップのためで、これなら20秒で全て排出できるから、ムラは少なくなる。後はエア抜きダクトをつける予定だ。注入時の圧力抜きは非常に重要だが、注入口を緩める仕様になっていて、使いにくいしどこまで緩めるかが不安になる。しかも異常に固く、ぬれた手では回しにくいのだ。

アオリの状況



ライズである。上すぼまりの建物などに対応



ティルト。お辞儀でパンフォーカス、そっくり返るとその反対というところだ。



ベッドダウン、お辞儀のティルトの代わりになり、レンズの光軸とフイルム面の垂直性を崩してパンフォーカスな写真に使える。

☆これらを使うときにはレンズの光軸を常に意識すること。中心付近は最もピントとコントラストが良いので、光軸のがフイルムの中心に達するように注意する。ただし、ライズ・フォール・シフトなどはこれをわざと外してゆがみ矯正するので、その場合は別。したがって、イメージサークルが大きいレンズを必要とする。



シフト、ライズと似た動きで横から撮るときの修正に使える

これらのアオリはごく初歩的なもので、ビューカメラに較べれば、スイングとバック部の動きが無いが、これだけあれば組み合わせていろいろに使える。機動性が無い代わりに、自由なピントや構図がえられるので、大判を扱う醍醐味かもしれない。


《まとめ》

これにて試写は完了、これからは作品作りということになろう。大判はカメラ自体よりもレンズと撮影技術で結果が大きく異なる恐ろしい世界だ。
出来る限り動きが感じられる生きた写真を撮りたいと思う。

手持ちで撮ったものはJFCオフ会の3カットを別項に掲載した。結構いけてると思う。





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