FUJIPET>


フジの少年少女用カメラ、その名もフジペット。

私が通った今泉小学校(旧吉原市、現・富士市)の北側にはフジフイルムの工場があった。この頃には誰もフルネームでは呼ばず単に「フイルム」と呼んでいた。
近くには社宅も併設されていて、同級生の鈴木君はお父さんがこの会社の偉いさんで(工場長だったかな)ここに大きな家を構えていた。
駄菓子屋でかき氷を食べながら読む漫画月刊誌が私たちの愛読書だったが、鈴木君の家には「子供の科学」が積み上げられていた。
遊びに行ってこの本を発見し、夢中で読んだ。私たちはこんな高級誌を買える様なお金は持っていなかったから、とてもうらやましかった。

鈴木君の家はフイルム社員だからか、お金持ちだからか知らないが、フジペットが転がっていた。どう見ても玩具のそのカメラは、私たちの「分解」「研究」の材料となり、バラバラにされてしまった。その後、ゴミと化したフジペットは捨てられたのだろう。壊してしまったことが心のどこかに引っかかっていて、今でも時々脈絡も無く思い出す。

いつか手に入れようと思っていたが、今はこのカメラに意外な人気があり、オークションに出てきてもなかなか手が出ない価格になる。そこまでの気は無いまま見過ごしていたが、欠品あり外観ぼろが出たので入手した。



良く見れば、レンズの周りのプラスチックは痛んでいるし、スライド式のフードも無い。しかし、原始的なシャッターは生きているし、フイルムを巻き上げることもできるので、これは拾いものかもしれない。



シャッターは単速でバルブ付き。レンズは単玉で焦点固定とオモカメの要件を満たしている。@でチャージ、Aでレリーズが楽しい。



120フイルムで66判で圧板は無く、フタはネジ止めである。



この位置が一番フジペットらしい姿という気がする。

《試写》

教え子たちと土器作りをしたので、その時に一気に写してみた。フイルムは曇だったからプレストを選んだ。明るいところはお日様マーク、暗いところは開放である。









子供たちの服装を昔に戻せば、このまま50年前の写真で通りそうだ。
これを平面性を改善し、シャッターと絞りを高級なものに変え、ピントを合わせられるようにすれば、相当の描写になることは容易に想像がつく。中心部は素直な単玉の特徴そのものだろう。
しかし、これは一切改造する気は無い。この写りが懐かしいからこのまま気が向いた時に使おうと思う。


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