MINOLTA V2>


仕事の繁忙期だったので、なかなかレストアができなかった。この間にも古典カメラの修復や、35oカメラを数台レストアしているのだが、既に発表済みだったり、新しいものでも試写のタイミングが自由にならず、レストアレポートは久しぶりだ。

今回はミノルタV2である。先般、仲間のトムさんが、ME復活応援サイトの others にて報告されたものを見て、どうしても欲しくなった。トリック的で制限があるとは言え、レンズシャッターで1/2000秒を実現したカメラ、レンズは大好きなロッコールだから、通り過ぎるわけには行かない。BINくみちょ〜〜の所にもこれをついに手に入れたと Higemouseさんから報告があり、ますます欲しくなった。

トムさんの報告の影響か、元々高かったV2だが、なかなか手が出るものではない。外観は普通だが、シャッター他不調のジャンクをやっと安価に手に入れた。



粘りと言うより、ほとんど止まっていたシッャター。形式としては比較的見慣れたプロンタータイプで、セルフタイマーとシャッターの連動リンクなどわかりやすい。これなら低スキルの私にも手が出る。



スローガバナーは明らかに渋いので外して洗浄、しかしそれだけではなく、シャッター駆動メカも渋っていたので清掃して注油(羽根の部分はボロン粉末のドライ潤滑)して、この状態で軽く開き、確実に閉じるようにした。



スローガバナーは錆と言うほどではなく、トムさんの個体のような大きな変形も無かったので、オイル漬けで軽く動かしている内にスムーズに動くようになった。ガバナーの注油は外して両側からするのが正しく、上からだけだとなかなかうまく行かないので、外してもバラバラにならないガバナーはありがたい。ただし、トムさんの報告の通り、止める位置のわずかなズレでも作動しなくなったり引っかかったりするので、調整には手間と根気が必要だ。



次はほとんど二重像が見えないファインターである。ミラーはそれほど痛んでいないが、とにかく合わせにくいので、610さんから以前にいただいた金蒸着のハーフミラーを切り出して交換した。ハーフミラーは接着ではなく、このように金具でロックされていて、はめ込んである。これで曖昧なガタはまったく無く、それでいて布で養生してラジオペンチで引くと軽く抜ける。ミノルタのカメラの精度の高さがわかる。立派なブロックのプリズムを使っていて、フレームは距離に連動するので、パララックスの補正はしっかり出来る。後の試写でフレームは信用できると確認した。



ミラー交換後、黄色(上下)青(左右)のネジで調整。ミラーの厚みが異なるので、調整限界ギリギリだが何とかなった。明るいところでも二重像がはっきり見えるようになった。

ただし、使っている間に上下がずれる。何度か動かすとまたずれる。使いながらの微調整が必要だ。調整はアクセサリシューのふたを外せば出来るが、軍艦部の固定が巻き上げ・巻き戻し軸の下だけの二箇所だけなので、フイルムが入っていても簡単に外せるから、軍艦部を外す方がわかりやすいかもしれない。なお、巻き上げの角度は大きいが、非常に軽い。小刻みも可能なので指への当たりはちょっときついが、感触は良い。



このカメラには普通のカメラと違ってシャッターリングを固定する花形リングが無い。どのようにして固定しているかと言えば、前玉アセンブリーで直接押さえるのだ。しかもセルフタイマーセットリング(赤いリング部)もこのアセンブリの根元にはまるようになっている。間違ってここを安易に締めると、動作がおかしくなってシャッター故障と勘違いすることになる。わかっていれば簡単なことだが、雑にばらしたので、組み立て時にあわてた。そう言えば、分解時に記録もろくに写していなかったのだ(汗)

レンズは基本的に組み立て式で、清掃が極めて簡単に出来る。レンズを分解すると光軸がずれると外国カメラファンなどで言う人があるが、はめ込み式で隙間の無いレンズを調整することなど出来ない。そんなことでずれるほど製造精度は低くないし、仮に多少ずれたとしても、わかるはずが無い。
レンズ分解でピントが狂ったのは経験していないが、カビや汚れで写りがおかしくなったレンズはいくらでも見ている。組み立て式がメンテナンスの点で勝るのは明らかだ。





何はともあれ完成したので、全体を清掃して終了。

クラシカルなどっしりとした質感が素晴らしい。いかにも精密機器という感じがする。背面のフイルムインジケーターなどに時代を感じる。ストラップはもう実用にならなかったが、がっちりとした速写ケースは、この時代の高級機であったことを感じさせた。
定評のレンズだから、今後はメインカメラに入る予感がする。

《試写》

ありあわせのフジのネガカラー100にて。



被写体は派手なカラーリングだが、その通りに出ている。ネガカラーのラティテュードを信じて1/500秒F8だが、きっちり色が出た。



車のガラス越しだがなかなか良い。完全逆光だがフレアーなど無く、ディテールもしっかりしている。



周辺まできっちり合う。文句無い自然な発色とピントだ。アンシャープを軽くかけると非常にクリアーになるので、気になる方テストしていただきたい。(これはテストにつき当然ながら素のまま)



開放で1/30秒、近接限界(80cm)だが、しっかりしたもの。ここからアクロス。



この時の現像は、1/2000秒を使うために少し増感している。そのため、暗部はだいぶつぶれているが、普通の現像ならまったく問題ないと思う。



100のフイルムで1/2000秒絞りを8で使うために、無理を承知の撮影。それでもなかなか面白い絵になった。ネガも明らかにアンダーなので、シャッターは正常と言えよう。
もちろん、1/2000秒のためにはプレストを選ぶべきだろう。

それにしても、写していて充実感のあるカメラだ。フジカV2同様、私のメインカメラの一角に入るものと感じる。やはり、ロッコールは良い。
 



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