610寫眞機製作所 V69R Report



九州のムボー大将こと610さんの「リポート69」をご紹介する。

アマチュアの手作りカメラと言うのは比較的良く見る。そういう愛好家の団体もある。しかし、複雑な距離計を自作し、レンズに連動させて実用化したものはこのカメラ以外に知らない。

開発コンセプトは「リンホフ220の機能を手作りで実現」と言うことだが、詳しい話は610さんのホームページに公開されているので、そちらで開発秘話などごらんいただきたい。

テスト撮影は仲間で次々に行った。私のところに来るまでには既に素晴らしい結果が見えていたので、私はレストアラーとしてカメラの評価のみ報告したい。



仕様は120フイルムによる69フォーマット、レンズ固定式距離計連動カメラということになる。大きな特徴として、縦位置が基本撮影姿勢になることと、このサイズのカメラとしては非常に小さく軽いことである。



フジカG690との比較では、グリップを含めてもずっと横幅が少なくコンパクトだとわかる。



前後は80o(マミヤCプロ用のセコール80oF2.8)と大型ヘリコイドのため、それほどコンパクトではないが、66二眼レフより少し長い程度で威圧感は無い。



ホースマン用の69ホルダーが組み込まれたバック部。軽量化のため脱着式ではないが、その分横幅などが少ないのがわかる。また、ヒキブタも省略されている。
グリップ部はレリーズとホットシューが組み込まれ、剛性が高くホールドとレリーズは安定してできる。
巻上げとフォーカシングは右手、レリーズは左手が基本だが、直接シヤッターレバーを右手で操作することも出来る。グリップは着脱式ではなくしっかり固定されている。



工作精度を誇る距離計の駆動部。レンズマウントから伸びる連動シャフトの前後運動を、倍率を掛けてミラーの角度調整に当てている。
ファインダーは一眼式で、二重像は見やすくピント合わせに困ることはあまり無いだろう。



内部は遮光紙が十分貼られていて、内面反射は認められなかった。

《総評》

縦位置が基本だけに、縦位置撮影は極めて軽快である。しかし、横位置は撮影しにくい。どちらの手を上にして構えるか悩む。また、横位置では水平が保ちにくい。

速写を考えるとシャッターセットレバーの位置が悪い。右手で操作するには、ワンカット撮影後には一度目をファインダーから外してレバー位置を確認したくなる。これは流用したレンズが右側で操作するタイプのため、左グリップだとレリーズ取り付け位置とシヤッターセットレバーが逆になっているからで、設計上の不具合ではない。

ヘリコイド操作はスムーズだが、慣れるまで右手がヘリコイドリングを探してさまよう。これは何らかのレバーか突起で操作するように外付けされると、その位置でおよその距離がわかり、速写に寄与するだろうと思う。

モノクロとリバーサルでテストしたが、使い心地は極めて良く、手作りでありがちな、出先での微調整など未完成な部分がなかった。撮影中は手作りカメラを意識することなく撮影に没頭できたのが、完成度の高さを物語る。

使われているレンズは本来は66のものだが、69でも画面上の左右の隅にわずかな流れを認めるだけで、実質的に不満はなかった。69でF2.8というレンズは非常に貴重で、操作性の良さも加味すれば、スナップに十分な実力を持つと言えよう。

グリップ周りなどは機能のみでまだ仕上げられていないが、全体的にはこのまま実用としてなんら不都合は無い。セルフコッキングでない中判以上に慣れた写真家なら操作に迷う部分は無いだろう。

☆本レポートは、仲間意識からの提灯記事ではない。冷静に観察し、使った結果である。比較したのは同時に写していたフジカG690、リトレックUaなど既に定評のある69カメラである。610氏のV69R Reportはそれらと対等に比較できる優れたカメラだと思う。

《試写》

先輩諸氏の素晴らしい作品があるので、私の撮影したものは、あくまで基本的な機能の確認と言う程度でごらんいただきたい。使用したフイルムはネオパン100アクロス。



パンフォーカスで狙った。



その中心部。予定位置にぴたりと合焦している。



激しいコントラストの場面をシャドー基準で写してみた。



この大きさでは何の変哲も無いと思うかもしれない。



この親子にピントと明るさを合わせたのだ。立派なものだと思う。



再び広い景色。これもごく普通の記念写真に見えると思う。



実は、ここまで写っているのだ。



これは曇りの日の薄暗い林の中から。絞りは5.6だが諧調がしっかり出て、中判らしい落ち着いたものになった。不思議なことに、周辺の流れが無い。絞りを開けた方が良いのは今後大いに利用価値があるだろう。

今回は速報なので、その他のカットやリバーサルの結果は、他の69カメラとともに私の つれづれ日記に順次掲載するので、折あらばごらんいただきたい。

610様、楽しいカメラを使わせていただきありがとうございました。


MenuTop