MUSASHINO Rittreck Ua



国産では唯一の、世界的にも珍しい69判一眼レフ、リトレックは知る人ぞ知るカメラである。今般これを會津さん(ある一流写真家のハンドルネーム)からいただいたので発表する。

このカメラの原形はレンブラントと呼ばれ、後に武蔵野光機がリトレックとして発表した。このあたりの事情は、手作りカメラの大御所である610さん のページをご参照願いたい。レンブラント原形機を調べ、「レンブラントU」を作り上げた苦労談は「自作カメラ」にある。その他のページには古典機の修復と撮影、ユニークで高品質な自作4×5二眼レフや自作距離形式69カメラなど多数があるので、同時に見ることをお奨めする。

レストアについては、たかさきドクターのページに詳しいが、簡単ですと言う記述はあてにしてはいけない。たかさきさんには簡単と思うだけで、参考にするのなら、たかさきさんと同等のスキルと知識が必要なことを肝に銘じておくことをお奨めする。

このお二人と、このカメラが現存し使えることを最初に示した素晴らしいカメラマン、かめらっこさん(Idacさん)の影響でこのカメラが欲しくなったのは事実だが、それよりずっと前にこのカメラが気になった事情がある。
それは、富士山写真の第一人者として高名な、岡田紅葉氏の存在である。 氏は言うまでもなく富士山の素晴らしい作品を発表し続け、今も多くの富士山撮影者には巨人のごとき存在である。近年に発表されている多くの富士山写真は、そのほとんどが氏のモチーフを追った亜流といっても過言では無いだろう。

この岡田氏の作品撮影機の中に、リトレックがある。私は若い頃に勤務していた沼津市において、職場の隣にあったT楽器店店主は岡田氏のファンで、晩年を静岡県で過ごした岡田氏のスポンサーでもあった。
この店主のところで岡田氏の作品を見せて貰った私は、絶対に富士山を主なモチーフにした写真は写すまいと思った。生意気盛りの若造にもぐうの音も出ないほど凄いものだったからである。最近は富士山も少しは写すが、自分の作品がどうにも低レベルだと感じるのはこの経験が富士山写真のベースになっているからだと思う。

国内には数少なく、ましてコンディションが良いものは希になっている中で、快くお譲りいただけたことを、心より會津さんに感謝する次第だ。





運送中の振動でシャッターの連係が狂っていたので開けて見た。ギアは多いが簡素な作りで、実にわかりやすく、整備性が良い。調整と注油で完了。



張り皮はだいぶ硬化していたが、なんとか原形を保ってはがすことができた。いつもならバリバリにはがして別のものに張り替えるところだが、何とか原形を保ててよかった。



一番下が巻き上げ軸で、このトルクを順次上に伝え、最終的にシャッター幕をチャージする。これがストッパーも兼ね、このギア全体がシャッターレリーズになっている。幕のテンションは上の写真の向かって右下にあり、先幕の位置調整(アパーチャーの変更)は反対側にノブがある。



ルミナント10.5cmF3.5、きれいなレンズだ。この他にいくつかのレンズが出ているが、一眼レフなので、これより長い玉はボードを自作すれば何でも付けられる。



大型レンズカバー、非常に有効なフードでもある。



撮影状態。ホルダーは専用が645から69まであるが、私は汎用のラーダを使っている。デザイン的には似合っていると思う。

リトレックUaは、グラフレックス、メントール、スペシャルルビーなどの古典的木製一眼レフの流れを汲むものであり、その外装を金属に置き換えて洗練させたものであると思う。まだ自動絞りやクイックリターンミラーはなく、この手のカメラを扱いなれない人には使いにくいものだろうが、これによって得られる画像は圧倒的だ。大伸ばしに耐える画質は、比較的機動性が高いこともあり、岡田氏が愛用した大きな理由であったのだろう。

【撮影】

いつものテスト撮影はフイルム一本ということが多い。あくまで「こんな風に写ります、これが最低線です。」というものだ。テスト結果が気に入ったら、ゆっくり別途写そうと言うスタンスだが、今回はいろいろ写している。69は120で8カットしか写せないので、いくら簡単な作例と言えど一本では無理だからである。モノクロはアクロスを使用した。



激しい逆光だがそれでもちゃんと持ちこたえた。



レンズから50センチくらい、ほぼ限界まで接近している。蛇腹繰り出しなので接写は無改造でも相当できる。絞りは5.6だから被写界深度はほとんど無い。圧縮する前の画像では、合焦部はぴたりと出ている。ボケも素直でうるさくならない。



絞り込まないと一点にしかピントが合わず、広い場面ではつらい描写になる。



順光で絞り込むと69の威力が出る。空のムラは現像ミス。



中心部。さすが69と言う描写だ。



リバーサルはコダックのE100VS、いかにもの色だが、かぶっているのは二重露光してしまったからである。二重露光防止はまったく無いので、チャージした時にうっかりシャッターに触ってしまったことによる。もったいないから写してみたが、なんとも幻想的(笑)になった。



これは非常に大きいので、接続に問題がある方はクリックしないでいただきたい。典型的な富士山寫眞、富士宮市と富士市の境辺り、富士山こどもの国の西から。お約束の一枚だが、69の威力はお分かりいただけると思う。

會津さん、素晴らしいカメラをありがとうございます。大事に末永く愛用させていただきます


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