KOWA KAROFLEX



国産二眼レフの中で高級品の一つ、興和製薬のカロフレックスはnoboさんからのレストア依頼で始めて触った。

不調はピントがおかしい。10枚しか写せないという症状だ。





ピントがおかしい理由は前板とサイドを外して判明した。落下品だったのだ。ここまで分解するのに逆ネジがあった。シャッターボタンの取り付け部が逆でわかるまで苦労してしまった。
二枚目の印のところでわかると思うが、前板のカバーの取り付け部が3箇所変形していた。ここはフードなどためのバヨネットがあり、ここが曲がっているとレンズバレルまで曲がって見える。しかもシャッター調節レバーは先が折れていて、シロウト細工の部品でシャッターと連結している。

しかし異常はそれだけではなかった。



レンズボードも外し、繰り出し部を見ることにした。



左右の繰り出し部のガイドがずれている。このおかげで無限遠付近から繰り出すと前板があおる様に動き、左右のバラつきが大きい。
ここのガイドのネジは逆ネジだった(ウラブタを外すのをブロックしている二重写しのためのボタンも逆ネジ)。おまけに明らかに誰かがいじった跡がある。メーカーではないサービスマンが、逆ネジを無理に回そうとしたのだろう。
ここを外してグリスアップしてからきっちり締めなおすとガタがだいぶ減った。左側で左右のカムの連携を調整する仕組みだが、これが硬くて回らない。ピントグラスでの確認では左右の差はわからないのでピントに対してはこれ以上深入りするのは止めた。
まだいろいろ地雷がありそうで、使える以上踏むのは賢明ではないだろう。



次はカウンターである。

この形式は見たことが無い。普通はローライコードをお手本とする一軸に12カット分の切り欠きと逆回転のテンションネジと言う構成だが、これは分業している。
Aが66判に良く見られるキリカキつきのシャッターロック部で、溝が一致するとシャッターを押せるようにするギアで、Bは上から数字を見るカウンター円盤である。これらが0に復帰するテンションはBの軸にあるバネで行っている。

この調整はずいぶん苦労させられた。結局、スタート位置になったときのAの進みすぎと判明、スタート位置で中心のネジを緩めてギア位置を直すことで12枚写せるようになったが、なぜここがずれたのか不思議だ。ギアは12枚を過ぎるとフリーになり、回ることはありえない。これは下手なリペアマンの調整間違いだろうと考えるしかなかった。正しい位置に合いマークを入れたので、次に異常が出たらそこに合わせればよい。

(noboさんにお返しする前に二本テストして、少なくともカウンター異常は無かったのだが、お返ししたらまた発生したと言うので、もしかするとずれ易いのかもしれない。)



この位置で合いマークが合っていれば良い。



何はともあれ使える目処が立ったので、レンズやシャッターの清掃をして組んだ。

二眼レフのレストアで一番大変なのは、サイドも前も皮を剥がさなければならず、ほとんどの場合に再使用は不可能なことである。このカメラも同様で三面を剥がしたので全て作り直した。
このように、コピー機でコピーすると正確な型紙ができる。これを弱いのりで皮に貼り、カッターなどで切り出す。もちろん直線では定規をガイドにするが、その他はハサミとカッターの使い方が意外に難しい。この程度でもなれないとなかなか切り出せない。



意外に見落とされがちな下地処理だが、私は残っている接着剤はアルコールかベンジンでしっかり落としている。これによって貼り上げたときの平面性はぜんぜん違うのだ。



このくらいに貼れればリペアしたとはわからないだろう。



《試写》

今回は何よりまともに写るかどうかが大事だった。あまりじっくり写す暇は無かったので、ほとんどがピントテストである。フイルムはアクロス。



開放で至近距離から。幸いながらピントは良さそうだ。



中心部。ちゃんと写ったのがうれしい。



1/100秒ではちゃんと(笑)ぶれているが、調子は良い。



ビニールマルチされた畑。これも開放至近距離だ。



わかりにくいがピントは合わせたところにある。



遠景はどうか。諧調は見た感じに近い。



その中心部。無限遠もちゃんと出たようだ、やれやれ・・・

かくしてカロフレックスはnoboさんの下へ飛んで帰ったのであった。
ちゃんとした写真はnoboさんに期待されたし。


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