MPP MICROFLEX
MPPのマイクロフレックスはロスなどイギリス代表のレンズを搭載して名高いが、なかなか縁が無い。そこで、仲間のSCRさんからお借りした。
ビューレンズに多少カビらしきものが見えるが、テイクにはまったく問題なく、そのままテスト撮影とした。
ごくオーソドックスなカメラで、スタートマーク式のセミオートマットである。昔のフイルムにあわせられているので、多少コマ間隔がダブりやすいが、スタートマークを少し先に進ませてから撮影開始する(予備巻上げを増やす)と最後まで重ならない。それでも13枚目の分が残るので、意識して行えば13枚写せる。
ファインダーはスプリットも入って非常に見やすい。特筆すべきはシャッターと絞りダイヤルの操作性が極めて良く、この通り大きな窓なので変更がやりやすい。窓が小さいローライなどとは使いやすさで雲泥の差だ。
その代わり巻き上げレバーの動きは変で、扱いやすいとは言いがたく、トータルの操作性は並ということになる。
ストラップ掛けが特殊で会うものが無いので、一時的にこれを緩めて根元にリングを入れて汎用ストラップを使った。二眼レフでストラップが無いと固定が大変で低速に強いメリットが無くなる。自分のものなら当然ここに改造を施すところだ。もちろん元に戻してお返しした。
《試写》
テストは全てアクロスによる。
テーブル固定で開放描写を見た。同時テストしたローライコードとはちょっとアジが違うが、非常にコントラストのあるきっちりした印象だ。
室内から微妙な光を狙った。輝度差があるのにちゃんとした画像で、予想以上に外の様子もわかる。優秀なレンズだ。
無限遠の描写を見る。アンシャープ無しのストレートスキャンのままだからピント感はそこそこに見えるが、拡大すると驚くほど精密で、素晴らしい描写能力である。
半逆光で動く被写体をほぼ1.5メートルから狙った。硬くなるか暗部がつぶれるかと覚悟したが、そのようなことは無かった。
完全逆光で輝度差はフイルムのラティテュードをはるかに越えている。しかし、フレアーもゴーストも無く平然と描写している。素晴らしい性能である。
250メートルほど離れたところからの遠望。
上のカットを拡大した一部。これだけ解像しているのだ。恐るべき描写力だ。
何度も褒めてしまったが、ロス系のレンズらしくコントラストが高く、遠景まで破綻無く細かい描写をする。トーンは固めだが、逆光で崩れず確実に作品にしてしまう。エンサインの一連の蛇腹機と似た感触だった。
忠実な再現に向くが、カメラが絵を作ることは無いので、写し手の力量で結果も評価も変わるカメラという気がした。ゆっくり被写体を探し、じっくり作画する人のカメラだろうか。
☆SCRさん、素晴らしいカメラを快く御貸しいただきありがとうございます。