VOIGTRENDER VESSA66

フォクトレンダーは非常に古いカメラメーカーだけに、いろいろの120フイルム機がある。その中でもベッサの名前は有名で、多くの645−69の名機がある。名門フォクトレンダーはすでに存在せず、名のみ売られているようだが、今ではまるで120のベッサとの関連を認められない(私的見解です)カメラの名前にまでなっている。

このベッサ66は戦後まもなくのものらしい。作りから見てツァイスに鳩首される前後のものと推定した。

いつもお世話になっている「中判への誘い」の管理人様からの依頼で、シャッターの低速整備などを行った。



シャッター整備中にシャッターボタンの重さが気になった。このカメラのシャッターボタンはなんと開いたレンズカバーの外側にあるレバーで、そこから複雑にリンクを介して実際のシャッターレバーに導かれている。このリンクの給油なども行いたくてレンズブロックを分解した。



ピント合わせは前玉回転式なので、ごく一般的な構造になっている。フォクトレンダー的なギミックは無い。シャッターも良くあるラピッドコンパーだ。



シッャターはスローガバナーの給油不足と、羽根の粘りだった。汚れのつき具合から見て、誰かが一度は分解した形跡があった。
羽根の粘りは相当深いところまであり、拭いてもまた粘るのが見えていたので、後ろ玉も外してベンジン流しで徹底的に洗った。金属の粉状のものや、油などがずいぶん出てきて、引っ掛かりで開放まで動けなかった絞りもきちんと動作するようになった。



本体の巻上げ関係は分解し、給油したがフイルムの通りが悪い。理由は黄色い印の部分の錆だった。以外に軽視されているようだが、120フイルムはこれがごく軽く回転しないと擦り傷がつき、巻上げも渋くなる。その他の部分も含めて注油して完了した。なお、赤い印はレンズユニットの固定リングだが、わずかだが傷がついていた。プロではない職人が合わない道具で作業した痕跡である。プロなら塗装のタッチアップは最低限のマナーだから。



話が前後するが、前玉回転の場合ヘリコイドを闇雲に外してはいけない。必ず無限位置などにして(再接近が都合よいこともあり)合いマークをつける。この場合、外す相手の位置が不確定だと何にもならないので、よく確認したい。また、何回転で外れるか(2−3回転が普通)を記録し、ヘリコイドが外れるところにも必ず印をつける。これを怠るとヘリコイドの合わせ位置がわからなくなり、なおかつ無限円の出しなおしと言う面倒な作業が待っている。



ほぼ完了。念のため、摺りガラスをピント位置に固定し、バルブでシャッターを開きピントの最終確認をした。



ヴァスカー75ミリである。非常にきれいだ。なお、光っている金属の金具はマエブタを閉じる時のレバーで、これを押すとタスキが緩む。また、ウラブタを開けるのには前に倒れるのを防ぐ金具を出す必要がある。これがロックを兼ねている。





赤窓式だが見やすい。



フル装備状態。Lグリップはジャンクからの自作。

《試写》

どうもこのカメラで無機質なものを写したくなかった。そこで中央公園に出向いた。フイルムはアクロス



非常に明るさの差がある場面だが、諧調が豊富でしっかり出ている。



その中心部







目立たないが非常にクリアーでしっかりしている。目測は厳しいが合えばまったく文句なした。立派なカメラである。


MenuTop