OLYMPUS Chromium6Xb



Benlyさんより預かったクローム6、F2.8のレンズになったタイプだ。以前にF3.5のタイプを私がレストアしたおおえさんのところに書き込みがあり、MADAMさんHigemouseさんの協力で一先ず使えるようになったのだが、「少し給油すると良い」というアドバイスで、シャッターブロックの外からCRCを差したので不調になったとSOSがあり、拝見することになった。



確かにシャッター羽根にも絞りにも油が乗っていて、スローでは止まってしまう。このままでは使えない。



ここまで分解して暗礁に乗り上げた。ヘリコイドベースが外れないのだ。手は無論のこと、ゴムフリクションでいくら押しても回らない。
あまりやりたくない方法だが、プライヤーで銜えてまわそうとしたが、びくともしないし傷がつくばかりなので、変形を恐れてここを外すのは中止した。



このシャッターは大きいので、隙間が結構ある。横からと、絞り側からブレークリーンで徹底的に吹くことにした。ブレーキ廻りの清掃用だから脱脂力が強く、乾燥も速いのでレンズに影響は少ないし、レンズも油がついていたからちょうど良かったかもしれない。ガバナーの油はよほど漬け込まない限り完全には取れないし、横から見る限り元気に動いているから、給油の必要はないと判断した。事実シャッターは元気良く動くのでこれで良しとして風を送って乾かした。

CRCはカメラレストアでは両刃の剣である。浸透性が高く、緩まないネジや錆落しには有効だ。
しかし、レンズにつくと非常に落ちにくい油膜になり、シャッター羽根につくと後に激しい粘りのもとになる。これをかけられたシャッターは一時的に動くのだが、後でどうにもならないほど粘る。
これは、CRCをフイルムケースなどに吹き込んで、しばらく放置してから見れば理解できる。揮発分がなくなると、重い油になるからだ。シャッター廻りは軽く乾燥しにくい油で無いと粘ってしまい、トルクが弱いから使えなくなってしまう。または、シャッターがゆっくり開閉して役立たなくなる。余分なところにかけない注意が必要な油である。




気になるところがあったので軍艦部も開いた。シンプルで壊れにくい構造だが、巻上げレバーが戻らないことと、ダミーフイルムでのテストではテンションが異常に大きかったからだ。



巻き上げノブのバネが切れていた。これではレバーが戻るはずもない



ほぼ似たバネに交換し、ノブ先端の引っかかり用の部品は似たものを探してエポキシで接着した。また、巻上げトルク増大はフイルム軸の逆転防止部分の潤滑不足だったので、分解給油して完了。



テスト撮影のために欠落していた絞り指標はMADAMさんが写してくれた同タイプの指標の写真をコントラストをあげて印刷し、両面テープで貼り付けた。ここはリアリズムより使いやすさ優先だが、違和感があるので一時しのぎである。オーナーがいかようにも変更できるところなので、後で改善願いたいところだ。



ヘリコイドリングにゴムを貼り付けている。
実は、外そうとした時にヘリコイドが変形してしまった。目視ではまったくわからないのだが非常に固くなってしまった。指が痛くなるのであたりを和らげるためにゴムを撒いたのだ。
ヘリコイドグリスに非常に細かい(4000番相当)のコンパウンドを混ぜて塗り、これで何10回も動かしていたら、何とか実用レベルの重さになったので、拭きとってシリコングリスを入れなおして完了とした。
その他、蛇腹やケースの手入れなど基本事項を一通り行った。元が良いだけに、非常にきれいになった。



お祖父様のものだそうだが、きれいなケースから、とても大切にされていたことがしのばれる。







66と645の赤窓が並ぶ。645のマスクは無かった



内部はシンプルでしっかりしている。大きく見えるが意外にコンパクトだ。

《試写》

アクロスにて実施した。



林の中で、4程度に開いた



中心部分で見るときちんとしている。距離合わせも心配なさそうだ



激しいコントラストだが、どこにも破綻無くしっりしている



10メートル程度にあわせた。中判らしいシャープさとボケで、逆光でも破綻が感じられない。

明るいものがあってもフレアーやハローなどは感じられなかった。この時代のズイコー特有の、後玉の白濁はまったく無く、わずかに中玉にカビ跡があるが、撮影には差し支えなかった。室内撮影の開放でもちゃんとしていたから、これは現役で使えるカメラである。中判用ズイコーのシャープさと豊富な諧調が楽しめる立派なものだと思う。


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