KODAK No.1 Jr.

20世紀初頭に現れた120フイルムが、ブローニーフイルムと呼ばれたのは、この規格を開いたコダックが、初期のこのフイルムを使う機種にブローニーと名づけたからだそうだ。
このカメラもそのころのもの、ユキノフさんから舞い込んだ一台である。



典型的なコダックの顔だ。特許ボールベアリングシャッターとあるが、これは本当にしぶとい。壊れたものを見たことが無い。実用できる程度に速度があるから、今でもちゃんと使える。レンズはもちろんコーティングなど無いから、カビの心配もなく、これもしっかりしたものだ。



オートグラフと言う別名はこの開閉窓から来ている。撮影中にここを開けて裏紙に直接メモすることが出来る。実験してみたが、今の高感度フイルムでも光を引いたりせず実用になる。原始的だがなかなか良いアイデアだ。



ウラブタは取り外しできると言うより、全体が二つに分かれると言う方が早い。簡単な構造だがフイルムが交換しやすく、実に良く出来ている。
少なくとも80年を経過したカメラで隙間が多いので、念のためこの隙間には毛糸を入れ、合口は遮光紙を貼り付けた。蛇腹に一箇所破れがあり補修した。



畳むと実にコンパクトで、ボディーが木製と言うこともあって軽い。
さすがに経年変化で皮がパサパサで、少しこすれても表面が剥がれる。また、艶も失っている。そこで、黒の水性ウレタン塗料を全体に塗って、直ちに拭き取る作業を行った。こうすると表面が剥がれたところは黒くなり、艶も回復するしウレタンと量によって表面が強くなる。



ピントは目測だが7.7という暗いレンズだから、何とかなるだろう。

《試写》

フイルムはアクロス、69なので8カットだが、巻上げ時に1枚目を見落として7カットと言うことになってしまった。



周辺に行くほどピントが低下しているが、意外なほどまともだ。



その中心部。きちんと写っている。



これもまあまあだろう。



写る範囲が良くわからないファインダーと、近くで絞り開放という条件にしては良い。ちょっと甘いがこれも密着プリントでは十分見られるものだったのだろう。

☆古い=レベルが低いというのは間違いと、改めて感じた。まさになかなかのものである。原始的なだけに壊れにくいから、あと100年は使えると思う。単純で材質が良いものは長く使えると言う当たり前の話だが、良いものは良い。


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