KONICA C35 Journy KONICA

レストア記事を書き始めてもう6年、この記事の通しナンバーは194だが、初期には2−3台まとめて出しているから、とっくに200台を越えている。もちろん全てが私のものではなく、借り物や預かりものが多いが、それでも我ながら凄まじい数にあきれている。

実質200台突破記念として、レストアの基本中の基本機種、コニカC35(初代とフラッシュマチック)を取り上げてみようと思う。

この記事を、行き詰った時に貴重なアイデアを、貧乏人に良質な練習台を送り込んでくれているJFC(まもなく創立6周年)の仲間各位に感謝と友好の印として送りたい。



コニカC35シリーズは、誰でも気軽に写せて、ヘキサノンの威力で上質な写真が得られるカメラ。それも大げさではなく、およその距離で固定しておけばほとんど全ての記念写真が写せ、その気になってきっちりピントを合わせ、フイルム感度を調整すれば、全紙に引伸ばしても耐えられる画質。それでいて、当時としては小さく、軽く、旅のお供に最適なカメラである。

私の所属する国産ファミリーカメラ愛好団体、JFCには入会条件がある。「怪鳥(JFC会長・HIROA氏)の前でC35の軍艦部を外し、正常に再組立すること」である。
もちろん冗談規定だが、ほとんどの会員はこんなことは朝飯前、ドライバーとラジオペンチ改造品で、5分もかからないだろう。

数千台のレストアをこなしてきた怪鳥をはじめ、不可能といわれたエレクトロ35を解明し、いち早くレストアの道を開いたビュッカーさん、手作りなどというレベルを超え、まさに世界に一台のカメラを作り出してしまう大先達の610さん、一流専門医にして、難しいカメラをあっさり解明してしまう、ドクターたかさき、機械と電子技術の両方に通じ、複雑な一眼レフでもあっさり直してしまうトムさん・・・
まだまだ凄い会員が揃っているのに、ハンマーで治す人(私)を温かく迎えていただけて幸せだ。
レストアは老後の楽しみと思っていたが、初老からの楽しみとなっている。(感謝)



さて、問題のC35二台はそれぞれレイムダック状態だ。フラッシュマチックは露出計は動いているが、シャッターは薄目を開けた状態で、完全清掃と給油が必要である。元々数台から組んだものなので、各部の動作が怪しい。また、レンズはカビが内部にあり、分解不能なのでこのままでは仕えない。初代はボディーとしてはきれいだが、露出計は作動せず、シャッターが怪しくこのままでは1/30秒固定カメラである。

そこで、「フラッシュマチックをベースにレンズと外装は初代を組み込む」と方針を立てた。初代は比較的少ないブラックボディーできれいだから、どうせ二個一ならこれを使おうと思ったのだ。



これは部品取りのスペアとなった初代のボディーだが、このカメラのシャッターの不調はこの印のところにあることが多い。もちろん羽根に油がつけば渋るが、そこを直しても渋る場合にはこのフライホイールが怪しい。

ただし、ここに下手に給油すると地獄を見る。レンズボードを外さないと少量で正確な給油は出来ない。ここにつけた油はすぐに羽根に廻ってしまうからだ。そうなったら大変、少しベンジンで洗ったくらいではまったく直らなくなる(経験者・笑)。給油は最小限かつ必要箇所のみとすべし。



ブラックボディーにするため、ウラブタを交換した。ここはまったく同一なので問題なし。



今回はレンズボードは外さなかった。渋ったシャッターはまずフライホイール周りに多めに給油し、後からベンジンを流して羽根と余分な油を洗い流した。ベンジンだと完全な脱脂にはならず、わずかな油分が残るのを利用する作戦だが、一般にはお勧めしない。きわめて手間が掛かるからだ。
乾燥後、鍵穴の薬(ボロン粉末)を少し掛け、羽根の滑りを良くして完了。初期型はレンズ周りが金属で調整可能、フラッシュマチックはプラスチックで一体型だった。この部分でもコストダウンされている。



フラッシュマチック(内部のリンクが一枚の板)と初代(全て腕木リンク)である。良く見ると巻き戻しボタンの部分の底板のへこみサイズが異なる。これが曲者で、フラッシュマチックに初代の底板を付けるとまき止めしなくなる。理由は簡単で、へこみ部分がリンクの板の動きを邪魔するからだ。互換性がないリンクなので、双方をぎりぎりまで削って干渉をなくした(この作業はとても面倒)

☆この機種に詳しい方は、フラッシュマチックと初代では内部が異なり、鏡筒の一番根元のリングにはまったく互換性が無いのにどうしたのかという疑問があると思う。
これはフラッシュマチック機構を外し、一部を改造してリングの動きを封じ、オート専用にして対処した。内部的にはバルブも使えるようにしてあるから、ピント再調整の時にはバルブが使える。
もちろん記録もしたのだが、これについては発表を控える。理由は、壊れたブラックタイプからこの手の改造をして「初代ブラック」として売る輩の参考になってはいけないと思うからである。残念ながら人気機種だけにそういう場合がありうるので自主規制する。(当然ながら、私はこのカメラを他の人に売るつもりは無い)







質感の良い半艶消し黒なので、小さいが高級な感じがする。



息子のバイクで露出の調子を見る。ちゃんとしていてなかなか良い。



半逆光だが問題なし。レンズは大丈夫のようだ。



先日の登山(つれづれ絵日記に掲載済み)で写したもの。難しい雪の質感もまずまずである。

☆結果として大成功と言うことだろう。お勧めできることではないが、使えるから勝ちとする次第。
JFCの原点的カメラ、久しぶりに本格的に作業した。これがなかなか楽しい。難解なパズルを解くのは知的興味と手を動かす楽しさで、レストアしていて良かったと思った。


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