KODAK PONY828

私の市内にLOOKという金属系のクラシックカメラ専門店がある。と言っても比較的最近にできたらしい。地域が違うので知らなかったのだが、ニコンが中心で品揃えが良いというのだから私には縁が無くても不思議は無い。しかし、店主は物静かで非常にカメラがわかっていて、押し付けがましくない人なので時々お邪魔している。

店主と話していた時にこのカメラが目に入った。まともな売り物にならないが、捨てるのも可哀想と言うので、まさにジャンク値段で引き取った。





前玉の距離リングがぶらぶらで、シャッターはまともに動かないし、あちこち痛んでいる。

ポニーはアメリカの入門カメラとして有名で、いろいろタイプがあるのだが、これはよりによって828フイルムを使うタイプだ。828は別名バンタム判とも言う。バンタムは同名のカメラの名前から来た呼び名だ。はるか昔に絶版で、アメリカにフイルムを売る店があるが、そのために買うのは馬鹿らしい。

実質的な巾は135フイルムに近いが、28×40oと一回り大きい。ボルタと同様に裏紙でカウントするタイプだ。これが売り出されるはるか前に135フイルムがある。何のために出したのかまったくわからない不思議なフォーマットではある。





レンズを分解すると簡単なシャッターが現れる。一応スローガバナーもあり、Bから1/200秒まで5速と意外にちゃんとしたシャッターだ。清掃と注油で問題なく動くようになった。コダックのシャッターは材質が良いのか壊れにくい。



ファインダー周りを清掃する。巻上げ軸なども外して給油



フイルムは35oを使うことにしたので、35mmのリールを加工した。供給側はつばを完全に落とすと楽に回るようになったが、巻上げ側(手前)は難しい。切り込みで巻き取り軸の爪にかかるようにして、短く細めの軸を入れて軽く廻るようにした。(簡単に書いたが数回作り直した。)



120フイルムの裏紙から切り出す。35mmの捨てフイルムを多めに巻いて、その横をゴロゴロすると上手く切り出せた。



幅に合わせた板で目安の線を入れる



35oから巻き取って完了、装填は普通だが、外す時は念のためダークバッグで行うことにした



多少パーフォレーションが入り込むが、まあまあ使える。
以後、ウラブタのフイルムナンバー確認窓から光が入らないように対策する、ピントを合わせなおすなどきちんと使えるように整備した




レンズは沈胴式で、この時代のカメラとしてはとてもコンパクトになる。51oF4.5と半端な値のレンズ



特徴的な緑の窓、この裏側にスポンジを入れて遮光した



三脚穴は真鍮と材質が良い


《試写》

ラッキーSHD100でテストした。スキャンはケラレが無いように120用の設定で行った



ちょっとフレアっぽいのは前玉のスリ傷とラッキーの特性でもある。ちょっと後ピンとわかった



機関車風の遊具



この距離だとまあいける


《失敗編》



指がチャージレバーに当たってぶれた



頭がパーフォレーションで切れた。ファインダーでは入っていたのだが・・・

《ピント再調整後アクロスで》



F5.6で1/100秒だからほぼ開放の結果だ。本曇りでフラットなので、3号に焼く程度にコントラストを上げている

☆828フイルムを使うカメラは、すでにほとんど出番が無い。フイルムの手当てが大変で、結果も飛びつくほどのものではないから当然だろう。
しかしこの描写には何となく惹かれるものがある。何を写しても、ちょっと昔の風景となってフイルムに固定されるからかもしれない。いつか見た懐かしい風景、記憶の中にだけあったそんな景色。

何年かに一本、巻き代えて写してみたくなるカメラではある。


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