FUJICRAPID S2

フジカのラピッドシステムでは高級仕様のS2を紹介する。今回は仲間のMADAMさんと歩調を合わせ、同じカメラを同時期にテストし、同じ時にインプレッションを語ろうと企画した。
MADAMさんの記事は下記のリンクにある。お互いの感性や好みは違うから、同時進行だと良い比較が出来ると思う。両方共にごらん頂きたい。

MADAM氏のFUJICA RAPID S2の記事



簡易カメラのSと違って、こちらは本格的なEEカメラである。セレン露出計とセイコーシャッターによるプログラムEEで、28of2.8のレンズとの組み合わせで、撮影可能範囲が広い。
この辺りの事情やレストアについては、本家本元の Range Finder ビッュカーさんの記事をごらん頂きたい。私のものはまったく文句無いレベルのきれいなもので、どこも故障していないのでまったく内部は触っていない。



非常に横長に見えるが、巾約130oはコンパクトなコニカC35(約112o)より少し広い程度、高さは実質60oで、ほぼ70oのC35よりずっと低い(高さは軍艦部の高いところで測定・レバー類を含まず)
これが独特の形を見せ、このカメラの大きな特徴になっている。すっきりしたフォルムと、四角いファインダー枠やリングセレンがチャームポイントだ。理解に苦しむ不思議な形が多い富士のカメラとしては非常に洗練されている。



距離計はなく、ゾーンフォーカスだが指標が細かいので、しっかり合わせることが可能だ。巻き戻しノブやホットシューが無いので軍艦部はすっきりしている。ファインダー接眼部が小さいのは時代を感じさせる。



右に供給、左に受け側のまったく同じカートリッジが入る。送り側に見えるのが感度設定部で、ここをカートリッジにつけられたチップがどれだけ押すかで感度をコントロールしている。

フイルムの端を真っ直ぐ切り落とし、両端に軽くカーブをつけておけば、思ったよりスムーズにフイルムを受け入れる。スプロケットで送るだけで絡まないのか心配だったが、まったくそういうことは起こらなかった。

《後日談・レストア》

このカメラを入手した時点ではまったく損傷が無かった。下のテスト撮影とその後の撮影でも快調に撮影できていた。しかし、リバーサルをいれて写してみようという時に突然巻き上げなくなってしまった。



軍幹部を開いてみると、巻き上げレバーがどこにも掛かっていない。矢印のところでギアをラチェットで拾うはずが空振りしている。



ここに掛かっているはずのバネが機能していない。先端部で折れていた。



レバーやリターンスプリングを外し、手持ちのバネで作り直した。この作業、理屈は簡単だが作業は面倒の代表だ。それでも大き目のバネなので何とかなった。

さすがに古いカメラなので、経年変化で痛む部品もある。ついでにファインダーも清掃したので完璧になった。

《試写》

先ずは大分年季が入った(期限切れとも言う)プレストである。設定がわからないので、露出設定部をテープで深めに止めた。対応感度の最高は200か400だろうと推定して一番奥にして見た。
結果としてほとんどのコマが使えるレベルの露出になっていたから、この方法で400のフイルムも十分使えるとわかった。

以下はいつもの通りミノルタ・ディマージュスキャン マルチ2でスキャンしたものをリサイズし、輝度とコントラストのみ「焼くならこんな感じ」に調整したものである。アンシャープマスクなどは一切使っていない。(引伸ばしで出来ないことは、スキャン後にもやらないことにしている)



昼間だがカーテンを引いた室内、絞り開放に近い



ピントは5m程度にしてパンフォーカスを狙った。思っていたよりずっとしっかり遠くまで出た

以下はラッキーのSHD100にて



朝日が当たり始めた頃、山の下の方はまだ暗い。露出計は下の明るさを見たようだ



近景に合わせた。意外なほどしっかりしている



人物描写を見たくて写してみた



富士山の定番、精進湖から。あいにくガスで山は見えにくい。それでもこれだけ出れば十分だ

☆レンズの印象はフジペット35に近い。FUJINAR-K 45mmF3.5 とは焦点距離も明るさも異なるが、製造年代が近いから似ていても不思議は無い。
ファミリーカメラにしてはしっかりした無限遠が印象的で、きちんと作られたレンズである。ラッキーはフレアになりやすいフイルムだが、その傾向も無いのはレンズのクリアーさを示している。全体としてレベルの高いカメラで、フジの真面目さを感じた。

☆フイルムの準備さえできれば、縦横を考えずに写せるスクエアなのが面白い。私が二眼レフが好きな理由の一つは、スクエア画面が好きという点だ。ラピッドにもそれを感じる。

自家現像する場合、リールに巻き込む前に片側を135フイルム同様に切っておかないと巻き込みが大変になる。出来上がりをスキャンするには8カットで35mmの6カットとほぼ同じ点を利用すると、それほど問題なくスキャンできるが、位置をずらすための架け替えは面倒だ。

35oと比較して横が短いのに16枚しか写せないのは、スプールにきっちり巻くことができない構造のデメリットだろう。メーカーで作られなくなって、自分でフイルムを詰めるしかないのだが、どうしてもスクラッチをつけやすいのは現状での欠点である。しかし、面白いシステムを使っているという気分は、カメラ好きの遊び心を刺激するものである。常用はつらいが、時々使ってみたくなる可愛いカメラだと思う。


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