BRAUN PAXETTE



ドイツはブラウン社のパグゼッテである。非常に小さくて可愛いが本格的なカメラとして知られている。典型粋なお散歩カメラとして最適の作りこみと大きさで、見ていて楽しい。



これは610さんからのジャンクセットに入っていた。610さんが一度報告されている。現状は部品欠損・各部不調で、レストアは面倒なものだ。

さしあたり、巻き戻しのためのスプロケットをフリーにするボタンがなく、巻上げノブの根元がボロボロで巻上げ(従ってシャッターセット不能)、シャッター不調、ヘリコイド不良(無限遠ストップなし)、軍艦部破損・・・まあ直すより眺める方が良いレベルだ(笑)

ほぼ同時期に距離計つき(非連動)も手に入れていたので、比較しながら手を入れてみた。



前板は後から簡単に分解できる。連動部が無いから当然だが。



軍艦部の下は簡素だ。巻き上げノブからスパーギアでスプロケットを駆動、ノブその中のテーパー部を使ってシッャターをチャージする。巻上げ規制はスプロケットが受け持ち、チャージレバーの根元で巻き止めし、シャッターを切ると巻き止めを解除する。。単純だが巧妙な仕掛けだ。

この方式は材質の良さとすべりの滑らかさがないと成立しない。このカメラでは戦後まもなくのもので材質が悪く、潤滑が悪いまま無理に使われたようだ。それで最も力が掛かる巻上げノブの内部が破損したと見た。



無理にこじ開けようとしたのだろうか、まさにボロボロになっている。



シャッターは給油して一応動くようになった。かんたんなものでセルフタイマーは無い。



軍艦部は薄いマホガニーの突き板で補修



一応形になった。距離計つきは軍艦部が少し高い。距離計無しの方で距離計窓に見えるのは光学露出計の窓、中の数字を見て露出を決める仕組みだが、今では汚れとアセで上手く使えるものではない。

これで両者テストと行きたかったが、シッャターがセットすると少し開いてしまったり、巻き上げノブの動きが悪く、もう少し手をいれることにした。もし直ればこの下に追記する予定(確率50パーセント以下・笑)



距離計は小さなギアであわせ、その数字をレンズに移すタイプ



ほとんどと言うか、基本は同じボディーなので、旧型に新型のウラブタを入れることさえできる。ただし、フイルム押さえが違うので改造しないと使えない。



旧・Steinheil Munchen Cassar 1:2.8/45mm
新・Stable-Kata 1:2.8/45mm

どちらもビハインド・ザ・レンズシャッターで、全群ヘリコイドである。

《試写》

新タイプのみ試写した。フイルムはFUJI RVP100 自家現像



これは色もピントもおかしく、外れかと思った



これは見た感じに近い。ピントもまともだ



ベルビアらしいトーンになった



明るいところで露光を控えると、俄然ベルビアらしい強い色になった

☆さすがにこの大きさでは距離計連動は無理だったようだ。元が目測だけにスペースや構造がついていけなかったのだろう。普通の撮影では距離計は不要で、目測でほとんど賄える。それでもいざとなった時に距離計はありがたい。

精密描写からスナップまでこの大きさできちんとこなせる。連動を捨てても性能の妥協はない。このあたりの割り切りと質感はなかなかのものだ。初期タイプと距離計付では同じメーカーとは思えないほどアルミの材質や仕上げが向上している。戦後のドイツ復興史を見事に反映しているように思う。

610さん、いつも面白い素材(勉強材料)をありがとうございます。


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