MARVEL



先日、ヤフーオークションでこんなカメラを手に入れた。機能は解るがどんな来歴のカメラか解らないのでネットで検索してみた。見つかったのは下記の記事一本のみ。(後で多少の情報を得た)

I couldn't resist picking up this little mystery camera when I saw it. The only identifiable markings are the words "Marvel" and "Chicago, Ill. U.S.A. " on the front shutter plate. There is also the word "Marvel" on the focusknob and the lens is marked "2 Inch Focus Acro Anastigmat." Other than that,there is nothing else. I can only assume that the camera is called "Marvel" and that it was made in Chicago. I have no idea what company produced thiscamera.

Internet searches have come up empty. This is a half frame 127 rollfilm camera yielding 3x4cm negatives, just slightly larger than a 35mm negative.

Unlike many of the simple, Bakelite, half frame 127 cameras that were produced in the 30's and 40's, such as the Rolls or the Majestic, this little guy has some actual features.

The Bakelite body looks identical to an Argus A, albeit larger to accommodate 127 roll film. It features a non-coupled, rangefinder and extinction meter. The lens is a 50mm equivalent(2 Inch), triplet, non-coated but clear and free of scratches. Focus rangeis 3.5 feet to infinity. Shutter speeds include 1/25, 1/50, 1/100, 1/200 plus B & T for long exposures. The aperture range is f3.5 to f18.
There is also a tripod socket and connector for a shutter release cable.

Now for the bad news, the extinction meter is obviously dead, no big deal there, but the focus wheel for the rangefinder does not seem to work. It turns but nothing moves in the tiny rangefinder window, probably a missing mirror.
The focus wheel for the lens is frozen, and the shutter fires inconsistently.

These are all common issues that I can hopefully resolve. It looks to be a fairly easy camera to service, although the focus dial for the lens is metal and may be rusted in place.
This should be a nice repair challenge and provide a decent reward if I can get it functioning again. The triplet may yield some good results, and the shutter/aperture ranges are adequate.
It was worth the risk at only six bucks. I figured I'd create this post, while I attempt repairs, in hopes that someone may have some additional information regarding this camera's history. My best guess from the style of manufacture is it was made sometime in the late 30's to 40's. Since the lens is not coated, I doubt it is a post-war camera, although it still could be. A 'marvel'ous mystery indeed!

(http://www.camerapedia.org/wiki/Main_Page カメラペディア投稿欄より抜粋)

私はこの小さなミステリー・カメラを話題にしたい。数少ない身元確認手段は「マーヴェル」という名前とシカゴ(イリノイ) アメリカと書かれたシャッタ・プレート上の単語のみである(フォーカスリングの上にも「マーヴェル」と表記あり)

レンズには「2インチアクロアナスティグマート」とマークされている。それ以外に、他の表記は何もない。つまり、カメラ名が「マーヴェルと考えられる。シカゴで作られたまでしか分からない。

ネット検索はヒットなし。35mmカメラより少し大きい3x4cmフォーマット、ハーフフレーム127ロールフィルム・カメラである。

これは1930年代から40年代に製作された単純なベークライトのハーフフレーム127カメラ、例えば"the Rolls"the Majestic"とは異なり、このカメラには特異な点がある。

127カメラにしては大きく、ベークライト本体はアーガスAと同じに見える。

重要な役割を持つ単独距離計を搭載。レンズは実質50mmと等価の2インチ、トリプレット(その代わりに傷が付きにくい)、焦点範囲は無限から3.5フィート。シャッターはT,B,1/25、1/50、1/100、1/200。絞りはf3.5からf18。レリーズケーブル用のソケットと三脚のソケットも備える。

さて、悪いニュースだが、距離計は明らかに死んでいる、内部にたいした機構はないのだが、距離計リングが動いても、距離計ウィンドウの中で画像が(恐らく反射鏡が脱落して)動かない。フォーカシングリングはフリーズしている。
また、シャッター速度がでたらめだ。

「これらはすべて解決することができる問題です。フォーカシングダイヤル(ヘリコイド)は金属なので、内部で錆びていても修理はかなり容易なカメラです。
これは良いレストア用で、私がそれを再び機能させることができれば、相当な満足が得られるでしょう。トリプレットは好結果を生むかもしれません。また、シャッタ/口径範囲は適切です。この挑戦は6ドルの価値があります。
私がこの項目を作成し、誰かがこのカメラの歴史に関する追加情報を持っているかもしれないことを望んで修理を試ようと考えました。
製造のスタイルから、私は1930から40年代の終わりに作られと考えます。レンズがノンコートである点からそう考えるのですが、ともあれこれは本当にマーベラス(マーベルに掛けている・訳者注)なミステリーです!」

(自動翻訳ではカメラ用語が再現できず、まったく意味が通じないので、私が意訳した)


正確な情報は見つからなかったが、会社はアンスコ系らしく、OEMでいろいろ生産された中の一台らしいことは解った。しかし、具体的なメーカーは解らないままだ。
引用した記事同様、私が手に入れたものもあちこち壊れている。レンズはかろうじてというか、ノンコートなのでカビが無く、傷も少ないが、シャッターは半目のままで開閉せず、ヘリコイドは無茶苦茶に重く、ファインダーは良く見えず距離計はまったく機能していない。光学露出計があったと思しきところは筒抜けになっている。まあ完璧なジャンクである。



距離計周りから分解してみた。レンズやガラスが全部バラバラに落ちてきた。距離計は軍艦部そのものに組み込まれ、レンズのみ本体側に貼り付ける構造だが、回転部は固まっている。



別角度から。単独距離計なので実にシンプルな構造だ。



距離計リングは注油したら何とか動くようになった。ミラーは清掃して貼りなおしたら動くようになった。距離計の調整は赤が左右で黄色が上下、普通は上下を直してから左右調整だが、これは上下が固定を兼ねるので、先に左右を合わせてから上下の調整をしないと左右のネジが動かない。調整は面倒だが、コダックのものなどより見やすい。
中央のダイアルは光学露出計の換算用。このためのおそらく数字が入ったガラス板は失われていたので、露光して少し黒くなったフイルムを貼ってそれらしくした。こうしないとホコリが入るし大穴が開いてしまう。必要なら透明シートにグラデーションと数字を書き込んだものをガラスで挟んで入れれば、光学露出計の作成は可能だが、これは最早使うことは無いデバイスなので、外見のみのレストアに留めた。


ウラブタは何かが当たったらしく、変形していてきちんと締まらない。もちろん板金屋の仕事で直した。



ヘリコイドではなくて、カム式の距離リングだった。摩擦が大きい上に油切れである。これでは動くはずも無い。カム部にはシリコングリス、根元には機械油を注した。しばらく動かしていると軽く使えるようになった。



さてシッャターである。エバセットで内部は単純だろうと開いてみた。



確かにエバセットだが、意外なほど本格的な調速装置がある。羽の油は無いが動きが悪い。この手は速度リングを外すとタイムになり、動きがわかりにくいので、指で速度変更部を高速に固定したら突然まともに動き出した。速度変更ピンが規定の戻り位置より中側になっていて異常動作していたのだ。レンズがユルユルだったりネジの厚真に傷があるのから見て、過去に誰かいい加減なことをやったと推測した。組み付け不良というわけだった。注油して完了。



ところでこれがオリジナルかどうか解らないが、フイルムを後から固定するものが何も無い。ウラブタにも何も取れた跡が無いから元々そういう構造かもしれないが、これではせっかくの距離計の意味が無い。薄い透明プラスチック板でバックプレートを作り、セメダイン]で盛り上げ気味に貼ってウラブタ(最初は左右逆に嵌められていた)を固定してフイルムトンネルになるように位置を出した。念のためピントを見たが、大きく狂ってはいないようだ。









鏡筒下の小さなレバーは、正立させるためのもの

《試写》

テスト撮影はプレスト、いつものアクロスで無いのは、このシャッターが極めて手触れしやすいからである。元々シャッターレバーの位置が悪く、エバセットで1/200秒を出すために、バネが強めなことが原因だろう。どんなにしっかりホールドして、じっくり切ってもぶれる。テストではあまり特別なことはしたくないので、グリップは避けたが、実用ならグリップは必須だろう(アイレットが無いのでその点でもグリップ使用が望ましい)



某カメラ店の中で。1/50秒だが予想通りぶれた



激しい雨の中、車の窓を開けてドアに押し付けてぶれを防いでみた



一杯に絞り込んだがそれでもオーバー、絞り込むと周りのケラレが大きくなる



ほぼ適正露光

☆コニカC35より大きく、一般的な35o距離計カメラと同じ位の大きさだ。127の34は縦位置だが、横幅が比較的あるので縦のまま写しても特に画角が狭いという不満は無い。距離計であわせてそのデータをヘリコイドに写すのは手間だが、普通はフィーとの目測で足りる。
120フイルムから切り出すと、21カット写せる。ノーマル127だと16カットだが、これだけのカット数があると、この時代には非情にたくさん写せるカメラということに成る。巻き戻しは不要だし、ファミリー用途として気楽に写せるカメラだったのだろう。
画質はそれなりかと思っていたが、高級仕様だけあって、立派なものだ。今回は元がボロボロジャンクだったのでいきなりリバーサルというのは遠慮したが、既にフイルムは切り出してある。もう一度距離計の調整を追い込んで、写してみよう。

とにかく素性でも使っても面白いカメラである。

《カラー試写》

記事の追加は面倒だが、このカメラの希少性を考えるとカラーも追加しないと片手落ちだろう。
KODAK E100VSを切り出して、一本写してみた。



レンズが汚れていて、内面反射が多いせいもあるから一概には言えないが、逆光には極度に弱い。



非常に光が弱く、絞り開放1/100秒である。きちんと出ているが周辺は見事なぐるぐるだ



ちょっとでも油断するとこの通りぶれる。上下動なので、縦位置のみとして昼間でもグリップや一脚は必須と思う。
しかし、ノンコートだけに色はストレート、晴れれば紫外線の影響ではっきり出るし、なかなか難しいが面白いレンズである。


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