MAMIYA RB67 Proffessional S



多くの写真館やスタジオフォトグラファーに愛用されてきたRB、これはその二代目で改良型のプロSである。

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 私は今年に入ってほぼ一週間に一台のペースでレストア・撮影・報告を繰り返してきた。しかし、夏の頃からそのペースは無理になった。先月まではストックファイルから続けてきたが、それも種が尽きて一時休止のやむなきに至った。
 理由は目の不調だ。興味関心は大いにある。しかし、目が付いていかない。作業がまったく出来ないわけではないが、眼鏡やらルーペやらを動員してレストアすると、その後は目のピントがまったく動かなくなる。

 昼間仕事をして、夜にレストアしてそのまま床に就くのなら何とかなるだろうが、あいにく仕事は夜、字を書かねばならず、勿論読まねばならない。昼間のレストアはほとんど無理となった。
まあ順調に老人力がついたということだろうが、定期報告はもう止めることにした。体調が良いとき限定かつどうしてもやりたい時に留める。もちろんモルト交換程度は大きな負担にならないから続けるだろうが、シャッターの内部を見るなどはほぼ終わったと思う。まあ大した報告でもないから実害は無いだろう。

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 先日、フイルムを買いにキタムラに出かけたら、RBがケースに入っていた。幾らなんだろうと買う気など無く眺めたら、1万円台後半の数字、しかもその横に「決算につきニ割引」の書き込みあり。
かつて初期型を持っていたが、あまりの重さに持ち出すことが少ないので手放してしまった。カメラとしての性能は高く評価していただけに、プロSでこの価格は驚きだった。オークションでももっと高く、手数料や送料などを考えると整備済みがこの値段は半分にもならない。思わずその場で手金を打ってしまった。

 こういうのを仲間内では「触ると欲しくなる症候群」とか「買う買うスパイラル」とか言う。何を写したいかではなく、先ず所有して写したい病気と言うやつだ(笑)

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《レストア》



 これで火がついたのか、本当に「買う買うスパイラル」になってしまった。オークションでジャンク扱いボディーやらレンズやら次々に購入、あっという間にまとも二台と、ジャンクで本体の他何もなしの三台が集まってしまった。ホルダーは新旧5個(電動を入れると7個)揃えた<明らかな病気だ



全て一応使えるが、経年変化はある。まずはホルダーのモルトを交換する。



ホルダーはアウターにモルトが集中している。細く一周しているので比較的簡単に清掃できる




先を平らに削った竹串と、ベンジン、綿棒などでこびりついたものを掻き落とし、仕上げはベンジンを含ませたウエスでゴシゴシ、その後でウエットティッシュで仕上げる。この作業の手を抜くと、仕上げが汚くなるので根気が必要だ
モルトではなく、細く切った遮光紙で遮光した。モルトより経年変化に強く、痛んだ時の張替えがずっと楽なので、ほとんどの場合モルトは使わない。少なくとも加水分解でベタベタになるのは避けられる。モルトより薄く感じるかもしれないが、つぶれが少ないので厚みは大丈夫だ。組み立てると最初は多少硬いが、すぐになじんで使いやすい



ついでに水性ウレタン塗料でお化粧直しする



これはみやっちの露出形付きプリズムファインダー、動かないと言うので分解してみた



鉄仮面のようなカバーは比較的簡単に外れる。故障と言うほどでもなく、ファインダーをセットした時に入る電源スイッチの接触が悪かっただけで、TTL露出計は復活した。露出計はカバー内に全て組み込まれている。Cdsはプリズムの接眼レンズ側に左右に二個あり、ほぼ中央部重点測光と言えよう。単独露出計で右側のダイアルを廻して定点にあわせ、ダイアルの指標から露出値を得る単独構造である



まさに巨大なガラスの塊、このファインダーは単体で1.2キロもある



装備状態。あまりの重さに笑ってしまった。これで手持ちで写すのはヘラクレス並の体力が必要だ



こちらは露出計付きのフィールドファインダー、これは露出計が狂っていた



サイドに基盤があり、ここの抵抗などで調整できる



非常に簡単なつくりなので軽量だ。左側には電池ボックスと本体に装着するとオンするスイッチがある。これを流用すれば、比較的簡単に4×5などピントグラスを使うカメラ用のルーペ兼用焦点面露出計が作れるだろう



装備状態。これの調整とCds交換を考えたが、Cdsが特殊(素子が二重構造で三本出しになっている)なのであきらめ、定点を移動させて(要するに曲げた・笑)スポット露出計と同じ値になるようにした。非常に測光範囲が狭いスポット露出計なので、連動しないと使いにくいからほとんど使わないので実害は無い。それよりピントグラスの画像を拡大できる事と、簡単に視度調整が出来て軽いのが気に入った



これは旧タイプのピントフード、ルーペを跳ね上げるバネが弱っていたので、アクリル板を追加してバネを強くした



この程度に止まれば良いだろう



さて、完全ジャンクの一台だが、諸般の事情(後述)でスペア機として復活させることになった。状態はそれほど悪くなく、モルトと貼り皮を直せば使えそうだ



バックアダプターの裏表のモルト交換と清掃、塗装の直しを行った。ホルダーだけ直しても、ここから光を入れやすいので手抜きは出来ない




皮が剥がれかかり、糊がはみ出し、非常に汚いので一度全てを剥がしてきれいにすることにした
これが大変なことだった。糊の粘着力が凄まじい上に、非常に分厚く付いているので古い糊を剥がすのは大変な作業、技術はともかく根性が必要だ。両サイドの多くのものが貼り付けてあるのには驚いた。ネーム関係も全て貼ってある



ミラーのモルトはボロボロである。ここから光が入ると嫌な光線引きになる。交換せねばならない



ご覧の通り、ほとんど役に立っていない。この作業はミラーの横なので、ゴミを後ろに廻らないようにしながら、慎重に行うべしだ。ミラー位置が狂ったら元も子もない



ここも採寸して遮光紙に交換した



完成、きれいになった。光漏れはなさそうだ




フイルムバックアダプターのモルト交換状況。これは単体で作業できるからやさしい



ジャンクから復活!



これは「小難あり」で手に入れた新型のプリズムファインダー、少し軽くスマートになった




ゴミ混入と言うことなので開いた。露出計が無いから簡単だ



アイカップが変形していたので癖直しを試みたが、あまり効果は無かった



今回入手したレンズはメンテナンス済みが多く、程度が良いので開いていない。わずかに薄い曇りのある127oのレンズを外して掃除したのみ。前群と後群がブロックで外れ、分解は容易だ。このレンズも特に問題なく、きっちり使えるきれいさになった



二号はこういう感じになった。これでピストルグリップをつければスナップ無敵(体力次第)である。ただし、これで覗くと倍率が低いので35o一眼レフみたいに感じる。視野が暗いのであまり見やすくない。たまたま視度が合うので使えるが、思うほどの機動性は無い

さて、何故二号かと言うと、仲間のSCRさんに一台譲ったからである。もちろんジャンクの方ではなく、きれいなのを送ったから、これから大いに愛用して、素晴らしい作品を見せてくれるだろう!!!

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《小物類》



ダブルレリーズ・ミラーアップと撮影を合理化するものだが、シャッターを切るバネが重くてあまり使いやすくない。むしろ、普通のレリーズをシャッター側につけ、ミラーアップは手でシャッターボタンを切る方が操作性が良い



RBは距離計式のマミヤプレスや二眼レフのCプロシリーズと共用できるパーツが多い。これもその一つで水平保持用のホルダー。RB専用はこれに連動レリーズがつく。プリズムファインダーだと形の上では合理的だが、重量とレリーズを受け持つ左手の負担が大きく、使いやすいとは言いがたい



これも本来はCプロ用だが、私はこれを使っている。作りがしっかりしていて利き腕で支えられるし、縦位置はレボルビングバックが引き受けるので、実用性が高い(腕力が無い人にはまったくお奨めしない)



これは本来はフジの68用である。直径が合わないのでアダプターリングにマミヤの77oに合うリングを接着した。この状態で手持ち撮影していると周りが引く・笑

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《68改造小作戦》



68電動ホルダーの電池ボックスのフタが壊れたものを安価に入手した。先ずはちょっと怪しい接着を剥がした。木工ボンドで止めていたらしいが、浮いてしまいカッコが悪い



裏を開けてみると単純なプラスチック細工で分解不能だ。これは接着しなおすしかない



慎重に周りにつかないようにして長時間タイプのエポキシで止めた。短時間タイプはゴム状で強度が低い。長時間タイプは流れやすく、固まるまで固定が大変だが、強度はずっと高いので、力がかかるところはこれしかない



RBでも68に対応しているのはプロSの最終型と、SDのみである。光の邪魔になるバッフル板を先ず外した。これは強度やハレーション防止に関係なく、遮光のためにあるので、外しても遮光さえしっかりすれば問題ない



フイルムホルダーを受けるレボルビング部はぎりぎりでフイルム側と同じサイズまで拡大できる。ヤスリで削り落として8ミリ広げた(互換性のある専用を探すのはほぼ無理なので実施したが、金属加工になれない人は壊すから絶対にやってはいけない。勿論この状態ではメーカーのサービスは受けられない。やるなら自己責任でどうぞ)



写ってもファインダーが対応しないと意味が無い。ピントグラスのガラスを外して枠を削つて広げた。ただし、縦位置は削るのは無理だ。スペースが無いし強度も無いからだが、私は縦位置はほとんど写さないので実害は少ない。どうしてもならピントグラスホルダーを補強してから加工するべきだろうが、もともとプロSはファインダーの上下限界は67o程度で、68の要求する74oは無理だ。ミラーボックスの大改造が必要で、現実的に不可能である



これで視野率は左右ではほぼ100パーセントになった



これにてRB68になった。68仕様は2号のみで、1号はオリジナルのままにした。とても二台加工する気にならないし、必要なら後からやれば良い



67電動ホルダーと記念撮影。ほとんど同じで68のエンブレムのみが見分けられる所だ



フイルム側は明らかに違う。わずか8oだが、縦横比から来るイメージが異なる。これなら場合によって使い分ける意義がありそうだ。撮影枚数は120で9枚、220で18枚である



これはポラロイドホルダー、フジのFP100などに対応する



取り付けるとこうなる。7センチスクエアで写せる。2号の場合は78ということになろうか、面白いツールだ



テストでフジのFP3000で写したら問題発生。暗いところは良いが、明るいと下側に光が漏れている。ホルダーの周りからかと思ったが、それにしてはおかしい



原因はこの枠にあった。外してしまうとミラーが上がる瞬間に少し漏れる。3000のポラなのでそれがはっきり出たと言うわけだ。矢印の部分のみ切り外して付け直した。ここは外しても画面を広げる効果は無い。戻して正解だろう



左が対策後である。反射はこの写真を写すためのライトの反射で、対策は正しかった。これにて68のテストも完了し、実戦配備した

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  《おまけ》


オークションで見つけた本皮のストラップである。オリジナルは狭くて肩に食い込むが、このストラップは広くて柔らかいからとても使いやすい。安心感がある良い道具だ。

作者は、sei8065さんと言う方で、ヤフーオークションにこの名で出品されている。

私も少し皮細工をするのでわかるが、この方のストラップはその材質ときちんとした作りでお奨めできる。非常に安価だから、自分で作るよりはるかに安い。大きいカメラを使う人は探してみると良いだろう。
少なくとも、プロスト(プロフェッショナルズストラップの短縮形らしい・プロになったような気分でアマチュアが雰囲気を楽しむ道具である)でただでメーカーの宣伝をしているより、はるかにセンスが良い(笑)

RBの変遷

初期型が生まれたのは昭和45年・1970年。二重露出撮影防止のロック関係がついて改良されたRB67Sが昭和49年・1974年。プロS後期型は68の電動バックを装備できるようになった。レンズマウント内径を広げて各種新型レンズに対応したものがRB67SDで、発売は1990年

後継機として電子化されたRZは、フランジバックが少し短くなり、フル電動やAEなども装備された。レンズはRBのものも一部使える。軽量化されたのも大きい改良点だが、電気式の弱みはあり、どちらが上とも言い切れない

RBとはフイルムバック部がレボルビング・回転するという意味で、67フォーマットとしては世界初

《試写》

以前と違って、レストア後の撮影にも時間を掛けた。10本以上写したから大体の傾向は読めた。とても使いこなすレベルではないが、これでスナップが出来るようにはなった。テスト撮影は127oと65oを主体にした。その他のレンズは「つれづれ絵日記」にて順次発表している。全て旧タイプのCレンズである。カリカリコントラストの最新レンズには興味も縁(円)も無い。

リバーサルはRVP100とRDPVを自家現像にて





上はRVP100にて、下はRDPだがオーバー現像に付き色は不問に願いたい



モノクロはアクロスにて







最後のカットはクリックで拡大。横1500ピクセルあるので、接続の悪い方はクリックは控えられたし

《総括》

あらためてRBの面白さを感じた。重量に耐え、機械式でブロック構造、レンズシャッターだから一度に故障する心配が無く、メンテナンスもしやすい。レンズがいろいろ出ているから、システムとしての完成度が極めて高い。一発に集中すれば素晴らしい結果が生み出せる。古いCレンズでも中判のフォーマットの利点がはっきり出るから楽しい。もちろん、誰にでも進められるカメラではないことは言うまでも無い。よほど覚悟しないと使い切るのは無理だから、相場が安いと飛びつくのは考え物だろう。
しかし、使い切れば期待に違わぬ結果が出る魅力的なウエポンである。

☆時間やページスペースに関係なく作ったら、何とも長いレポートになってしまった。しかし、この無骨で高性能のカメラを伝えるには、この位の量が必要かもしれない。何かの参考になれば幸いだ。

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