ANSCO Super Flex
日本人は行列が好きな民族と言われているようだ。まあ関西人は並ばない(並べない)そうだが、私はどうも関西人ではないらしい。なんとなれば、我家にも行列がある。「作業待ち行列」である。それも、依頼されたカメラの待ち行列が(笑)
本来の自分の作業速度ならあまりそういう事態にならないのだが、2−3月は本業の本番(入試)の時期であり、雀の涙の決算期(欠損期?)だから、時間が掛かるのはやむをえないが、ここに来てまた面倒が増えた。
還暦到達を境に左手が拙くなったのだ。五十肩が十年遅れて出た来たようだが、首から肩にかけて痛み、人差し指がしびれてドライバーを扱えない。本来は右利きだが、陶芸で鍛えたおかげで、工具は両手で扱えるし、細かい作業は左手の方が上かもしれない。その左手が使いにくいのはまさに”痛い”
このカメラはそんな中の一台だ。仲間の小児科医、Dr.Pooh のアンスコ・スーパーフレックスである。
ファインダーがあまりにも暗くて実用にならないから何とかせよとのお達しである。
ビューレンズはきれいなのだが、確かに暗い。ということで、ちょっと変わった構造のピント部を開いてみた。
ピントグラスはただの磨りガラスで、見事に汚れていた。
ビューレンズ裏側とミラーも少し汚れていた。清掃して仮組みしたが、若干明るくなった程度で、実用にはちょっとという感じだ。
置き換えに使ったのはマミヤRB用のファインダーである。フレネルレンズが細かくて見やすいものだ。
一番下がマット面、上側がフレネルレンズなのでプラスチックカッターで切り出した。保護ガラスはガラス切りで同サイズに切った。
画面全体が明るくなった。ただし、保護ガラスは厚過ぎで使えない。ファンダーが畳めなくなってしまう。結局、特殊透明フイルム(スーパーの総菜用透明パックとも言う)を切って、軽く接着した。フレネルレンズはごく弱いのでまさに保護カバーというわけだ。傷んだら鋏で切って簡単に乗せかえられるから、これで実用には差し支えないだろう。
ところで、このファインダー内部はあまり見ない構造だ。右に見えるのはシャッターの二重撮影禁止機構、両側の大きいギアはピント調節ノブと同軸で、これでもピント合わせができるという凝った仕掛けだ。ホコリが入りやすいのはちょっと他だけ無いところだが。
テストするとシヤッターの一発目が渋い。典型的な羽根油なのでベンジンなどで徹底清掃し、鍵穴の薬で仕上げたら諧調になった。スローガバナーなどはちゃんと動いているからこれで良いだろう。コダックのものなどに似た独特のシャッターで、部品が大きく耐久力は高そうだ。異形サイズの汎用レンズキャップを紐でつないで作り、これにて作業完了。
アナスティグマート、80mmで3.5のレンズは非常にきれいだ。
巻上げはクランクだが、シャッターセットはセルフではない。赤窓で一枚目を出し、カウンターを1にするタイプだ。レバーで解除すると二重写しも簡単にできる。操作性はなかなか良い。
上からシャッター速度と絞りが読める。実用として良く練れている。
《試写》
いつもの通り、アクロスにて
開放、最近接
F16、1/100秒
5.6で1/100だったと思う
☆アメリカのカメラらしく、重くがっちりしたものだ。各部の操作性が非常に良く、二眼レフに慣れていればリズムよくスナップできる。この時に透視ファインダーがなかなか良く出来ていて使いやすかった。
肝心の画質は予想以上だった。どっしりと落ち着いた良い諧調表現で、周辺まで落ちず乱れず立派である。多くの実用カメラを出したアンスコらしい信頼感を感じた。
Dr.Pooh, 面白い教材をありがとうございました。