CANON CANONET Jr.

オークションなどでは人気が無いが、私の所属するJFCではすこぶる評判が良いカメラだ。
もともと初代からGVシリーズまでの金属キヤノネットは人気が高いのだが、リングセレン露出計と目測で前玉回転のこのカメラは一般的には人気が無い。しかし目利きのJFCメンバーの作品は素晴らしいので、救出レストアにはふさわしいだろう。私の経験則でも好感が持てると感じた。



きれいな個体なのだが、動かないということでただ同然だった。



レンズはきれいだし、ダミーフイルムではちゃんと(実はちょっと問題ありだったが)動く。おそらくフイルムを入れるか、後述の方法によらないとシャッターが切れないのを知らずに判定したのだろう。
ただし、露出計が鈍い。セレンの劣化かもしれないが、一応光に応じて針は振れる。しかし感度100の設定で非常に強い光でも1/60秒あたりまでというのはおかしい。



結局、矢印のところで針のテンションを変えることで解決した。



距離計が無いから軍艦部は極めてシンプルだ。



リングを外すとセレンが固定されている。整備には都合が良い構造で、よく出来ている



あちこちネジが無いと思ったら、底蓋に至っては全てネジが無く嵌めてあるだけだった。前任者はスキルが無い+非常識だ。これでは捨てられたカメラがかわいそうだ。モノにたいする愛情とまでは言わないが、せめてマナーとして元に戻しておくのが普通だろう。この前任者はレストアする資格が無い。

このカメラはスプロケットではなく、リールのテンションで巻上げ、まき止めとシャッターレリーズ開放を行う。矢印のところで片側のスプロケットとつながっていて、パーフォレーションで駆動されて緊張状態になると巻き止め・レリーズ可能となる。

シャッターを押すとリンクが開放されて次の撮影シーケンスに至る構造だ。この辺りが汚れて動きが悪いので清掃と給油を行った。まだ時々空振りでダブル・トリプルストロークになるが、何とか使えるようになった。







《試写》

フイルムの都合でラッキーのSHD100を使った。200設定で現像はSPDで少し押した



至近距離だがこの条件でこれだけ出るのは驚いた



おそらくシャッターと絞りはハイエンドだろう



曇り日の夕方でもきっちりしている

☆フレアが出やすいラッキーでこの結果は立派なものだ。ピントが良くてコントラストがきちんとしていないレンズではこのようにならない。全体に薄ネガになったことから、露出計は少し戻せば完璧とわかった。

画質については文句無い。ただ、巻上げのあやふやさはちょっといただけない。ちょっときついパトローネだと簡単に空送りになる。その場合、単にもう一度巻き上げれば済むのだが、撮影ではリズムが悪い。なんでこのような仕様になったのか不思議である。複雑なリンクから見ればコストダウンになっていないと思うのだが。

ともあれ、このカメラは隠れた名機だと思う。


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