四台のネオカ
ネオカは戦後のカメラブームで作られた一社で、瑞穂製作所(ミヅホ光機製作所)という。1952年7月に、
同社はミヅホカメラ工業鰍ノなった。1954年11月に、同社はNeoca株式会社(ネオカ株式会社)になった。
独特の35oカメラを数機種発売したNeocaは、1960年1月に破産した。
私はいくつかのHPなどでこのカメラの存在を知り、ジャンクがあると落札していたのだが、レストアが大変だということでジャンク箱にスタックしたままだった。
頚椎腕症候群が治まり、レストアを再開したのを機に、ネオカに挑戦した。結果は途中で気に入ってしまい、二機種を追加する羽目になった。これらには共通する弱点や注意ポイントがあるので、一挙に掲載してみようと思う。
歴史的順序は無視し、レストア順に報告する。
《NEOCA 35WS》
シャッタースタック、巻上げ不良、その他外観ボロというもの。前玉回転式だがコニカC35と同様のピンで連動する距離計を持つ。比較的後期のカメラだ。
自社製シャッター、特に特殊な構造は無い。これは給油で動きだした。
前玉を固定する3本の芋ネジが全て固まっていた。一度舐めたらそれまでなので、CRCをごく少量つけて何とか外すことが出来た。連動ピンが錆びていて動きが悪いので清掃した。
その他作業は軍艦部を外して(SVで詳述)清掃給油でほぼ機能を回復した。
ネオカの平均的なスタイル
ネームプーレートを外すと距離計調整部がある。レンズから30センチくらいまで連動して近接できる。ただし、パララックスは大きいので正確なフレーミングは無理だ。
ここに露出計算表があるはずだが失われている
底部はシンプル、外してもほとんどデバイスが無い
《試写》
アクロスにて実施
港にて。強い光でも潰れない
中央公園にて。ほぼ見たとおりの諧調が得られた
第二東名工事現場入り口にて。赤い旗が風化して白くなっていた。至近距離にて
《NEOCA 35K》
WSの結果に驚き、ずいぶん以前からあきらめて放り出していたのを直す気になった。
これは簡易型の目測カメラで、他の三台より少し小さく軽い。
シャッターが途中で止まり、絞りは動かず巻上げなど一切出来ない。さしあたりレンズブロックを外して様子を見た。
何とも簡単なシャッター、軽い注油で直った。
問題は中玉が外れないことだ。どうもはめ込んだのをリング状のキャップで止めている様だが、アルミ腐食で噛みあい、外れない。いろいろやっていたらリングが外れたが、レンズはどうやっても外れない。後玉も同様の症状だ
レンズ清掃は後回しにしてシャッターコッキングリンクを直す。ここに使われていた二本の弦巻バネは錆びてバラバラだった。幸い、みやっちのパパがカセットレコーダーの分解で出たバネをストックしていたので、これを貰って再組立できた
さて、ネオカの巻上げレバーの上のネジは各型共通で逆ネジである。よほど理由があるのだろう。
その下の二本のネジでレバーは簡単に外せる。
開けてびっくり、黄色いのはシャッター連動ピンだが、赤い側にあるはずの部品が無い。これでは巻上げストップしない。もちろんどこまで巻き上げたかもわからない。誰が何のためにこんなことをしたのだろうか。
この状態でもカウンターは動く。これを目印に巻上げをストップするとシッャターがちょうど切れる位置になる。アクロバティックだがこの方法で使うことにした。
これは巻き戻し軸である。パトローネに入るべき角が削り落とされている
これが中に入っていたボルタフイルムのリール。黒いのは貼り付けてあったスペーサーだ。
このカメラはボルタフイルム用に改造されていたのであった・・・
ところで、いろいろ苦労して後玉を止めているスペーサーを外した。これで中玉の後もシャッターをバルブで開いている間に清掃できた。
バックは取り外し式で、なんとネジは外れてしまう。ほぼオモカメの構造
《試写》
ラッキー100にて行う。ダブルストロークで適当にレバーを止めて写した。したがって、コマダブリが多発し、きれいなカットは数少なかった。巻き戻しは出来ないからダークバッグで行う。35ミリでこれほど不便な試写は初めてだ(笑)
まあ何とか写せた。
《NEOCA 35SVsuper》
ネオカにはズノー搭載機種がある。ズノーでもLマウントなどほどにレアではないが、この手のカメラとしては非常に高価だ。ネオカに嵌まった私は、たまたまオークションにレストアに良いものが出ていたので落とした。
ジャンクの理由はシャッターが動きが悪いというものだった。まあそれほどのことも無く、清掃給油で復活した。この機種のみ全群ヘリコイドで、高級な仕様である。
もう一つのジャンクな点は二重像が見えないことだ。似た構造なので開いてみた
ほぼお決まりどおりに開ける。前の部分は軍艦部とは関係ないので触らないこと。変形していなくても抜くのは非常に硬い
反射がごく弱くなったハーフミラーだが、うっかり交換は出来ない。ごく薄く下のみ固定されている上、この部分が回転してピントを合わせるので、単なる45度ミラーを入れても意味は無い。止む無く少し大きめの物を背負わせた。少し見難いが、何とか使えるレベルになった。ただし、距離計に慣れていない人はフォーカスできないレベルだ。
SVには二機種あるようだ。これはスーパーというタグがついている
こちらはネオカ共通のロゴマーク
《試写》
こちらはアクロスを使用した。見えにくい時は目測にて写した。
絞りを開いた時と、絞った時で激しく変わる描写だ。逆光には弱い。
《NEOCA 35 2S》
最もネオカのデザインらしいのが初代とこれだろう。初代をセルフコッキングにしたものなので、使い勝手は良い。
大きく痛んだところは無かったが、シッャターの押し初めが重くて手ブレしやすい。二重露光防止の部分が油切れか段付磨耗しているので分解し始めた。
例によってトップは逆ネジである。その下に巻上げラチェット部が直接ついている。ここの構造は厄介で、ラチェットを外すか、スプリングを外さないと中央のギアが外せない。ギアは普通の順ネジだ。
これで巻上げ部のロックを緩めれば、上のフタが外れるのだが緩まない。ファインダーは問題ないので深追いせずこの状態で給油して終わりにした。
組立時に弱っていたラチェットのバネが切れてしまった。さしあたりの代用品を入れて組んだが、バネの径が大きすぎて巻上げが引っかかる。これは後でちゃんとしたネジに変えることとして完了。
巻上げは軽いダブルストローク
《試写》
例によってアクロスにて行った。テスト日はあいにくの梅雨空で、雨が降ったり病んだりの薄暗い日だった
予想通りなかなか良い描写だ。近接は45センチで開放でも使える。
《総括》
ネオカ4機種は共通性と個性の両方があり、なかなか興味深い。使われているレンズは2SとKがネオコールのF3.5、WSが2.8、SVはズノーの2.8で、全て45ミリである。K以外はほぼ共通のコンセプトの中級機で、一般的な撮影に不足は無い。
今回驚いたのはネオコールのWS、2Sだ。どちらも非常にコントラストが低い条件でもきちんと描写する。日本的なウエットさだが、ベタベタした感じではなく、切れ味を感じる。どちらも良いがわずかに内面反射などの対策から、WSが上か。しかし、ほとんど差ではない。前玉回転式なのに距離計に連動して実質50センチ程度まで近寄れ、パララックスはひどいが、十分使える画質なのは特筆に価する。
注目のズノーはどうだったのか。これが何とも不思議なレンズで、絞りを開くと周辺はグルグルと流れ、コントラストが低下して不思議な絵になる。普通なら「却下」なのだが、どこか遠い日々を見る視線のようで捨てがたい。これが8以上に絞り込むと流れは消え、きちんとした画像になるのだが、ここでも何か独特のフレアーのようなものが付き纏う。それでいてシャープ感もあり、何とも不思議なレンズである。価格相応かは別として、リバーサルでポートレートなどで真価を発揮するように思う。いずれテストしたい。
この四台からのマイベストは2Sだ。原始的な巻き上げ機構や独特のスタイルは、持ち歩きたくなるカメラだ。ほとんど同点でWSか。シングルストロークで意外に使いやすい。驚きの真面目描写で信頼に足る。ズノーつきSVは忘れた頃にちょっと使ってまたまた呆れるというのがちょうど良い役どころ、使う楽しみはある。Kはこれら3台に隠れて気楽なスナップ向きだが、部品が足りない現状では実用は無理だろう。縁があれば完全なものを手に入れたいと思う。