MINOLTA A2 L



ミノルタA2は以前に報告しているが、これは数少ないレンズ交換可能のタイプだ。正式名がわからないのでタイトルは直訳である。(JFC会長のHIROAさんから正式名を伺った。詳しくは彼のブログで確認できる)

Sコレクションよりレストア依頼があり、ついでにノーマルA2のジャンクを頂いたので、自分の物と比べながらどこが違うのかの検証も兼ねて分解した。



前から見たら、レンズ横の突起(用途不明、フラッシュガンの固定部か)以外は全く見分けがつかない。良く見ると、レンズが焦点距離は同じ45oでも、明るさが2.8と3.5という違いはある。しかしまさに瓜二つだ。



ビハインド・ザ・レンズシャッターだが、前玉ではなく、全群交換式だ。絞りはレンズについていて、捻じ込みが底に当たるとレンズ枠で絞りを操作できるようになる。レンズ交換で無いタイプだと、レンズの周りのカニ目で締め込む。ボディー側の構造は全く同じだから、それぞれ交換可能だ。ただし、レンズ固定機のレンズには薄いシムが入っていて、レンズ交換式にはシムは無い。いずれにせよレンズの違いを本体に伝えるデバイスは無いので、ヘリコイドは一定に動く。それでレンズ交換できるということは、交換レンズはフロントコンバーターを一体化したものかもしれない。(後日検証する予定)



シャッターの低速が不調だが、前からは全くアプローチできない。アパーチャー側も同様なのでレンズボードを外す。この作業は非常に面倒なので、確実に記録を取らないと組立は大変なことになる。



普通のカメラと完全に逆にセットされたシャッターが見えた。パーツクリーナーで洗い、給油したがどうも安定しない。



シャッター羽根を清掃したがまだ駄目だ。スローガバナーの固定ネジを少し緩めると好調になった。わずかな歪みが原因のようだ。緩んでも外れるところではないので、その状態で組んだ。



この辺りは面倒がらずに引っかかるものは全て外す方が良い。無理をすると変形したり破損する。この状態でシャッターセットなどの確認をした方が良い。固定位置のあいまいさは少ないので、シャッターセットが空振りしたりすることは少ないだろう。



このカメラの組立で悩むのは巻き上げレバー周りだ。バネが上手くかからなかったり、ラチェットが外れたりして非常に面倒なので、工法を探ってみた。
レバーの戻しバネはこの部分を固定しにくいので戻ってしまう。私の物はここに浅く刳りを入れ、仮止めしたレバーでテンションをかけ、その位置でドライバーで止めてレバーを正規位置にはめ込んだ。曲がりの無いフォークで軸を止める手もあるかもしれないが、スペシャルツールを作るまでも無いので安直に済ませた。
(さすがに拙い構造だと見えて、次のA3はこのような構造になっていないで、ごくノーマルに作られている。)



第二のポイントはこのラチェット部である。ラチェットは回転する巻上げ軸に取り付けられ、同軸のギアは乗っているだけなので、数ミリ引き上げただけであっさり外れてしまう。しかもバネまで外れるので巻上げが空振りになってしまうのだ。



ラチェットをこのように仮止めし、バネを掛けてここにギアを落とし込み、仮止めを外すとラチェットが機能するようになる。ラチェットは二つともかかるようにしないと、ギアに無駄な横の力がかかり、壊す元なので丁寧に作業したい。



頂いたノーマルタイプはこの印のところでストッパーが掛からず、いくらでも巻き上げられるので、壊れていないのにシャッターが押せず、シャッター故障だと思っていたと判明した。



このギアのロックナットがが緩んでいるので締めこんでみた(カウンター軸とここは逆ネジ)



なんとポロッとネジの頭が取れてしまった。磨耗などで痛んでいたらしい。これは直しようが無いので、このカメラは部品取りとして保存することにし、巻き上げレバーなど、以前から持っていたノーマルタイプの痛んでいるところに部品を廻して完璧な一台に仕上げた。














「両タイプの比較」

前述した45oレンズの違いなどの他、巻き上げレバーの頭・シャッター速度(3.5は旧系列で最高速1/400、2.8は倍数系列で最高速1/500)・シャッターボタン・アクセサリーシュー・巻き戻しノブ、ファインダー内の望遠レンズ用のフレーム、巻き戻しボタンについて、形状などが異なる。お互いに流用可能なので、マイナーチェンジかもともとの仕様の違いかは不明。

《望遠レンズ》

肝心の望遠レンズを借りるのを忘れていた。後日レンズを写したので追記する



100oF4.8と半端な明るさだがきれいなレンズだ



これでフルセットということになる



このように装着する。謎のピンは望遠レンズ側のヘリコイドのレバーを固定するもので、本体のヘリコイドの回転でレンズが回転し、望遠レンズ側のヘリコイドを廻す。この結果、距離計が連動するのだ。距離指標は本体側のものがそのまま使える。ダブルヘリコイドで繰り出し漁の違いを補正する凝った作りというわけだ。
このレンズを試写する機会があれば追記する

《試写》

アリスタ・プレミアム100という新しいフイルムを使った。詳細は不明だがなかなか良いフイルムで、コダックのOEMという噂があるが、実態は不明。





上がレンズ交換式(以下も同様)









☆比較するため、同時にほぼ同じデータで写した。三枚目はどちらも絞りは開放にしてみた。ただし、シャッターが倍数系列と旧系列なので、全く同じではない。現像は同時にかつ一度に行ったので、全く同じといえよう。スキャン時にほぼ同じ輝度範囲にした。

ネガで見る限り、ノーマルは全体にネガ濃度が少し薄くフラットだった。ピントは同等なので、コントラストはレンズ交換式の方が高かった。もちろんこの程度は焼きでほぼ同一になる違いである。3枚目でわかるとおり、3.5はフレアーが2.8より出やすい。

☆小雨のぱらつく本曇りで、あいにくのテスト撮影だったが、さすがロツコールである。コントラストが高く明確なピントで、絞りを開けても破綻しない。
構造的欠点はあるが、材質が良くて質感が良く、私見だが、短焦点のテッサーより鋭いピントは素晴らしい。コロコロした外観とは激しくギャップのある切れ味だ。ミノルタの徹底した物づくりはここにもあった。形は個性的だが、後の傑作機、A3の良さは既に相当入っている。使って楽しく良いカメラである。

☆Sさん、またまた勉強になりました。ありがとうございました。


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