F & H Rolleimagic 2
私は2月末にローライマジック2をろーらい庵で知り合った”ととろさん”から預かった。
ととろさんはその頃このローライマジックに嵌まっていたのだが、外観の良いマジック2をe−Bayで手に入れたが、露出計が不動、低速不良などでひさなが光機に整備してもらったとの事。しかし、露出計は完全な故障で、補修部品も無いことからマニュアルカメラで使い始めた。写りが良いので完全にしたいと探していて、なんと新品の露出計を手に入れてしまった。
自力で組み込みは無理なのでと依頼され、以前にローライコードUの整備をしたご縁で引き受けた。
ここから数ヶ月の時間が経過したが、着手できなかった。ととろさんは台湾でお仕事をしていて、非常に忙しいので夏休みに帰れるかどうかも怪しいから急がないとのお話だった。私は春先から左手が不調になって、微妙な作業に支障があり、ローライの整備など怖くてできなかった。
夏休みの頃、今度は左肩が石灰沈着性腱盤とかになった。確実性の低い手術は御免なので、X線下で痛み止めを直接患部に注入、さしあたりひどい痛みは消えた。しかし、指先の感覚は完全ではない。開き直って動かしているうちに痛みと指先の痺れはあるが、何とか動くようになった。ということで、やっと取り掛かった。
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複雑な構造で素人は手を出すなとこのカメラの権威、たかさきさんが書かれているから、先ずは観察。このカメラを使って傑作を写しているHIROさんの記事も参考にさせていただいた。当然、シャッター速度リングやピントリングの位置を決め、どこにしておいたか控えた。
前板を外すのはさして難しいこともなく、あっさり外れた。
これが新品ユニット、まだ封印がされていて、間違いなく新品だ。
本当にマジックUのものか比較してしっかり確認、間違いなさそうだ。
古い方の位置、取り付け状況などを記録する。
古いのを外してもう一度比較・確認。左の新しいものには向こう側に封印があるがわかるだろうか。
乗せ換えする。明るさに応じて針が動き、シャッターを切ろうとすると針の位置に応じて段カム(実際には斜めのリング状レール)がレバーを引き上げる高さを変え、絞りとシャッターの組み合わせを選ぶ形式だ。まさに典型的なセレン式EEである。
封印を外して針が威勢良く動くのを確認、位置ずれが起きないように慎重に組む。
EEは、シャッター速度レバーを一杯に廻すとAUTO位置があるのでそこで使う。マニュアル撮影ではそのまま廻すとシヤッター速度の変更、中央のボタンを押したまま廻すと絞りの変更になる。その時に被写界深度のインジケーターが連動する請ったつくりだ。
テストで後ろを開けて様子を見た。光の強さに応じて絞りとシャッター速度が変化するので、これで良しとした。
白いカバーが付属する。入射光式露出計として使うためのようだ。
《試写》
何はともあれアクロスとRDPVでテスト、その結果露出計の感度は良いが、少しオーバー気味なので、フイルム感度を一段高く設定してE100VSで追加に写した。掲載はアクロスとE100VS。
モノクロでオーバー気味だったので、リバーサルは1段調整したが、ちょっと暗くしすぎたかもしれない。
☆以上で修理は無事完了、早速ととろさんにテスト画像を添えてメールした。ところが、いくら待っても返事が来ない。
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数日待ったがそれでも返事が来ない。以前からのお付き合いでご自宅はわかっているので、留守宅(その時はそう思っていた)に電話をかけてみた。電話に出たのは幼い声の女の子で、難しい話は通じにくいからお「父さんは今どうしていますか」と訊いた。
返ってきた答えは、「お父さんは死にました」・・・・
耳を疑って事情を聞いたが上手く説明できないようなので、夜にかけなおすとして電話を切った。
その夜、改めて電話すると奥さんが出た。ととろさんが亡くなったのは事実だった。それも3月のことだった。
商社系のお仕事で台湾に常駐されていて、上海に社用があって出張され、そのホテルで発作を起して急逝されたそうだ。
何たることか、私が作業していた頃には、とっくに遠く旅立たれて帰らぬ人だったのだ・・・
奥さんの許可を得て、追加に写すためにもうしばらくカメラを預かった。
この記事が出る頃、カメラと共に祭壇に飾られていることだろう。
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