ARCO 35

今年は写す年にする、そんな話を年末にした気がするが、舌の根も乾かないうちに次が来た(笑)



仲間のMinareriさんから突然アルコが飛んできた。アルコは国産の中でユニークな存在として知ら れるカメラだ。距離計カメラとしては例外的に近接撮影ができ、ビューアルコと言う反射ファインダー が有名だ。頂いたものはシャッター動作が悪く、バルブが閉まらないという症状だった。この不具合は シャッター自体ではなく、レリーズリンクの固着で、レンズバレルを外して清掃給油で直った。念のため シャッターも清掃して給油した。接写ファインダーの塗装をタッチアップし、全体を掃除して完了、専用の フードも揃っているからありがたい。

実は、アルコは二台目である。以前にジャンクをSさんから頂いている。残念ながら部品が一部欠けていて、 どこかにぶつけたのかタスキが曲がっていてレンズボードが正しい位置に来ない。また、巻き上げストッパーが うまく作動しなくて、巻き上げすぎてしまうなど、一応写せるのだが正当に評価するのは無理なので発表 していなかった。今回のレストアでは初号機をレストアしたときの記録で、興味深い距離計の構造などを 報告する。



レンズ周りはシャッターリンク以外に無いので、後を緩めればあっさり外れる。



シャッターのフタを開く道具を作った。正確にはロックの半月型のキーを廻す道具だ。巾に合うドライバーを 削ってみたら、なかなか使いやすい。



セイコーのコンパータイプシャッター、特に大きな問題はなく、清掃と給油で軽く動くようになった。



前玉は簡単に外れたからオキシドールで軽く拭いた。



前板のシャッターレリーズ用のリンク。ここが渋りやすい。







距離計はきわめて簡単に固定されている。巻き戻し軸と同心のピンと調節ダイヤルの回転をギアで伝え、 それが蛇腹のタスキと距離計アームを駆動している。距離調節のダイアルは整備されていれば軽く、合わ せやすいが、カメラのホールドを考えると使いやすい位置ではない。この辺りの詳細やスペックは、ビュッカーさんのレストア報告が詳しい。



巻き上げはスプロケットに巻き止めとシャッターボタン開放の機能を持たせ、巻き上げダイアル自体は規制 されない限り回るので、フイルムが入らないと空シャッターは切りにくい。そのためにまともなのに故障と判断される こともあるようだ。どうしても空シャッターを切る必要がある時は、巻き上げながらスプロケットを回すと巻き止め してシャッターレリーズできる。 または、レンズ脇にあるシャッターレリーズ部に爪をかければレリーズできる。過渡的な 構造で、後期のものはセルフコッキングになったようだ。



レンズ周りは古典的で、シャッターレリーズ以外は連携するものがないから、分解は容易い。二眼レフなど に良く見られる構造だ。整備に難しい部分はない。この時代のカメラとしては大柄で、フォールディングにしたのは 小さくするためではなく、ヘリコイドより蛇腹の方が繰り出しやすくて作動範囲が広いからだろう。





裏ブタは引っ掛け式で簡単に外れる。なぜ蝶番にしなかったのか疑問だが、特に使いにくいことはない。


このファインダーは近接撮影専用だから、極端に前傾している。画角は狭く、パララックスは範囲としては わかるがこれだけ接近すると絵としてはわかりにくい。無いよりはましだが、三脚などで固定しないと、 本気の接写は難しい。とにかくレンズ前面からだと20センチ弱まで近寄れるから、確実に接写できる。

《試写》

ネガカラーはKODAKのGOLD400、モノクロはARISTA Premim100 を使った。













これまで画像処理でアンシャープマスクなどは使ってこなかったが、焼いた感じに近づけるため35o以下のものには 使うこともありとした。今回のカットは弱めに使っている。その点を割り引いても十分使えるレンズだと思う。一枚目は 接写のチェックだが、ピントと質感がしっかり出ていた。色は自家現像なので参考程度だが、穏やかな発色である。

☆ユニークな構造でレアなカメラではあるが、大きな期待ができるとは思っていなかった。予想外に良い カメラだ。この時代のものとしてはコントラストが高く、輝度差があってもそこそこ以上に描写する。 近接撮影の結果は十分使える。色はちょっと地味だがいやらしさが無い。写しているといかにも昔の高級機を 操っていると言う気分が楽しめる。

☆Minareriさん、貴重で面白いものをありがとうございました。大事に使わせていただきます。


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