kan's Camera Works SV 645

 仲間のフォレスターさんが、「マミヤ6のボディーだけがあるけど欲しい人は?」と書いていたので、ぜひ欲しいと頂いた。前から考えていた手作りの構想があったのである。

 前回の611は結果として大成功だった。十分な実力と実用性があるから大フォーマットとしては気楽に使える。既に10本以上写していて、今も発表待ちのカットがある。しかし、常に持ち歩くには大げさなのは事実で、軽くて持ち運びが楽で「あっちの方」に適当に向ければそこそこ写る簡単カメラが欲しい。もちろん35oカメラなら私が造るまでも無い。素晴らしい名器がそれこそ山のようにある。
 このためには120フイルムで広角レンズを搭載し、645程度が望ましい。ただ、横に構えるのは面倒なので66が良いかなとも思った。マミヤ6はダブルフォーマットに対応できるし、66としてはそんなに大きくないのに優秀な距離計が付いている。私のズボラな構想にぴったりだ。



66で35oカメラ用のレンズと言うのが構想の根幹だ。これには何よりイメージサークルが広いレンズが必要である。もちろん50o前後で66をカバーするレンズなど無いから、645程度で使おうと言うわけだが、現代レンズは軒並み不合格だ。根本性能が不足と言うより、画角外の余分な光をカットしてクリアーにするために、いろいろ光を規制しているからだ。なお、適切なヘリコイドが必須だろう。

行き着いたのはシャッター周りがアイレス35U(レンズ・ヘリコイドがアウトのジャンク)、ヘリコイドとレンズは何かについていた日東光学のコミナー45oF3.5である。レストア初期から転がっていて、出自は不明だ。後玉が曇っているので分解したままあきらめた残骸だが、何となく惜しくて残っていたのだろう。



マミヤ6の蛇腹廻りは全て捨てて、前板を作る。



本体の内部ピント調節を一杯に前進させ、前板の裏側にレンズボードを取り付けるとフランジバックに近くなった。ヘリコイドのストッパーを外し、動きを大きくさせることで調整可能範囲に入った。



ボードにヘリコイドを固定し、レンズとピントグラスを付けて位置の確認をする。この時点でプラマイ1o程度なら何とかなる。



レンズボードには凹凸があるので、その分はベニアの積層材を削って高さをあわせる。プライウッドはこのような加工が簡単なので好きな材料だ。



光漏れを防ぐ目的もあり、接着は車用のエポキシ系で黒のパテを使う。この後、周りにも塗って反射防止の凸凹にした。



シャッター部にアイレスのものを用いたのは、セルフコッキングではないからである。シャッターセットはレンズバレル脇で行えるので改造が少なくて澄む。ただし、リターンスプリングなどは取り付けが違うし、レリーズ部はボディー側から押す構造なので直接押せるように改造した。



 同じ00番シャッターでも細かいところはいろいろ異なる。回転止めなどは新設、不要な穴は埋めるなど細かい作業はいろいろあるが、さして難しい作業ではない。
 この後、ピントグラスで無限遠を出し、フォーカスレバーを固定すればほぼ完成だ。



ファインダーはLマウント用の35oのものを使う。本体のファインダーは単独距離計として使うので無駄は無い



巻上げノブのマークは当社のロゴマーク、「KCW」= Kan's Camera Works(笑)



起毛紙で内面反射はできるだけ除く



使うときにはこのフードをつける。標準レンズ用だがギリギリでケラレは無い

《試写》

フイルムはアクロスを使った



66でノーカットだとこうなる。ほぼ予想通り645なら縦位置、横位置どちらでも60度程度の画角が得られる。ただしちょっとフレアーが感じられる



本体の距離計で測り、それをフィートからメートルに換算してヘリコイドに移す。近距離は問題ない。



ここからフイルムはプレスト、後玉を研磨して曇りはほぼ取り去った後





1.5mにて。下はトリミングしてみたもの。1:1.5のアスペクトにすればケラレはほぼ無くなるだろう

☆簡単に言えばボードを作ってレンズを固定しただけの改造だ。作ったというにはちょっと工夫が足らないが、マミヤ6のボディーの良さで意外に使える。35oカメラでほぼ28o相当だから目測でも十分だ。開放でバックをぼかして最接近などと言う陳腐な写し方をしない限りピントの不安は無い。
 おまけとして距離計は使えないがマミヤ6側のフォーカシングを併用するとレンズ前からで20センチくらいまで寄れる。もちろんこの使い方ではメジャーは必須だが(笑)

フォレスターさん、ご喜捨いただきありがとうございました。

June 22/2009 kan


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