FUJI GSW690 V

フジのカメラは気になる、特に中判以上には名器が多いだけに気になるのだ。銀塩カメラも終わろうとする時にあえて蛇腹の67を出す会社だからその意気を買うという気持ちもあるのだが。

GSW690シリーズは気になる代表だった。手が出ない代表格でもあったのだが、ここに来て中判カメラにまで投売り的値崩れがあり、手が出てしまったのである。



69で65oつきは広角が好きな私にはとても魅力的だ。二歩踏み込んで写すのに最適な画角だと思う。だからかつては苦労してGL690の65oを手に入れた。レンズ交換式で別ファインダーはそれしかなければ我慢するが、できれば距離計一体型が欲しいという気持ちにぴったりなのがこのカメラである。



真っ黒なプラスチックの塊



軍艦部は簡潔で指標はとても見やすい。左側には水準器まで装備され、左右のみだが水平が取れる。広角でファインダーでは傾きがわかりにくいから、じっくり写す時は便利だろう。



絞りとシャッター速度の変更は組み込みフードを引き出すとその下にあり、不用意に動かない



ヘリコイドはゴムリング付で、質感はともかく操作性は良い



レンズ固定だから遮光幕は無く、すっきりしている。リールは赤いボタンでワンタッチで出るから楽だ



120と200フイルムの切り替えはこのプレートを裏返すことで行われる。枚数はカウンターで変更、4.8.枚(120)6枚(220)の切り替えとなる。ショートも220もほとんど無いから無用の長物に近いが、冷凍保存フイルムを使う場合は便利だ

《試写》

テストはプレストにて行った。まだ生産終了になってから短い新しいカメラで、160ショットと枚数が少ないから、機械的な心配は無い。主にレンズ交換式時代の65oとの違いを見たくて写してみた。



絞り開放1/60秒。周辺まで破綻無くしっかりしている。曇り日の夕暮れとしては文句無い描写だ。右側の少し暗いのは現像ミスによる。



中心部を取り込み原寸で見ると、解像度が高いことがはっきりわかる。



非常に暗い飲み屋の前で、絞りは8で1/30秒。合わせたところのピントは文句なしだ。



これは11まで絞ってみた。特別なことは何もしていないがカリカリと言えそうなほどコントラストが高い。

☆レンズは以前から使っているGL690用と兄弟だが、コントラストはこちらの方が高い。開放から周辺まで崩れない精密さは変わらないが、こういう違いが出るのは時代の要求だろうか。しっとりきっちりの旧型、どこまでも切り込む新型、どちらも捨てがたい。レンズが固定か交換可能かという点のみ異なり、全て機械式で電池類は一切なく、メンテナンスが容易いというよさは受け継がれている。整備しながら酷使するのに耐えうるカメラだ。
本体の使いやすさは、Vのレンズ固定の利点だ。軽く持ちやすいから実用するには不足は無い。金属質感の旧型の味わいは無いが、機能と結果が全てのプロ用だから、これは正常進化だと思う。デジタルの波に埋もれてゆくのはあまりに惜しい。

September 22/2009 kan


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