フジカ徹底レストア作戦

 このところのレストア連続で、宿題がだいぶ片付いた。そこで、ジャンクとして残っていたフジカのコンパクト35の二台と、使えるが露出計が不調でマニュアルオンリーだったフジカハーフとドライブを一気にまとめて整備することにした。

 このところの研究の結果、これらのEEなどはほぼ共用でき、外装さえも流用できるので見込みがある。直せるのなら直してやりたい。そこで、「ヒースの原の三人の魔女作戦(マクベス・笑)」を敢行した


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「それぞれの症状」

コンパクト35@ シャッター不良(シャッター羽根開閉部のピンが飛んでいる)巻上げ不良

コンパクト35A 裏蓋ヒンジ外れ、露出計不動、巻上げ不良

コンパクト35B シャッター不良、ピント出ず、外観最悪(ファインダーガラス割れ、他損傷多し)

フジカハーフ@  EE不良

フジカドライブ@ EE不良

フジカドライブA 以前に3台よりまとも一台、EE不良の二台を組んだ残り(残骸状態)

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☆作戦要旨

 各一台は部品供給用とする。その他は出来る限り復活させる。その間に撮影機能の解析と部品共用について考察する。


☆作戦T コンパクト35@A復活とEE機構の解析



シャッターがまともでウラブタがアウトから取り掛かる



レンズバレル周り。比較的シンプルでわかりやすい構造だ。清掃中



単体で動くようにして一先ずレンズ周りは完成



右がコンパクト35、左はフジカドライブ。露出計はほぼ同一、露出計の値を伝えるリンク部がわずかに違う。これは焦点距離の違いを、小さなレンズボードに乗るリングの高さの違いで吸収し、コンパクト35用はリンクの最後が高さ分違うだけだ。ハーフやドライブのレンズ周りをコンパクト35にためしに載せると、シャッターチャージやレリーズ、絞りのリンクなどがきちんと同じ位置になる(逆も可能)。もちろんフランジバックが異なるから取り付けられるだけだが、リングとアーム類を移植すれば、レンズの逆載せは可能だろう。ただし、ハーフのレンズが35mmの画面をカバーできるかは疑問だし、ファインダーの改造は必須だ。



EEの動作は、まず@の溝の中を光に応じて指針が動く、シャッターボタンの半押しでAが左に動いて指針を固定する。もっと押すとBがその位置まで動き、Bの足が絞込み部に伝える。Cはシャッター押し軸で、一番下がった時にレリーズする。

EEの不調はこのシーケンスに従って調べると簡単にわかる。メーターが動かなければ先ずそれが原因。メーターが動くのに絞り込めないのはAが押さえるか、Bがそれに連れて動くかで判断できる。Bが動かない時は絞りが固着しているので(これが一番多い)レンズバレルを外し、裏側から絞りを清掃すれば良い





意外に多いのが巻上げが出来ない故障だ。一枚目では巻上げ軸回りがわからないので、下端の歯の付いたプレートを巻上げ途中にしたのが二枚目。

巻上げトルクは軸に伝わり、黒矢印のラチェットがレバーの戻りを防止して一杯巻き上げると黄色のバネに引かれて巻上げ軸がフリーになり、巻上げレバーが戻る。

巻上げトルクは曲がったアームからシャッターチャージを行うが、同時に赤色矢印の所から上側のギアに伝わり、かみ合ったスプロケット軸に伝わって一こま分フイルムを進める。この赤色矢印の部分は直結ではなく、上からバネで押さえられていて、スプロケット軸は巻き上げレバーが戻る時に戻らないワンウエイクラッチを構成している。これらの連携が崩れると、シャッターのチャージ途中で赤色矢印の下にある回転止めが掛かって巻き上げられなくなるが、レバーは黒色のラチェットで止められて戻れない=スタックとなる。

解消方法はラチェットを外してレバーを戻し、ウラブタを開いてスプロケット軸を逆転させる。ただし、スプロケット軸には噛みあうギアに逆転防止のごく小さいラチェットが入っているので、これを一時的に持ち上げて行う必要がある。この状態でスプロケットを止まるまで巻き戻し方向に戻せば全ての位置関係が正しくなるので、シャッターボタンを押して巻き止めを解除すれば、正常になる。(ラチェット巻上げ式ではなく、全てワンウエイだから起こる故障)



初期のコンパクト35の前カバーには穴が開いている。ここからEE動作の微調整を行う仕様だが、ここだけでは良くわからないからあまり意味が無い。後期のものからは消えている。



左のアイレットが取れてしまっているので、交換中

☆作戦U フジカドライブ、フジカハーフのEE復活



手前がフジカドライブ=フジカハーフの露出計、奥はコンパクト35のもの。セレンのカバーが外れているが、途中に半固定抵抗が入る点や配線の長さまで含めて全く同一で、完全な互換性がある。針の状態は奥の形が正しく、手前は変形している。変形すると針が引っかかって露出計として働かなくなるが、この調整は極めい難しい。非常に微妙なので、ごく繊細な作業が必要だ。乗せた状態ではほとんど直せ無いから、外して調整が本筋だろう。ここの変形は絞りスタックからアームの動きが悪くなったりすると起こるのではないかと推定。また、下手な分解ではあっさり再起不能なほど壊れる。露出計本体やセレンはほとんど壊れず、この針の不良がEE故障の原因のほとんどである。(今回、同タイプ6台を整備した結論)




針がごく細いのでわかりにくいが、セレンに光を当てると針がスムーズに動けば良い。半固定抵抗はゼロ抵抗にすると設定がほぼ1段高感度になる。これを行うと感度が約2倍なので、最高200が400と読み換えられるから、ASA12-200ではなく、24-400となる。(もちろんイレギュラーな方法なので、真似をして撮影に失敗しても当方は感知しない。もちろんだがきちんと整備してシャッター速度が設定値に近く動く前提の話だ)



フジカドライブのEE復活



ドライブ、ハーフも整備。同様にしてEE復活、ついでに保管中にシャッターが粘るようになっていたので清掃し、絞りも軽く動くようにした。



完了記念写真(コンパクト35は一台だけ代表で出席)



☆作戦V みやっちモデル組立

残ったパーツ取りジャンク。これを見ていたら、フジカドライブは欠品だらけで復活は無理だが、もう一台コンパクト35が組める可能性ありと気が付いた。マニュアル可能の初期型だけに、直しておくのが筋だ。これは最近の進境が著しく、晴れて父親になったばかりのみやっち用として再生しよう。



いろいろ組みなおし、作動良好。これは貼り皮が傷んでいたのでウレタン塗装を施し、テストして気付いたカウンターの整備中



カウンターは文字盤中央のネジを外して、持ち上げてちょっと横にずらす。矢印のバネが送りラチェットのバネで、これが外れているとカウンターが進まない。文字盤を正規位置に戻したら少し持ち上げて左に回し、スタートマークを過ぎたあたりで固定すれば作業完了。フタを閉めた状態で巻上げに応じて動けば正常。



☆全ての作業が終わった。あちこち不具合で部品不足のコンパクト35とドライブが残った。これらはパーツ用としてまとめて保管する。





現有勢力全て整備完了。

☆コンパクト35の35oF2.8のレンズは、後の名器フラッシュフジカなど多くのカメラに使われている。フジカハーフ・フジカドライブも派手さは無いがハーフとは思えない落ち着いた画質で名レンズである。原始的だが意外なほど確実で長寿命のセレン式EEは、マニュアルで使う必要がほとんど無い。小型ながらずっしりとしたこれらカメラたち、本来の機能に戻せて満足している。

☆発表時期から見て、先ずフジカハーフが作られ、それにスプリングモーターをつけてオートハーフ対抗用のフジカドライブが、ついで、オリンパス・トップ対抗用にコンパクト35か作られたのではないだろうか。ここまでの検証でEE機構のほとんどが共通であり、張り革の向かって右側は全く同じで、左もほぼ同じだが、大きさの違い分だけレンズ側が長いことがわかった。セルフタイマーの有無など細かい点は違うが、まさに兄弟と言えよう。

代表でフジカドライブの写真を掲載する。残り少ないDNP200にて







試写はそれぞれ行っているが、いずれも問題なく作動している。これらの作品は「つれづれ絵日記」に随時掲載するのでそちらでごらんあれ。もちろんみやっちは私より先にいろいろ出してくれると期待している。多分三月には掲載が多くなると思う。

☆「番外、フジカドライブのスプリングモーター」



フジカドライブのスプリングモーターは巻上げ部の乗っているボードと共に外れる。巻上げノブのカバーを外し、センターのネジを緩めると本当のカバーが外れるが、分解する時にはバネが一杯緩んだ状態にすべし。一歩間違うと凄まじい力で飛び出す。これを元の位置に戻すには相当の腕力を必要とする。また、飛び出すバネで手や顔を切りかねないから、この部分は分解しない方が良い。一体で外すのが基本だ。



まき止めは二つのラチェット、トルクの伝達はこのギアが受け持つ。この写真ではセンターナットが欠けている。私のジャンクはシャッターボタンを押しても作動しないので、天テンションがあるまま外したからどこかへ吹っ飛んでしまった。このギアはセンターナットに支えられていない。センターナットは抜け止めだけが役割だ。



底部を見る。青矢印には勾玉カムが見えるのがメインの軸で、このギアがスプリング側のギアとかみ合い、全てのトルクを引き受ける。これと同軸にフイルム巻上げギアが裏側にある。勾玉カムについているのがシャッターセット用アームで、これが伝わってシャッターをチャージする。赤矢印はカウンターウエイトで摩擦を作って速度を調整する部分。このおかげで巻上げ速度がバネの強さにあまり左右されない工夫だ。



シャッターをレリーズすると、黄色矢印の所のロックが外れる。これで次の巻上げの準備になる。



シャッターが押されると黄色の軸が青の部品を押し、オレンジマークの所にあるレバー先端がロックから外れるが、シャッターボタンから指を離すまで青が邪魔するので巻上げは起こらない。指を離すと巻上げが始まる。これで一枚分巻き上げる。

スプリングが切れない限りこの機構は壊れそうも無いが、スタックしているものも現にある。私の場合は固着だったようで、多めに給油してソフトハンマーで衝撃を与えたら突然動き出した。故障のほとんどのものが固着によると推測した。

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