KONICA C35 Flashmatic & E-L

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 2011年三月十一日の東北大震災は日本全体を大きく変えている。改めて犠牲になった方々のご冥福と、被災地の一日も早い復興を願うものである。

 復興のために多くの人が我慢と努力を求められている。原子力発電所の崩壊によって避難を余儀なくされている方は、先が見えない苦しさまで耐えられている。

 各種のイベントや祭りは、弔意と緊縮の風潮から自粛の嵐が吹きまくったが、それは復興にはむしろマイナスで、健全に消費して経済を活性化するのが側面からの支えになるとわかってきた。直接の被害にあわなかった個人の生活もまた同じだ。

 レストアと報告という一見は非生産的な趣味も、経済活動活性化に少しは寄与するだろうと愚考し、活動を再開した。

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 再開第一号はコニカのC35二種である。レストアの標準機のような存在で、報告は諸先輩によって尽くされているし、私自身も何台か手がけているが、初心に帰ってこういう機種を直すのは案外楽しいからとやってみた。

《C35 Flashmatic (Bin Model)》



シャッター不動、露出計異常、前枠が傾いていると平均的なジャンク。もちろんモルトはベタベタで使えないしファインダーは曇っているのは言うまでも無い。先ずはシャッター周りの分解。Cdsが怪しいのでこの線は一旦外して全分解する



ほぼ分解した所。実にわかりやすくトリッキーな所は何も無い。今回はついでに張り皮を、最近はカメラだけでなく皮細工に素晴らしい腕を発揮しているBINくみちょ〜〜に譲っていただいた皮にしようという目論見があるので、外装は全て分解して清掃した。(☆お断り BIN氏は893関係の人ではありません。容姿から「組関係」とか「スナイパー」と噂されているだけです。実態は・・・不明・笑)



スタックしていたシャッター。このシャッターの欠点は油が廻りやすく、少しでも油があると開閉が極めて悪くなること。二枚の羽根でシャッターと絞りを兼用するプログラムシャッターなので、油の付着は即ちまともに写せないということになる。

このシャッターの分解記事は珍しく無いので、途中は省略。少しでも動きが悪いときちんとバルブ動作しないので、羽根を完全に洗い、ボロン粉末でドライ潤滑、給油は最小限にした。このようにバルブ動作を確認出来ればほぼ目的達成だ。慣れてくると音である程度動作確認できる。バルブで開放がスムーズか、閉まる時にすっきり動くかなどが必要な確認事項だろう





念のため距離計の再調整。あいにくの天候で遠くはわかりにくいので、近距離で距離計と実像が一致するようにした



ところで、電池を入れると露出計が明るさに関わらず振り切ってしまう。Cdsを外してテスターをあてたらこの通り、ほとんどショート(0.291Ω)している。これでは使えない



手持ちの新品パーツでは約1kΩ、もちろん明るさで変化する。これを使うことにした



張り革を新しい皮に貼り付け、それをトレースして切り出す。セルフタイマーの穴はポンチで抜いたが、Flashmaticのプレートは使わないことにした。ファインダー清掃やモルト交換、底部給油などは型通り実施している。多少の錆があったのでこれも処理した



ということで完成。もう少し遊べるかと思ったが、あっさり直ってしまって作業は実質二日だった。皮の色はこの写真よりもう少し明るい。


《C35 E&L》



こちらは簡易版として出ていたE&L、距離計を外して目測の4点ゾーンフォーカス、フラッシュマチックではなくシンボルマークのフラッシュ制御だが、内部的にはわざわざディチューンしたもので、コストダウンになったとは思えない

特に問題なかったので、レンズ清掃とシャッター清掃のみ行った。もちろんモルトはボロボロだったから交換



前枠が少し後退していた。前から衝撃を受けて黄色丸の部分が変形していた。これはこのカメラの仕様で欠点ではない。強い衝撃を前から受ける(落とした、ぶつけたなど)とここが変形して衝撃を吸収している。よほどひどくぶつけない限りレンズは痛まず、フィルター枠も小さい傷で済む。この部分の変形を直す(簡単)か、前枠を交換するかで楽に直せる。つまり車のクラッシャブルゾーンと似た働きをする。ファミリーユースを考えた実用的で良い設計である









外見のノーマルとの違いは、エンブレムと鏡筒の距離目盛、フラッシュモード切替程度で、ほとんど変らない。写す点ではすっきりしたファインダーと距離設定のクリック感が違うだけだ。

《試写・C35 Flashmatic》

LUCKY SHD100 (200設定)にて実施。一本のフイルムを二台で使った。







《試写・C35 E & L》







☆ハイライトや遠景が滲む性質のあるラッキーを使ったので、それぞれ特有のにじみはあるが、それでもどちらもクリアーだ。もちろん本質的に同じカメラだから違いは無い。

 どちらも軽くて操作性が良いから、日常的に使うのに不足は無い。E&Lのゾーンフォーカスは非常に軽快で、距離計を必要とは感じなかった。目測に慣れた人ならこのカメラが対応する被写体では全て同等の結果を出せるだろう。この点から考えて、このクラスのカメラがゾーンフォーカスになったのは必然的進化だと思う。その後の初期の普及機用オートフォーカスがほとんどゾーンで認識していたことを考えれば、「スナップならゾーンフォーカスで十分」と思う。

☆裏話 何で今さらC35、実は最近レストアにおいて進境著しいみやっちがいろいろ煽ってくるから、「じゃあやってみるか」となった次第(笑)

May 2011



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