小西六 KONILETTE

 コニレット、1953年新発売の可愛いカメラである。何とか写せるだけのジャンクを30年ほど前に友人から貰い、一度 だけ35oフイルムを詰めて写した記憶がある。その頃はこういうカメラに対する知識に乏しく、ボヤッとした写りもこんなものだろうと思い込み、そのまま忘れていた。

 先日知り合いから二台預かった。軍艦がベークライトの旧型と、アルミ鋳物の新型の二台で、あちこち壊れているので、新型を優先して直して欲しいと言う依頼だった。



これは前板が見事に割れてなくなっている新型。各部の動きは悪いが、決定的な損傷はそこだけだ。



軍艦部は極めて簡素。巻き止めは一回転ごとに爪が引っかかり、カウンターを進め巻上げを止める構造だ。スプロケットは無いのでコマの間隔は極めてラフである。動きが悪いので清掃して給油



フイルム室にある4本のネジで蛇腹から前がそっくり外れる。新旧共に外して、蛇腹の良いものをしっかりした方の本体に移植することにした。レンズはどちらもまあまあで、シャッターは旧型の調子が良い。これらを集めて一つにまとめた。もちろんレンズ清掃や蛇腹の補修など一通りの作業はしている。依頼の一台は比較的簡単に組みあがった。



残ったパーツと手持ちのものから自分用を組むことにした。外観がそれでも少しましな旧型の軍艦部を開いて驚いた。びっしりカビが生えている。これほどカビがあるカメラを見たことは無い。これではファインダーが良く見えないはずだ。

気を取り直してぬるま湯と中性洗剤と歯ブラシで徹底的にカビを落としたら、何とか使えそうになった。



この程度まできれいになったのでまあ良いだろう。



レンズとシャッター周り。非常に簡素なシャッターだが、これで1/25から1/200までカバーしている。少し動きが悪いので清掃して給油したらほぼ正確に動くようになった。



問題はこの割れた部分だ。外観が悪いだけでなく、このままではレンズキャップの役をしない。



テープとゴムブロックで簡単な型を準備。



エポキシ接着剤を薄く流し込み、少し固まってきた所で布を貼り付けながらエポキシを重ねる。つまりFRPを作った。以後は削りだしと補修、塗装をしてフタが完成。



同じ色を狙ってもベークライトの質感は出ないので、迷彩風にまとめた。これは塗装前の姿。強度は格段に上がり、ぶつけたとしても簡単には壊れないだろう。



専用パトローネは無いので、35ミリ用のリールを流用する。周りを小さくし、普通の逆にして突き出た部分をほぼ切り落としてみた。こうすると巻き戻しが比較的スムーズに出来る。裏紙はリーダー部だけにし、貼り付けのときだけダークバッグで行う。









《試写》

リールを二本作ったので、一本目はラッキーのSHD100、もう一本はアクロスで行う。





以上はラッキーにて







こちらはアクロス(日記掲載時に間違えてラッキーと報告してしまいました。訂正します)

☆以前(と言っても30年前)の評価は全て間違いと判明。きちんとフイルムを合わせればちゃんと写る。子供用カメラと言う設定だが極めてまともだ。さすがは日本で一番古くからの総合写真メーカー、小西六の作品である。35oフイルムから比較的簡単にフイルムを作れるようにしたので、特別な意識や準備無しで使えるのがうれしい。


July 2011


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