FUJICA MINI

 フジカミニはずっと気になっていたが、価格がとてつもなく高く、それでいてカタログ性能は低いから手が出なかった。同じフジでもフジカハーフ・フジカドライブとは違うレンズなので、リコーキャディー・オートハーフのような関係は望めないと思っていたのだ。

 今回は最近メンバーとしてJFCに加入されたdinosauriaさんのご紹介があった。ヤフオクに外観はそこそこ良いが、あちこち壊れたジャンクとして出ていた。さして高騰しなかったので、納得の価格で手に入った。





外観はそこそこ良い。このカメラは塗装が悪くて、角は塗装がはげた所があるが、全体としては程度が良い。ただし、盛大に汚れがあったので、簡単に分解して、取り外し式のウラブタや細かい部品などは超音波洗浄してみた。



シャッターは油が廻っていて、ほとんど開閉しない。ベンジンで何度も洗うと作動するようになった。ガバナーを持たない単速なので、一度動き出せば以後はちゃんと動く。



レンズ周りはほとんど汚れていない。保護フィルター代わりのUVフィルターが掛かっていたからだろう。



実にシンプルな軍艦部。固定焦点なので距離計はなく、この時代としては小さい露出計があるのみ。



露出計の基本設定がここに書かれている。50-200はこの時代(1964)としても低く狭い。東京オリンピックを機に普及し始めたネガカラーフイルムに合わせたものだろう。



軍艦部にちょっと凹みがあるので内側から叩いて修整。あまり目立たない程度にはなった。薄めたウレタン塗料で角などをタッチアップして一先ず完成。

シャッター速度をシャッターテスターで測ってみたら、5回平均で1/160秒である。1/125秒が設計値だが、だいぶ速い。しかし、バラツキがごく少なく安定しているので、200の指標で400のフイルムでもラティテュード内で十分使える。



ウラブタには起毛紙とモルトが併用されていて、モルトは完全に痛んでいたので、全て起毛紙に交換した。











《試写》

先ずは作動確認としてコニカ業務用100の期限切れで確認



どうもピントが悪いしボケ気味だ。光漏れがあるので少し対策してアクロスで確認



いくらファッションカメラでもこれは無い。後玉にカビがあるものと変わらない。レンズはきれいなのでUVフィルターを疑った。UVはきれいに見えていたのだが、これを通してみるとボケた感じになる。ルーペで確認すると細かい傷だらけだ。外すとデザインが変わるので、平面研磨をしてコーティングを完全に剥がして見た。その後に改めてアクロスで撮影。





直った。これが実力に近いものだろう。つづけてネガカラーでリベンジに臨む。比較としてほぼ同時期のフジカドライブを同一条件で写して比較した。それぞれ上がフジカミニ、下がフジカドライブ。













驚いたことに、固定焦点でも負けていない。一枚目は薄暗い近接撮影という意地の悪い比較だが、わずかにドライブの方が解像度が高い程度だ。露出はそれぞれ指標とオートであるが、二枚目は完全にミニの勝ちだった。ドライブは近景の暗さに引かれて露出がずれ、カラーバランスがずれて粒が荒れた。三枚目でミニが広角だとはっきりわかる。解像度も大差なく、ニュアンスはむしろ出ている。






☆フジカらしさはこのカメラにもあった。修復後は固定焦点なのに遠い景色もしっかり出ていて、これなら旅行の記録にちゃんと使えたとわかる。以下は4本写した時点での感想。

[長所]

とにかく小さい。重さは負けるが、小ささでは定評があるAGAT18Kとほぼ同等で、レンズが薄いから厚みはわずかに小さい。焦点距離25oは広角で、風景全体をざっと収めたり、話をしながらスナップするのに良い感じだ。相当のアップに耐える。バックを含む場所説明を入れても、深度が深くてきちんと記録してくれる。ダイアルを指の腹で巻上げる方式は、意外に軽くて扱いやすい。露出計がちょっとアンダー気味の良いところを示し、これに従えばほぼ間違いない。

[短所]

巻き戻しが面倒だ。36枚撮りだと指の皮が心配になる。シャッターは軽いが節度が悪く、注意しないと手ブレの元になる。フイルムの出し入れがやりにくい(ウラブタが外れるから)。絞りレバーの動きに対し、露出計の動きが突然変わるのでわかりにくい。ファインダーの視界が狭く不正確で、せっかくの広角レンズが生かしにくい。

☆数は出なかったようだが、実用的にちゃんとしている。実力を備えたファッションカメラというコンセプトは、一先ず成功していると思う。フルオートカメラに至る過渡期のものではあるが、せめてAEにして欲しかった。露出オートは機械式で可能な時代だ。

おそらくデザイン優先で組み込みが出来なくなったのだろう。確かにそれとトレードオフのデザイン・操作系は今でも洒落ている。人工宝石の指標は?だが、携帯電話のデコレーションを見れば見当違いではない。

完全にこのデザインのまま、レンズ交換式コンパクトデジタルカメラを作れば、案外売れるのではないかなとふと思った。


January 2012


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