FOTH DERBY

フランスはフォスのダービー(デルビー)はごく小型でユニークな仕様の127カメラだ。ずいぶん前に亜哉さんが報告している。私はこの記事でなかなか魅力的だなと思ったが、シャッターがフォーカルプレーンで、ほとんどが幕の交換が必要な古さなので敬して遠ざけていた。



 つい魔が差して手に入れてしまった(笑)



 来たのは予想よりましだった。もちろん各部にいろいろ問題はあるが、少なくともシャッター幕に穴が無い。リボンは取れ掛かり、もちろんまともに作動せず、ヘリコイドは廻らず且つ三本の止めネジのうち二本が無く、レンズは見事に汚れている。もちろんその日のうちに一気に分解した

 

 前板周りを全て外し、フイルム押さえを両方外してフイルムゲートを外すと、。シャッターユニットは一体で後に抜き出せる。なんとも簡単で整備しやすい構造だ。



 外れていたリボンを張り直した。もちろんここまで分解すればシャッター幕の交換はそれほど面倒ではないが、せっかく使えるのに交換するのはもったいない。

 シャッター幕のプリテンションは明確なギア止め式ではなく、古典的な方式なので、後から設定しにくい構造だ。矢印内側が先幕、外側が後幕のリールで、シャッター巻上げ軸(兼シャッターセットノブ)は後幕の動きと連動している。

 シャッター開閉シーケンスは、レリーズ⇒先幕起動⇒先幕に連動して設定幅でディレイ⇒先幕ピンが後幕ストッパーを押す⇒後幕起動、の順になる。これで1/25から1/500秒を意外に正確にカバーする。なお、バルブではシヤッターボタンを押している間は後幕ストッパーが入る。



 このシャッターには立派なセルフタイマーがある。矢印方向にセットする。常にセットしておいて起動できるし、シャッターをバルブに設定して使うと、1.5秒程度のシャッターが正確に切れる。



 レンズバレルの先端を廻して絞りをセットするので、普通の方法では分解できない。分解は後ろ玉を外し、ヘリコイド内にあるピンを抜いて前に外すのだ。今回はこのピンを抜くのはパスした。ネジではないし、グリスがついていて滑るから、ドリルで頭を落とすしかない。本当に必要にならない限りリスクは避ける。



 ヘリコイドには板バネが組み込まれていて、フリクションを与えている。これは始めて見る。



 外から触られにくいからか、蛇腹は生きていた。念のため角をウレタンで補強した。この蛇腹は4×5などと同様にネジで明確に止められていた。極めてメンテナンスしやすい優れた構造だ。









 ファインダーは可倒式。便利だが斜めになりやすいのが短所



 収納状態。蛇腹は前に引き出すだけだが、問題無く固定できる

《試写とメイキング》

 ヘリコイドを分解したのでピント確認と試写を同時に行った。以下はその時のメイキング画像







☆中央公園の木の下でピント確認をしていたらこの子が声を掛けてきた。お父さんと一緒に公園に来ていて、不思議な爺さんの作業が珍しかったらしい。これも縁なののでピント確認とファーストショットのモデルになってもらった。終わって「ありがとう」と言ったら「握手!」と手を出してきた。上の孫と同い年の子で、ちょっとうれしかった。

フイルムはプレスト





ちゃんと写った。二枚目はモデルが急接近でピン合わせが間に合わなかった



以前に報告したセミネッターの試写で出会った青年たちに再会。ここでフイルムがアパーチャーからズレ、ひどく後ピンになった

フイルムがアパーチャーに落ちたのは、現像タンクに巻き込みやすいように少しフイルムを狭く切り出しているのだが、狭くしすぎたと判明、カッターを修整して二本目に向かった





ファインダーが傾いていた。下の筋は先幕と後幕の間隔が開いてしまったから。(既に修整済み)



ピントはきちんとなった





ネガカラーはコダック、Potla400NC 最後のカットは開放にて。フイルム後半の片浮きは127カメラ全般の持病

☆珍しいだけのカメラだと思っていたが、フランス的工夫に脱帽だ。完全状態なら簡単な操作できちんと写せる。80年も経過しているのに今もなかなか魅力的な画像を残せるし、スナップに使いやすい。ポケットからすっと出して、気張らずにさらっとスナップできる。楽しく、可愛く、良いカメラだ。時々、絵日記用に使おう。


☆亜哉さん、記事を参考にさせていただきました。ありがとうございます。


June 2012

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