ZEISS Box-Tengor 54



 ツイッターで知り合った Issieさんから譲っていただいたボックステンゴール、これは比較的珍しいセミ判で1934年新発売の ものらしい。

☆ボックステンゴールは1920年代にゲルツが作り出した典型的ボックスカメラで、127の44から120の69までいろいろの サイズがある。ツァイスとして戦後までいろいろ改良されながら生き延びた。ゲルツのフロンターは張り合わせ二枚玉だが、 意外なほどの画質(もちろん密着焼付けで見られると言う意味で)があり、愛されている。



 シャッターは動くが外観はぼろぼろだ。皮は随所で剥がれ、あちこちが錆びていて見る影もない。これのレストアは手ごわそうだ。 何はともあれお掃除する。次なる作業は剥がれかかった皮を徹底的にボンドG17で貼り直すこと。少しでも浮いているところは 全て貼り直した。



 前板は左右二本のネジで分解できた。もちろんゲルツ・フロンター(2群1枚)も一体で外れるから清掃できた。シャッターは 単速で、計測してみると1/50秒程度だ。この手のシャッターとしては平均的なものだが、あまり使いやすくないシャッターレバー を考えると撮影はじっくりせねばならないだろう。清掃して軽く給油(と言うより錆止め)した。



 お約束通り、レバーでバルブとインスタントを切り替える。絞りは11と22の二段だが、穴あき板だから完全な円形だ。



 試写してみてファインダーの傷と暗さが気になった。縦横ともレンズを外して清掃。より程度が良いレンズを横位置用にした。 私の撮影では縦位置は極端に少ないから、横位置を優遇したわけだ。



 横位置用は反射鏡も交換した。オリジナルはコストダウンのためか真鍮にメッキしたミラーで、これが汚れているのに加えて 接岸レンズの傷でますます見えにくくなっていたのだ。



反射ファインダーとしては文句ないレベルになった。明るいところでもしっかり見える。





 磨いていたら何とかネームが見えてきた。上が1-3メートルと無限の切り替え(1-3メートルは後にアタッチメントレンズが出る) 、下は絞り切り替えレバー。

 仕上げは数日かかった。理由は「残った皮を生かして、できるだけ原形に復する事」。作業的には、皮を全て剥がして 新しいきれいな皮で張り替える方が良いが、古い皮に残った模様を生かしたい。また新しい皮を補修張りするのに合う模様がない。 そこで模様をボンドでつけて塗装する方法を試してみた。ボンドを点状につけて乾かすのを繰り返して、それらしくしたので、 乾燥待ちに時間がかかったというわけだ。と言うことで、まあそこそこぼろが目立たない程度に出来た。

 G17は半乾きであいまいに加工するのに適している。そのままだと水平に流れるので、わざと凸凹になるよう離れた点状に 付け、乾いたら隙間に点を打つ。皮が無い部分は水平に盛り付け、その上に凸凹加工する。意外に時間と手間がかかる作業だ。
(このインチキ加工は、性質がわかっていないと失敗するからおすすめしない・笑)













 これの撮影スタイルはほとんど二眼レフと同じだ。しかし、シャッターレバーはあまり使いやすくない。そこで、二本目のブレスト では、オールドカメラの撮影に適するように組んだ自作グリップを使った。

《試写》

 アクロスとプレストで試写した。アクロスはちょっと現像不足









 ここまではアクロス。現像不足で暗部がつぶれているが、これはカメラの責任ではない。







 こちらはブレスト、圧板を追加したら強すぎて擦り傷が全面に盛大に入ってしまったが、コントラストなどはこれが本来。 結局、フイルムリールのテンションを強めて平面性を上げて対処し、圧板は必要ないと判断した。最後のカットが最新版で、 ほとんど問題が解決したもの。

☆二枚貼り合わせの色消し玉、絞りは11と22のみでシャッターは1/50秒とバルブのみ。距離は近接(1-3m)に後に 画角変更レンズがはいるシンプルなというより、ほとんどトイカメだが、ゲルツのレンズは裏切らない。立派な結果だ。 無限より2-3mが強いのは不思議だ。ピントグラスで距離調節可能ならもっと画質が向上するだろう。しかし、現状でも密着焼付け で見るのには十分の画質である。

 金属製なのに非常に軽いので、持ち運びが苦にならない。家族を並べて、環境を少し入れて写す3メートルくらいでは、驚くほど シャープだ。手ブレに注意しながら、二眼レフと同様の写し方でじっくり写すのがこのカメラの真骨頂だろう。傑作だと思う。

《謝辞》

 issie様、楽しいカメラをありがとうございます。大切に使わせていただきます。

March 2013

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