WELTA Belfoca II (Welta)

 1958年に作られたカメラだから、私が小学校の頃か。それでもそろそろ六十年物。これはissieさんから譲っていただいた一台。 これは2型で、初期型に軍艦部カバーをつけ、視界切替を組み込んだもの。レンズは初期はより暗い6.3が主体だったが、こちらは 一段明るい4.5をつけている。製造はバルダから始まり、これはWELTAと変遷している。



 ドイツの目測の簡易型66-69切り替え型(66のマスク付)で、密着で楽しむと言うのが基本だった。この手のカメラは国産の フォールディングカメラの多くと同様に、目測でも実用ピントになる、ちょっと暗めのレンズと フォーマットの大きさを利して、引き伸ばし無しで簡易暗室でコンタクトプリントすれば立派な画像になる。簡易なのは距離調整 だけで、きちんと距離を合わせれば大きく引き伸ばすのに耐えるものが多い。



 汚れがあるだけで、損傷したところは無い。先ずはファインダーを掃除したのだが、なぜか巻き上げノブが緩まないので ずらして行った。ごく簡単なつくりだが66−69のマスクが内部で切り替えられる。



 軍艦部のカバー下には何もない。実にすっきりしている。



 シャッターは少し遅いので軽く清掃して給油した。プロンターの弱点、オウムの嘴のリターンスプリングにはしっかり油をつけて 錆を防止した。プロンターはここさえ健全ならコンパーより作動が軽く、整備性も良い。



 レンズ清掃。前玉回転式ヘリコイドだ。



 後玉も外して清掃。きれいなレンズだ。



 50年も経てば接着が弱くなっていても不思議ではない。皮は痛んでいないが接着が浮き出している。全て剥がして貼り直した。











《試写》

 残りが30本を切った、もはや貴重品のプレストにて









☆無限遠から近接まで、周辺落ちが少なくきっちりとピントを結ぶ。三枚目は激しい逆光で5.6でフード無しで写してみたが、 見た目よりしっかり出ている。ルートヴィッヒ・メリターには三枚玉特有のグルグルも感じられない。これなら単独距離計を乗せて 精密撮影にも使える。操作は簡易だが、カメラとしては他の高級機に引けをとらない。

 このカメラが生まれた頃のドイツは、ベルリンの壁が作られる直前で、激しい東西対立が続いていた。戦後と言うには程遠く、 物資不足など多くの困難を経験していた時代だ。そういう時代にもこのような簡易カメラ≒家族の記録などを写すカメラが 立派な性能で作られていたのだ。同時代の日本は、弁当を子供に持たせることの出来ない家庭(欠食児童)がごく当たり前だった。 カメラなどまさにお金持ち限定のぜいたく品だった。私は団塊世代だから、その時代をリアルに体験している。同時代の日本の カメラはほとんどが物資不足から材質が悪く、このような材質のカメラはごく少ない。あらためて、ドイツの物作りの凄さを 感じた。


 issie様、いろいろ考えさせられるカメラをありがとうございます。大切に使わせていただきます。

March 2013

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