FUJICA GS645W

 富士フイルムには120フイルムを使うカメラが多数ある。フジカ6に始まり、今も作っている蛇腹タイプ67、GL690で 始まる69とそのファミリー、超重量級のGX680シリーズ、そしてGS、GAなど645の距離形蛇腹式・レンズ固定目測式・ AFズーム式などさまざまだ。今回の645Wはその中では中期の45o目測カメラだ。純粋の機械式で、露出計のみ電池で 動作する。





 久しぶりでろくな競争も無くオークションで落札した。人気が無いのは当然だ。完璧なジャンク=ガラクタだからである。

@巻き上げできるがシャッターは動かない
Aカウンター不良(オートマットしない)
B裏ブタに謎の穴(二箇所)
Cレンズ周りは傷だらけでレンズが激しく汚れている

 ジャンク・部品取りとして設定されていたが、一般的には「使えるところが無いゴミ」レベルなり。人気が無くて当然。 私か、ごく限定された数寄者しか拾わないだろう。



 開けてびっくり、中はこの通り。「ナンジャコリャー!!!」 かくして次の結果が追加された。

Dフイルム圧板がない
E120-220の圧力切り替え部が欠落
Fファインダーは汚れ多し
G露出計は動いているがアンダー



 後玉も汚いしカニ目は傷だらけ。意味不明の古い裏紙の一部が残っていた。巻き上げテストでもしたのだろうか。





 幸運なことに、軍艦部は素人が開いた形跡なし。ファインダーを清掃し、巻上げ部とカウンター部も清掃・給油して作動回復。

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 ここで、このような状態になった理由を推定した。もちろんあくまで私の推測だが、

A、前の持ち主は35oのスナップから発展し、中判では特に軽いこのカメラを手にいれた
B、メンテ無しで使い続けていたらあちこちマイナートラブル発生、特にカウンターが怪しくなった
C、修理に出すのは高いと思った。「裏紙でカウントすれば良い、ついでに16枚写せる」と発想
D、邪魔なフイルム圧板と圧力切り替えを撤去、赤窓一号を開けた
E、フイルムによっては最初の位置では数が読めないので、69窓位置に再度穴を開けた
F、無理やり使っていたがシャッターが不調になった
G、あれこれいじったが直らないのでデジに乗り換え、下取りに出そうとした
H、壊されているので下取りを断られ、二束三文で古物商へ
 、・・・オークション経由で私の手へ・イマココ

 けちなところから、私と同世代かもう少し年上?・・・けちで頭が悪く、カメラを慈しまない奴なのは間違いない。

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 次は前玉。富士の美点で三枚が全て分解可能だった。少し汚れとカビがあったが、それほどひどくはなく、そこそこ使える レベルになった。(後玉もほぼ同じコンディションだった)





 シャッターに至る。全くの機械式で、セルフタイマーもバネ仕掛け。レンズバレルを分解したので、絞りとシャッターの設定値を 露出計に送り込む抵抗体と、それに接触するシューを清掃した。シャッターはプロンターの改良型でセルフタイマーも機械式。 シャッターセットはこのシリーズ独特のワイヤーで引く形式(切れることがあるので給油は必須)





 このカメラはBが無くタイムだけがある。速度設定に関わらず専用ボタンを押すと開き、シャッターボタンを押すと閉まる。 現状はシャッターボタンだけではシャッターが作動しない。矢印のところのリンクが押し足らないのだ。磨耗か変形か、ずれは ごくわずかで、クリアランスを1.0ミリ狭くすると押したままの状態になってしまう。



 このパイプで1.0o程度、これでも厚すぎるのでスチールの0.3o程度の薄板を半筒上に加工して、リンクエンドに張り付けると シャッターシーケンスが復活した。もちろんシャッターも清掃し、ドライ潤滑にしてみた。ドライ潤滑だと冬の戸外でも確実に 動作する。耐磨耗の点では多少疑問があるが、私が使う頻度では問題ないだろう。



 ファインダーはちょっと樽型だが見やすい。シャッター半押しで軍艦部組み込み露出計の表示が出る。+−は適正の上下一段の ようで、逆光補正などに使いやすい。できればシャッター速度の表示が欲しい。広角なので絞り表示はあまり必要では無いだろう。



 ヘリコイドの2mと5mにクリックがあり、マークがある5m、絞り11では、3m−∞が被写界深度に入る。ASA400のフイルムを 入れ、1/250秒の絞り11で使えば、つまり昼間ならそこそこの絵がパンフォーカスで撮れる。



 私は220フイルムを使うことはほとんど無い。自家現像で220は処理しにくいから220はおまけ機能で良い。120に合うように手持ち 部品から66用の圧板(フジカ6用)を探して位置決めする。220は裏紙が無いから少し前進するので、圧力を増して対処するのだが、 元々を少し強くしておけば兼用できるのだ。(120-220はカウンター切替だけでまず問題なく使える・当社比)



 位置に置いて接着剤(多少の動きが欲しいのでゴム系のG17)をつけて裏ブタを閉じると正確に接着できた。圧力は常識の範囲 (巻上げが軽すぎず、フイルムにスクラッチが入らない)なのでこれで良しとした。





 穴は裏にセロテープを貼り、上から黒のセメダイン・スーパーXで充填、下の穴の回りはリングを貼って皮で仕上げた。



 何とか使える形になった。











《試写》

 LUCKY SHD100にてテストして見た。



近景良し


無限遠問題なし



近景・開放描写問題なし

 現像がちょっと不足だが、シャッター速度とピントの点で問題は無い。露出計は正確に動作するようになっていた。 大体良いので続いてブレストで確認してみた。(ちょっとフレアっぽいのはラッキーのこのフイルムの特徴だ)





 海辺のコントラストが極めて強い状況だが問題ない。

☆45oでF5.6だから35oカメラ換算で28o程度、目測で何の問題も無い。室内で使うには苦しいが、それでも絞り開放で きちんと描写する。戸外スナップには最適だろう。レンズシャッターでショックは少ないが、カウンターの解放で意外に ショックがある。低速で支え無しだと1/30秒を下限とするのが良いと思った。

 露出計以外に電池に頼らず、巻き上げ・ピント合わせ・絞りとシャッター設定・感度設定は手動である。これなら多少の トラブルがあっても何とか画像を残せる。電池切れでスタッがは無いのは何より安心ポイントだ。(いまだに電気カメラは 信用できない昔人間限定・笑)

 一応写れば大成功と言うひどいジャンクだったが、きちんと写るカメラに戻った。当初性能に戻れば、現代の645カメラだから 不足などあるはずも無い。なぜこのカメラを救出したか、約650グラムと軽量でそこそこ小さいから、軽くスナップできて画質は 120のもの、しかも15カット写せる。つまり今の私が常用するには理想的だ。

 母が長時間の放置に耐えられないので、撮影できるのは午後に2−3時間程度である。気軽なスナップでそこそこ 以上の画質が得られ、カット数が15枚という仕様はぴったりなのだ。精密描写なら他にいくらでもある。また、仕事の性質から 夜景はほぼ不可能なので(今年度は今のところ日曜に休めるかもだが)レンズの明るさは問題にならない。

−−−−−−−−救出成功!−−−−−−−−−−


April 2013

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