KODAK No.4 PANORUM-KODAK MODEL D




パノラムコダック、レンズが半回転して本物のパノラマ写真を写すカメラの代表的古典機。これはその初期の頃のもので、 121というはるか昔に消えたとんでもなく大きいロールフイルム仕様だ。



 このカットは610さんにお借りした。長くて大きいのが121フイルムである。

 昨年、S氏に「これを何とか一度写せませんか」と言われ、「やりしましょう」とソン氏のような返事をしてしまった。 しかし、そう簡単にはいかない。そのまま時間のみ過ぎた。喉の奥の骨のように頭の隅に引っかかったままだった。


《問題点》

@フイルム幅が4×5に等しく、一カットがA4の縦より長い。フルスケールだとバイテンから切り出しか印画紙しか使えない。 (実測長・305o)
Aリールが違うというか、異様に長い
B120を使う場合、上下を規制するので、枚数は赤窓では全く見えない
Cシャッターが不調でスムーズに動かない(後述)
Dシャッターセット位置にする時に首を振り、何の遮光も無いので二カット目はかぶる
E(本機は)シャッターセット位置が磨耗でずれ、光が入るところで止まる
F絞りがなく、シャッター速度は二段だが遅い方はせいぜい1/30秒程度なので使えない=露光は自然任せ
Gアナログではバイテン引伸機が必要だがほぼ無理、A4スキャナー・キャリヤ無ししか画像にする手段が無い。


 ざっとだがこれらの点を解決せねばならない。120を使うと決めたが、テストフイルム巻上げでガイドに沿わず落ち込んでしまい 頓挫、そのまま塩漬けになっていた。

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 先日、気を取り直して作業に入った。先ずは何より120フイルムを使えるようにせねばならない。ちなみに120フイルムで 2カットしか写せないのだ。(試写6カットに120が3本消えた)



 フイルム幅を狭くして120を使うため、厚紙などいろいろの素材を試みたが、強度と滑り良さからPPシートでガイドを 作ることにした。片側だけ仮付けして様子を見る。支えの柱には「これは本体を支えている。フイルムはこの下を通せ」と 書いてある。

 ガイドにはフイルム幅のところにPPシートの切れ端を貼ってフイルムガイドとした。動きを見ながらの現物合わせで 120規格のぎりぎりで上下を設定した。フイルム装填が難しいが面積は稼ぎたい。



 レリーズ後の待機状態になっている。こちら向きだと光漏れは少ない。(レリーズするごとに穴が広がる)



 ガイドを上下につけてみた。若干、上側が広いが特に意味は無い。規制は均等が良いのだが、下を固定してから上を決めたら ちょっと狭いので急遽上を狭くした。





 フイルムは120のリールの上下に同じリールを切って平板を入れて延ばす方法を試みた。この方法で富士とコダックのリールが 使える。ただし、巻き上げ側はこの方法だとセンターがぐらついて上手く巻けないから、中に残っていた木のリールをそのまま 使うことにした。引っ掛かりを防ぐため、位置は決め無いから、フイルム取出しはダークバッグが必須。



 リーダーペーパーを大幅に延長して接続すれば、何とかいけそうだ。スタート位置はフイルムの先端を手探りで決める。富士だと わかりやすいが、コダックはわかりにくいので、ノブの回転数で決める方が良いだろう。



 シャッターは向かって右に廻すとレンズがスタート位置を向く。その後、レバーを反対側に引っ掛けると準備完了。指で 押しているのがレリーズボタンだ。引っ掛け位置は二段、つまり二速ということになる。(ただし、低速側は遅いのとひっかかり 易いので使えない)





 ファインダーは反射式であまり役に立たないが、画角のセンター合わせには使える。レバーはシャッターセットのために先ずは 左に廻す=レンズが反転・レバーを右の上下どちらかのクリックにかける・レリーズボタンを押す、という手順。レンズが 反転する時に光が入る(ぶつかるので前のフタを開けなければならない)から、この操作は遮光しないとできない。

 

 フイルムの出し入れはこのように三方に開いて行う。この構造で光漏れは無いから組み立て精度は立派なものだ。



 ギアやフックの磨耗で少し開いてしまうので、遮光板を入れた。これで画角が少し犠牲になるが仕方ない。直したければ 部品から作り直すしかない。



 画面に向かって左から180度+回転する(撮影画角は140度+)。これはレリーズ後の位置



 コダック製品らしく、形式がしっかり書かれている。最後のパテント表記が1914年だからその頃の製品だろう。1914年、 第一次世界大戦開戦の年だ。父が小児の頃、母が生まれた頃・・・間もなく100年か・・・



 右横から



 後から。まさに箱だ。赤窓は全く役に立たない位置にある(中から塞いだ)





 テスト風景



 テストでピントが甘すぎるので絞りを入れるため前を外した。同時に内外から光漏れをパッチを当てて補修



 焦点距離が135o(推定)なので、F22-27程度の絞りを入れた(レンズ前なので絞り効果は薄い)

《試写》

 先ずはアクロスにて二カット写した。

☆撮影手順

@フイルムにスペーサーを装着し装填
A予備リーダーペーパーとフイルムリーダーペーパーを接着(シャッターはセットしておく)
Bダークバッグ内で手探りで1カット目まで巻き上げる
C撮影
D巻き上げ(約7回転ノブを廻す)
E冠布、ダークバッグなどで遮光しながらシャッターセット
F撮影
G全て巻き上げ
Hダークバックでフイルム取り出し・現像タンク巻き込み
I現像





こちらは絞りを入れる前。とにかく写った。ムラの原因は調速部が効きすぎているから。





TX400での結果。まだシャッターの動きがムラだ。また、本体継ぎ目から少し光漏れが出た。画像には影響なし。

 回転部はフリーだと当然ながら次第に速くなる。それを適度に規制するため、半回転ぐらいからバネでフリクションを 与えているのだが、その部分が強すぎるのだ。そこでブレーキがきつくかかる=オーバーになるので、この部分の当りを 弱めようとしたが、なかなか上手くいかない。

バネを磨き、少し捻って当りを弱めた。これ以上力をかけるのは怖いのでこれで完了とした。二速の低速側でも何とか スムーズになった。使うのは高速側なので、これで良しとした。結果から逆算して、高速側は1/125秒程度だろう。 (焦点距離135o、絞りF=27として推定)400のフイルムでは多少の光漏れがある。本番はASA100を使うしかない。 濃度はフイルムのラティテュードと現像に任せる。完全な「押すだけ」カメラだ。





 アクロスが無かったので、手持ち最後の100のラッキーにて写してみた。何とか使えるレベルになった。試写はこれにて完了と した。よりピントを良くするには、レンズ性能は変えられないので、より絞り、スリットを狭くするのが良いが、その分シャッタ ー速度が上がるからフイルム感度を高めねばならず、光漏れに弱くなるので難しい。ストロークの規制がかかる瞬間と最後はブレ ーキがかかってしまうがこれは仕方ないだろう。

☆原始的だがそれでも広い範囲を写そうという工夫が詰まっている。何が写っているかわかるのだから記録はできている。つまり 100年前に既にカメラの基本はできている。今回もそう感じた。


−−−−−−−−I've done it. 復活成功!>Sさん−−−−−−−−−−


April 2013

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