ZEISS CONTAX(1)

 コンタックス、ライカの対抗馬として一世を風靡したツァイスの35o距離計カメラ。機能はライカを上回り、戦前には どちらが最高峰かの議論を巻き起こした伝説的カメラでもある。

 このところ、テストやレストアがほとんど120フイルムのカメラだったので、たまには気楽(?)に使えるカメラを 使ってみたくなり、Sコレクションに並ぶ一ダース以上のコンタックスの中から初期型(1930年代)を借り出した。



 黒いコンタックスは最もコンタックスらしい。過剰に長い距離計基線長を持つという点もまさにコンタックスだ。この個体は 一応整備済みだが、シャッターの高速が怪しいということだった。ただ、その場ではきちんと作動しているように思えた。



 沈胴のテッサー50o2.8、ライカならエルマーか。ヘリコイドは無いので極めてわかりやすい。



   多少の曇りを感じたので分解掃除。構造的にはツアイスの基本どおりなので全ての面の清掃ができた。



 ゾナー85o2.0 後玉は厚い貼り合わせレンズ。非常にきれいだったがホコリがあるので分解。





 絞りは一般的な方式。外のバヨネットを使い、回転ヘリコイドを持っている。



 本当に基線長が長い。巻上げは正面のダイアルで行い、その根元にシャッター速度変更が組み込まれている。



 上から見ると本当にフラットですっきりしている。この時代のものには珍しくアクセサリシューが装備されている。



 後はファインダーと距離計用接眼レンズ、カウンターをフリーにするボタン


 裏フタは取り外し式で、左右二個のノブで行う(NIKON F が近い)。巻き戻しレバー(スプロケットフリー)はここについている



 この時代のカメラはパトローネとマガジンの共用が多く、巻上げ軸は取り外し式で専用マガジンと交換可能。裏ブタ開閉ノブは マガジンの開閉も同時に行う。(だから開閉ノブが二つある)



 伝統の金属製鎧戸式縦走りフォーカルプレーンシャッター。リボンをメンテナンスされていれば極めて堅牢



《試写》

 モノクロはアクロス、おまけのネガカラーはコニカセンチュリア400にて

Tessar 50mm F2.8













Sonnar 85mm F2.0







 レンズ交換式カメラの撮影結果はレンズの性能でほぼ決まるから、撮影結果は参考まで。旧タイプノンコートの短い テッサーが予想以上に健闘している。完全清掃したら、逆光でファインダーがハレーションだらけでもちゃんと抑えて いた。ゾナーは絞り込まないと全体に甘かった。もちろん絞ればピントもコントラストも良く出る。近接で絞りを開いてリバーサルで 写すなどの用途がゾナーにふさわしいのだろう。(私は望遠レンズが不得意なので、この結果は単に使い方が下手だから)

☆この試写では三回出直した。理由は未露光が半分以上になったからだ。普通の未露光はシャッター速度の不安定から 起こり、一部が薄く写っていたりでムラになる。しかしこれは「○」か「×」だけだ。しばらく調べて判明。シャッターのセット位置が 二段ずれていたのだ。指標が薄くなっていて、最高速はあてにならないから1/200固定のつもりだったが、1/1000秒に設定していて、 時々後幕ストッパーがかからず閉まったまま走行していたのだ。ネガ濃度の薄さは露光不足だった。


 初期タイプのシャッターは巻上げ時に三段に力加減が変化する。最初はフイルムだけ、続いてシャッター幕を一体で巻き上げる トルクがかかり、軽く止まった感じの後、スリット完成までずるずると巻く。この最後の部分の感触でおよそのシャッター速度が わかる。古典的なセルフキャッピングのフォーカルプレーンシャッターそのものだ。

 この構造から、シャッターセットは巻上げ前に行わなければならず、撮影体制に入ったらシャッター優先で写すしかない。実用では 大きな問題ではないが、セット後に変更するバルナックライカの方が優れている。

 長大な基線長は確かに良いが、手ですぐに窓を隠してしまうので使いにくい。後のモデルが縮めたのは当然だ。距離計機で長い 玉を使うのはファインダーの精度から使いにくく、軽さを生かし、短い玉でスナップが基本の守備範囲、無駄に長くても意味は無い。

 持ちやすさ、手の感触は一般的にはバルナックライカが勝るだろう。私は手が大きいのでコンタックスの大きさと形がカメラらしく、 しっくりすると感じた。ファインダーの見易さは同等、距離計はコンタックスが精度的に勝るのだろう。ストラップのフック受けが付いてい るのは目立たないが大きな利点だ。シャッターは縦走りで金属という点と、リボン切れや油切れ以外に故障例を聞かないからコンタッ クスが上か。二重の爪を持つバヨネットマウントは固定位置がしっかりしていて使いやすい。ライカに対抗すべくツァイスが 総力を挙げたと言われるのは納得できる。ライカに無い機能と性能を目指していたのだろう。無骨なつくりだが、確実な品質と 動作はまさにツアイスだ。地味だがストラップを使えるのは実用として優れている。

 トータルで評価すると、この時代のカメラなのに古臭さを感じさせない魅力がある。そう感じるには慣れが必要だが、慣れれば 魅力的なレンズ群と共に高く評価すべきだ。新品時代にライカより高価だったのは納得できる。(そこそこ高価だから私に縁が 無いのは別の問題・笑)


−−−−−−−−I've done it. Thanks a Lot. > Mr. S−−−−−−−−−−


May 2013

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