Sakai Toyo-View 45G



 しばらく遠ざかっていたが、大きいフイルムでじっくり写したいと思って再開した。

 トヨビュー、典型的な国産ビューカメラである。使う人のほとんどがプロフェッショナルで、広告や出版、ファッション など質を求める時に使われるものとして歩んできた。

 このところこれら大型・中型カメラの凋落が激しい。プロの多くがデジタルに移行したのか、もはや価格とは呼べないレベル にまで下がっている。

 ただし、この手のカメラは本体が安いからと飛びついても簡単に手におえるものではない。レンズ・レンズボード・ フイルムホルダー・冠布・ルーペ・大型三脚・各種フイルムバック・・・道具だけでも多い上、習得すべき使いこなしの 技術は複雑にして多岐だ。画質は選んだレンズと腕で決まる、究極のマニュアルカメラである。

 レストアを始めた頃、JFCの亜哉さん610さん たちといろいろ研究してきたから一通りはわかっているので、フルモーションのこいつ(ジャンク2台で組んだ)に挑戦した。 安く豊富に機材が溢れているから「今でしょ」

《レンズ群》



 メインで使うのはこの4本、他にスーパーアンギュロン90o、バレルのテッサーやヘリアーなども参加予定。






 限界的広角にリンホフ69用のアンギュロン65o(135換算21o)を採用。ただし、いつでも戻せるようにベニアで二重の レンズボードにしてみた。ついでにバレルレンズ用にシャネル5番をつけたボードも製作。







 ブツ撮りからポートレートに風景まで、標準的でほとんど万能のジンマー150o。これもリングが外れなくて投売り。 タガネとハンマーでセットリングを外して整備。



 プー博士から拝領のメオプタ・ベラー210o、ポートレートなどに良さそうだ。



先日、Sコレクションからジンマー240oも来た。これはまだ写していない。





 ボードから外れないジャンクと言うことで手に入れたコムラー400o(テレタイプ)バイスで捻って外し、シャッターを 旧コンパーからコパルに変更して整備した。前玉に点状の深いカビ痕があるからコントラスト低下はあるだろう。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーーーーーーーーーーー

《本体》

 きれいだがパーツ不足のものと、ケースつきぼろぼろ(フロントスタンダートが壊れている)だが新品蛇腹などいろいろ ついたもの。整備したので一台は完全な、もう一台は一部機能が使えないがほとんど問題なく使えるスペアになった。



 専用アルミケース。フルセットが全て収まる優れもの。ただし、無茶苦茶重い。カメラマン助手をしごいた奴。



 延長レールをセットした本体。150o程度ではこの長さは必要ない。接写したい場合以外は必要ないだろう。ただし、 長い玉には必須。



 4×5標準ピントグラス部。リアスタンダードと蛇腹を交換すれば8×10に対応する。



 短焦点用袋蛇腹。へこみボード併用で65o程度が一般的な限界。レトロフォーカスレンズだともう少し短くてもいける。

《パーツ・用品類》



 69用クイックチェンジヤー。グラフレックス、マミヤRBホルダーが使える。他に標準4×5用のホースマン69ホルダーもある。



 新品のレリーズアダプター(への字の部品)とエアレリーズ(レリーズショックがごく小さい)



 使い込まれたスタジオデラックス。これはぼろぼろのケースを接着して再塗装しているところ。ちゃんと使える3台目 スタデラに昇格。その他レリーズやフィルター、冠布やルーペなどだが、写真は省略した。

《試写風景》





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《一台に未現像フイルムが入っていた。FUJI 160NS》





 捨てるのは可哀相なので現像してみた。色バランスはちょっと狂ったがピントは立派なもの。どこかの工場の 建設現場だろう。4×5を持ち込んで実際は120フイルムで撮影したと見た。4×5なら確認はポラを切るのが普通で、120を 使うのはコストダウンのためだから。(クライアントに見せる効果で4×5を持ち込んだが、実際の撮影は120という ちょっとずるい技)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《試写》

 全てアクロスにて。一部に現像ムラがあるが、タンク内でフイルム同士が張り付いたため。



ジンマー150o



ジンマー150o・中心部



アンギュロン65o・シャッター暴発で上部に盛大にダブリ



アンギュロン65o・空のみ修正。ダブらなければほぼこの感じに上がったはず



メオプタ・ベラー210o



コムラー400o



コムラー400o・中心部

 ピントについては専用かつ現代物のジンマーが抜け出している。トリミングで望遠領域の範囲にしてもきちっと来る。 ベラーはピントグラスで非常に見やすい。周辺まで光が良く回っていると言うことだろう。前玉にカビがあり、完全には 取れていないコムラー400oはよく健闘している。本来は69までのアンギュロンはほぼ4×5をカバーしている。 さすがにライズなどは無理だが、十分使える。暗いことと、構造的に無理が無いことなどがこの結果につながったのだろう。 ベラーとコムラーにムラがあるのは、タンク内で張り付きミスがあッたから。レンズの問題は無い。

 それぞれ定評のあるレンズだから、結果が悪ければ私が下手と言うこと。カメラを言い訳に出来ないから潔くて面白い。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

《アオリについて、雑な基本》



 一般的にはフロントスタンダード(リアも同じ)、形から鳥居と呼ぶ人もある。ここが機能の中枢

@チルトロック・チルトは枠を直接動かす。上下での距離ずれを修正する
Aライズロック
Bライズノブ・ライズは上下でのパース修正(上すぼまりを直すなど)
Cスイングロック・枠を直接動かす。画面左右のパースを修正する
Dフォーカシングノブ
Eフォーカスロック
Fスライドベースロック・使用レンズの焦点距離調整で基本位置をアバウトで出す
Gシフトノブ・Cの目盛りを参考に全体を横に動かすし画面左右のパースを修正する
Hシフトロック
Aフイルムバックや蛇腹の取り付けロック
Bマスト・ライズのためと枠としての役割



ライズ(リアをライズすればフォールになり、高さの強調になる)



ティルト



シフト



スイング



フイルムバッグ=レボルビングバック・ピントグラスとフイルムホルダー受け入れ部が回転して縦横を切り替えられる



フイルムバッグにシートフイルムホルダーを入れたところ。いろいろなホルダーのため、ピントグラスを持ち上げるレバーあり



基本ボードと広角レンズ用へこみボード。これらとフイルムバック部を前後に、蛇腹を内側にセットする

《フィールド撮影の操作》

 被写体決定・必要画角からレンズ決定・三脚据付・カメラを乗せておよその位置に向ける・ レンズ取り付け・レリーズ取り付け・シャッター開放・およそのフォーカス・位置修正・各種アオリ・完全フォーカス・ シャッター閉じる・露出を決定してセット・フイルムシース挿入・ヒキブタを抜く・ハレ切りしながらレリーズ・ ヒキブタを反転して入れる・・・ワンカット完了


☆これらを駆使すればレンズとフイルム面が平行しかないカメラとは異なり、ごく浅い被写界深度のままパンフォーカスに したり、建物のパースを自然に見せたり、というテクニカル撮影が可能になる。ただしレンズのイメージサークルの大きさ が限界であるのは言うまでも無い。広いイメージサークルと周辺画質や煽った時にも安定した画質が必須だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《ビューカメラ雑感》

☆ビューカメラはネジのお化けだ。フロントとリアのスタンダードには、ライズ・フォール、スイング、チルトのノブや ロックがあり、ベースには前進・後退、ベース全体の移動のノブとロックがある。およそでセットしたら、ファインダーは 冠布で暗くした中で見る。ピントもアオリも基本的には手探りだ。また、位置の調整には三脚の各部も操作しなければならない から、操作に慣れるだけでも大変だ。それに、常にニュートラルに戻さないと失敗を招く。

 、、、、、、、書いているだけで頭がスパゲティーになった(笑)



−−−ピントグラスの風景=合成画像−−−


 アオリを使いながらの構図の決定には、少し動かしてもピントを直さなければならない。それも一箇所ではなく画面 全体をきちんとチェックする必要がある。露出の決定には絞りの効果も考えねばならない。

 それ以前に何をどのように写すか考えねばならない。それも倒立逆像だから、初心者には出来上がりのイメージがなかなか 湧かない。精密なフォーカシングにルーペが必要で、全体のイメージは少し離れて見渡す・・・

重い機材を運び、数カット写すと心身ともに疲れる。ロールフイルムとは次元が違う。カメラオブスキュラの世界・・・・・

 だから面白い、楽しい!

Ocober 2013

トップに戻る