Franka SolidaV
フランカ・ソリダは35oタイプもあるが、基本的に66のドイツカメラだ。1930年代に初期型が作られ、1950年代までに
多くのモデルが派生した。これは戦後のV型のようだ。このカメラもゲルベさんからお借りした。
レンズはいろいろだったようだが、お借りしたモデルはラジオナーの1:2.9で80oのタイプ。66としては大口径に属する。
同じボディーでレンズやシャッターが違ったり、距離計や露出計の組み込みの有無などでグレード分けするのはかつての
カメラではごく普通のことだった。開放F値が0.1でも明るいと高級に感じるので、まさに0.1刻みでカタログ性能を競った
時代だったから、3.5と2.9では大きな違いだったのだろう。実際には、同時代なら暗い方の玉が価格も性能も上の事が
多いのだが。
ちょっとシャッターの動きが怪しいので分解してみた。
プロンターSがついている。1/250までで、倍数系列では無いが現代的なつくりだ。この上向きの状態だとシャッターが
音だけで開かない事がある。プロンター特有の故障か
二枚ともシャッターセット状態だが青い部分を良く見ると、上ではシャッター開閉部が外れている。いわゆる「オウムの
クチバシ」そのものがかかったりかからなかったりする。
引っ掛けテンションのためのバネが弱っているようだ。上向きだとフリクションできちんと入らない。しかし水平にすると
重力も手伝ってきちんとした位置になる。バネを交換するのがベストだが、この作業は老眼にはつらい。「最もやりたくない
作業」なのだ。シャッターセット時に注意すればこのまま使えるので、分解は避けた。
巻上げノブがフリーになっている。軸を分解したところ、矢印のバネ(ワンウエイクラッチ)が機能していない。このバネは
巻上げ方向だと緩める形になるので廻り、逆方向では巻き締めになるので軸を止める働きがある。このためには一端が軸受け
部に固定されていないとならない。120フイルム機ではほとんどがこの手のバネで逆回転を防止している。
この直径で使えるバネなどないので、ここはそのままにした。その代わりに巻上げテンションを与えるためにフイルム
リールの押さえバネを強くした。ウラブタのフイルムプレッシャープレートがしっかりしているから平面性の問題や
タケノコ巻上げにはならないだろう。なお、巻き上げないとシャッターが押せない。この二重露出防止デバイスは巻上げ
ノブを動かすとロックを解除する仕様。
わずかだが蛇腹の角にケバ立ちが見えるので、いつもの通りウレタンで補強した。ついでに張皮の手直しや
型番違いの物なので前板開閉ボタンが干渉するハーフケースの加工など行った
前玉回転式だが位置がずれていたので実像で修正した。大口径なのでピントの山がわかりやすい。
ピントグラスの画像が美しく、良い絵になると確信した
《試写》
プレストにて実施
近景・遠景ともに問題なし。中心部の先鋭度が高く、印画紙の縦横比でトリミングを前提とした時代にはこれで十分
だっだろう。11に絞り込めば周辺まで安心して使える。三枚目は5.6でピントを1.5メートルほどのところにとってみた。
バックのボケは煩くならないので、ポートレート的撮影にも問題ない。コントラストがあるので、標準的な焼きで使える。
フイルムの平面性には特に問題なかった
☆80o2.9で目測だと細かい撮影にはつらい。100のフイルムで絞りを開け気味で写すなどでは距離計が欲しい。後のタイプ
では距離計付があるのは当然だろう。おそらく1950年代ものだが戦前の普及期のボディーに高級レンズという組み合わせは、
丁寧な撮影には単独距離計の併用が前提になる。赤窓式巻上げはフイルム裏紙の厚みの違いに左右されない。このカメラで
連写はありえないから、コマ間隔がそろえやすくてむしろ使いやすい。
この個体だけだと思うが、シャッターボタンの動きが悪く、注油しても完全にはならなかった。と言っても実用できない
レベルではない。単に私がレリーズの滑らかさが気持ち良く写せる大前提だというこだわりがあるから。レリーズ付グリップ
では軽く切れるので特に支障は無かった。各部の材質や仕上げはきれいで、さすがドイツのもの、決して廉価版ではない。
☆今回もありがとうございます。実用性が高いですね>ゲルベさん
April 2014