ZEISS Semi Ikonta
セミ・イコンタ、ツァイスの代表的フォールディングカメラであるスーパーセミイコンタの距離計なしの廉価版だが、
質実剛健で現代フイルムにおいては距離計と画質の好みの違いしかない。
ナースマンさんの依頼で光漏れ対策のために預かった。
前回のオートセミミノルタと一緒にテストした。同じセミ判なのにずいぶん大きさが違う。もちろん重さも相当
異なる。方やダイキャストで距離計連動とセミオートマット、イコンタは板金で目測で赤窓だから当然か。
一般的にフォールディングカメラの光漏れの原因は3つある。第一に蛇腹の痛み、次がウラブタの合口廻り、そして
赤窓からの廻り込みだ。先ずはレンズバレルを外して全体状況を確認する。
残念ながら矢印の中玉が外れない。シャッターは一応動いている。低速は無いに等しいし中玉は前後から拭けるから
無理はしなかった。中玉部はヘリコイドのベースでもあり、パイプレンチなどで廻すと変形してヘリコイドが重くなる
ことさえある。預かり物で壊す可能性がある作業は慎む。
ウラブタ周りは見ても光漏れ箇所はわからない。考えられる所は全てモルトで押さえて、後ろからの光の回り込みが
起こらないように対策した。これを確実にしておけばその他の理由がはっきりとする。
蛇腹に複数の傷を発見、全て埋めた。ほとんどが角部分で、折切れなど経年による損傷だろう。もちろん
その後ウレタン塗料で強化した。
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☆光漏れチェックは部屋を暗くして裏を開けて覗き込み、外から懐中電灯で照らして行う。この時、懐中電灯の位置や
方向はできる限り多くの角度から当てる。大きな傷は簡単にわかるが、一定の条件の光以外は通さない場合が多い
ので位置を変えて何度も調べるのが大事だ。どんなに弱いものでも完全に塞がないといけない。弱い光漏れは
コントラストやピント感に大マイナスなのだ。
ウラブタ廻りの遮光の後、第一次テスト撮影でまだ光漏れがあった。この光がどこからという追求にはテスト撮影が
一番だ。私は下記のフイルムチェック方法で追及している。
@フイルムナンバーなどがある部分を見る。ここにカブリがあれば後、つまりウラブタ周りからから入っている。
クリアーでない場合、蝶番部・開閉部・赤窓廻り・溝部を疑う。しかし場所を特定するのは面倒なので、全ての可能
性がある場所を塞いでしまうのが良い。探すより手間と時間を省ける。
A @がクリアーなら蛇腹を疑う。撮影画面全体にぼんやりカブっているときは蛇腹の奥が怪しい。はっきりした形に
なっていれば前の方が怪しい
B全体が完全にカブっている時はレンズベース周りを疑う。蛇腹がレンズボードに取り付けられている辺が怪しい
C稀に軍艦部から漏れている時がある。この場合は筋状になる事が多い
《直し方》
*ごく小さくて引っかけなどでできた穴は、ウレタン塗料でチョンチョンとスポットし、その後、引っ掛けの逆向きに
塗りこめる
*折切れで角が毛羽立っている時は見えている所だけでなく、角全てが危ない。先ずはウレタンを全てに薄く塗って
材質を強化し、その後にスポットで各個撃破する
*スパッと折切れている場合、シリコン系の黒接着剤で止めるが、ほとんどの角が切れる候補生だ。ベストな
対応は新しい皮で作り直すことだ。姑息に止めても長持ちせず信頼性が出ない。覚悟を決めて作り直すことを
お勧めする。特に、畳んだときの余裕がない場合は作り直ししかない
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レンズはノバー6.3がついている。テッサーよりちょっと太めな描写で、暗い方の諧調が豊富だ。個人的には
テッサーより好きなレンズだ。名前が読みにくいので少し色を指してわかりやすくしてみた。
《試写》
最初のテストはTX400、掲載用はプレストにて実施した
光漏れは止まった。ノバーの渋い写りが復活した。
☆小さく軽く使いやすい。すっきりかつしっとりしたトーンが出る。今更言うまでもないが良いカメラである。
暗いレンズだからバックボケを狙うのはちょっときついが、淡々と記録する中にきらっとしたトーンが出る
カットが散在する。実用と使う楽しみが両立したカメラである。
☆久しぶりにノバーを堪能しました。ありがとうございます>ナースマンさん
June 2014