MAMIYA Super 16
戦後しばらくの間、16oのミニカメラが流行った。性能そのものより、ごく小型でいろいろ自由な形が、進駐軍の
土産用などでもてはやされたからかもしれない。その中でマミヤ16は良く売れたようだ。マミヤは手堅い16o
カメラをシリーズで出している。Super Automatic Delux などちょっとオーバーなネーミングだがそれも
時代だ。
これは新聞記者(地方通信部)だった義父の遺品で、会社として用意していたものらしい。本来の取材用はペンタックス
などの一眼レフで、16ミリはあくまでバックアップ用途だろうが、それでも定期的に整備されていたようだ。今も快調
に動くから掃除とメカをのぞいてみる。
マミヤ16Superは初期型にシンクロターミナルが増設された程度、ほぼ基本の形なのでマガジンを二個使う。
一つは金属製、もう一つがプラスチック製だった。遮光紙はそろそろ痛んでいるだろうから35ミリ用パトローネ
のものを剥がしてこちらに流用した。厚みや縦のサイズなどぴったりで、過去も同様だったのではないかと
想像した。まあフイルムマガジンの遮光はどれも似たような起毛シートによるものではあるが。
フイルムはこのように装填する。後期型では左右が連結したマガジンが使われたようだが、120フイルムから
127を切り出した後の余りをつめるには、マガジンの再使用が前提のこの方法の方がありがたい。巻上げさえ
できれば暗室装填・タンク巻き込みなら裸のままでも可能、正規のサイズの軸さえあれば良い。映画用の16oフイルム
から切り出せばフイルムは簡単にできたのだから、発売当時は便利なサブカメラだったのだろう。
上のカバーを外すと実にシンプルな巻上げ・チャージシステムが露出する。カウンター兼用の巻上げギアは
半回転強で一齣進むので、カウンターの数字はまるで乱数表のようだ。このカウンターには0リセットが
ついていないようだ。出た目からカウントするしか無いが、大体20枚と思えばそれ程不便ではない。
テストでは25枚程度でケース一杯になる。軸のみのストリップフイルムだと40カットはいけると思うが、擦り傷
などは保障できないし、バックのテンションが無いと平面性担保はちょっと怪しい。
ギアを外すと内部構造がわかる。巻上げギアにはピンが出ていて、これがシャッターチャージレバーを押して
チャージする。このカバーを外せばシャッターなどにアクセスできるが、今回は壊れていないので触れ
無かった。(細かい機構は見えにくいから、必要が無ければ触れないことにしている)
ちゃんと動くので開かないつもりだったが、シッャターがテスト撮影でちょっと遅いと感じたので開いて
確認した。基本のメカは全てここにある。
@シャッター駆動スプリング。レリーズされるとAのカムが回転し、Aのシャッター羽根から出ているレバーを
Bが叩いて開く。
Cは速度を決めるカム。ここがAに待ったをかけて低速を得る。この写真では1/200秒の最高速なので、何も
ブレーキをかけない位置にある。Dは意外に本格的なスローガバナー
シャッターセット状態。軽い清掃と給油でより好調になった。これで組み立てるのだが、カバーをかけるには
各矢印の部分をきちんと組まないと作動しなくなる。黄色はピントで、現在はオーバーインフ状態。青は絞りで左
に開く。赤はシャッター速度で、この位置で1/200秒を指している。
絞り・シャッター速度・ピント調整部は全てスプリングで一方向に引かれている。おかげで組立時に嵌め合わせ
がちゃんとしているか気にする必要が無い。組みやすくて良い構造だ。
意外なほどしっかりした構造で、他に見た事が無い構成だが、初めてでも作動が簡単に理解できる。横に使うと
平面が広く、チャージ・レリーズ・調速の部品に十分の大きさを確保できる。鏡筒に組み込むよりずっと楽だ。
超小型機種だが、どこかゆったりした古典大判的構成と感じる。耐久力は高いだろう。
ただし、ピントレバーは完全に奥に入ってしまい、そのまま組むとオーバーインフで調節不能になってしまう。
こういう時は糸で引きながら組む。この部分唯一の注意点。
前はレンズカバー兼ファインダーフレーム兼シャッターロックと、フィルター部だけ。
レンズカバーとシャッターロックを兼ねたフレームファインダー。パララックス調整マークがある。
フィルターポケットは開閉できて、このようにして交換できる。ふたを閉め忘れてもファインダーを畳むと
同時に閉められる。原始的だが巧妙な構造。
まさに等倍ファインダーだから見やすいかどうかはユーザーの視力次第。
反対側にはウラブタ開閉用のポッチあり。
後ろはアイピースのみ。
☆フイルム現像にはLPLなどに専用リールがあるが、先ず手に入らない。500ミリのペットボトルの中間部で簡易
リールを切り出した。
斜めに巻きつけ、最初と最後をプラクリップで留めるだけ。これで50p程度のフイルムなら重なりなく
簡単に巻きつけられる。(膜面を外にしないと現像ムラになる)クリップで水平にならないが、理由がある。タンク内
で水平になるとフイルム面がタンクに触れて傷になるので、斜めにして回避している。
一本目の現像でちゃんと使えると確認できた。
《試写》
この日のために暗箱に貯めておいた(笑)フイルム、おそらくプレストにて
この大きさなら一応見られる
近距離だと意外なほど出る
1.5フィートくらい。ピントをきちんと合わして固定が良ければ、書いてあることはわかる
薄暗くて動くものは被写体が何かわかる程度
(以下はAPX100にて)
ほとんど最高速、1/200秒だがちょっと露出オーバーだった。わずかの手ブレも面積が狭く拡大率が高いので
気を使う撮影だがそこそこ出た。画質は表示が小さめならぎりぎり使えるレベル。1/200秒で絞りF=
16が最高速だから、100か200のフイルムが望ましいが、400でもネガカラーかモノクロなら問題なく使える。
☆16oカメラが実用と言えるかどうか、サービスプリントならぎりぎり使えるレベルか。フイルムの正規の供給が
ほぼ止まってしまったのだから、もはや使命は終わったとも言えるか。まあ使う人しだいだろう。
しかし、あえてこれから手に入れる人は使って欲しい。飾りだけではカメラが可哀相だ。工夫すれば今も使える機械
に対して、飾りにするのは可哀相だし失礼だから。
これでしばらくテスト報告はお休みします。仕事が忙しくなる月なのと、なによりネタになるカメラがあり
ませんから。
July 2014