FUJICOLOR MC-007
富士のMC-007はOEM機種で、元はアクメルMD、浅沼商会のミノックス判だ。
これを手に入れたのはマミヤプレスの研究家で
レストアのジャンク大帝でもあるMATIAさんの記事が火付け役になった。
ミノックスタイプで距離調整があり、露出は5.6固定ながらシャッター可変のEEという機能に引かれた。
サイズや重さは実用カメラの中で最小で、文献を盗み撮りできるスパイカメラみたいな存在が面白い。
いかにも精密感があるミノックスは魅力的だが、本気で写すためではないから、遊ぶには高すぎる。レンズメーカー
でもある富士がOEMで妥協するはずが無く、性能に一定の評価があったから製品ラインの充実のために発注したの
だろう。とすれば一応使えるはずと期待したのだ。本家ミノックスもこの性能を認めたか、ディチューン(シャッター
単速)タイプをOEMしている。
未使用新品を捨て値で手に入れた。フイルムの供給が途絶えがちで、現像も含めて隘路が多いから人気など
あるはずも無く、せっかくの精密機械がジャンク価格とは悲しい。
幅が約80o、奥行きと厚みがそれぞれ35oと20o、重さは70g程度しかない。中判カメラのフィルターより
小さく軽い。外装はプラスチックだから高級感は無く、感触はほとんど玩具だ。
レンズは3.5だが5.6に固定されている。回析を考えれば絞りはあっても有効性に乏しいだろう。ただし、400の
フイルムで明るいとオーバーになるのはいただけない仕様だ。NDフィルターを内部に装備して欲しいものだ。
カメラ名のフジカラーはOEMなので伝統のフジカとはしなかったと推測。MCはミニチュアカメラ、007は
ジェームズボンド、つまりスパイ用に使えるという洒落だろう。008が専用フラッシュだという点でもシリーズ化
など最初から考えていないネーミングだし。
巻上げとシャッターボタンと距離合わせ、シンプルな作り。
距離指標の印刷は極めて取れやすいと予習していたので、メンディングテープで保護した。
フイルムはミノックス共用のカートリッジで、シャランのものがわずかに流通している。
電池は珍しいリチウムのCR1/3が二個使われている。既に廃番だがLR44を4個でも使えるので何とかなる。
シャラン用のフイルムを手に入れた。コダックのものらしい。カートリッジは16o用と似ているがずっと小さく薄く
弱い。つなぎ部は非常に薄いから扱いが大変だ。自作の巻き込みには細心の注意が必要。
35oから並列に二本切り出すツールを作ってみた。切り口が曲がるのでまだ使えない。フイルムが無ければただの
ゴミなので改良中。
改良後。わかりにくいがフイルム出口の下にローラー、刃の後に安定板を増設した。これでフイルムの横への動きが
規制されて、きちんと切り出せるはず。
テスト結果はちゃんと使えるレベルになった。切り出してマガジンに詰め、動きも大丈夫と確認できた。
先達のカメラに組み込む方式をなぜ採用しなかったかというと、切り出すときのトルクが大きいからだ。
普通の巻き戻しレバーだと異常に重いし、とても強度が足らない。ペンチでくわえて廻したのは当然だろう。
その点、こちらは引き出すだけなのでそれ程重くない。ダークバッグ内だと20枚程度にしか引き出せないが、
巻き込みの面倒も考えれば20枚確実なら十分だ。もちろん指紋に注意すればもっと長くするのは難しくは無い。
《試写》
おそらくコダックの400ネガカラーにて
明るい戸外はオーバーになるがピントには問題なく、低速での手ブレも少なくて実用範囲に入った。
☆9.5×11oと言うミノックスのフォーマットは「何が写っているか判別できる」というレベルだと思い込んでいたが、
それよりもっと上で、「小さめなポジなら違和感無く実用になる」というのを認識した。もちろん、製版カメラなどの
高解像度とフイルムのポテンシャルを考えれば不思議では無いが、野外の距離も明るさも変化し、カメラの完全固定が
無理な条件でこの結果は立派なものだ。ミノックス判で秘密書類を盗み写しても読めるのかと思っていたが、これなら
使えるとわかった。本家ミノックスが大量に諜報機関に使われたのは納得だ。
楽しめますね。御紹介(沼への御招待)ありがとうございました>MATIA様
July 2014