MINOLTA HI-MATIC 7

  1962年に発表されたMINOLTA・HI-MATICは、日本のカメラの中で最初にNASAに選ばれて宇宙を飛んだ。故障が許 されず、確実に写り苛酷な環境に耐えねばならない宇宙カメラである。ミノルタと日本のカメラのステータスを大きく 高めた歴史的名機だ。



 HI-MATIC7は翌1963年、昭和38年発表で、最初の改良型である。焦点距離は変わらないがレンズが明るくなった。受光素子は セレンからCdsになり、フルマニュアルつきのプログラムシャッターを備える。定点合わせ露出計連動カメラがEE化され、 次の電子シャッター式のEやFになるまでの基本機種である。露出計の対応照度が広がり、EV5.7まで広がったので、 一般的な撮影はEE、夜景はフルマニュアルで対応できるから、ほとんどの状況で自由に撮影できる。

『基本スペック』  ROKKOR-PF 1:1.8 f=45mm (SEIKOSHA-LA B-1/4〜1/500、F=1.8〜22)

☆私が尊敬する「Range Finder」ビュッカーさんのサイト にはこれらの系譜とインプレッションが掲載されているので参考にされたい。

 シャッターは前板縦押しから一般的な位置に変わり、デザインが一新された。当時のファミリーカメラの一典型であり、 コニカC35などより一回り大きい。その後に小改良されたハイマチック7S、9、11などがあるが、外観も性能も大差は無い。



 当機はカラー現像の大家、爺さん様からの拝領セットに入っていた。 特に壊れてはいないがファインダーに汚れがあるので開く。軍艦部の作りはミノルタらしく部品点数が少なくしっかり できている。巻き上げノブのセンター、巻き戻し軸の根元、それに外側のネジ二本であっさり開く。 最もメンテナンスしやすい一つだ。



 二つ並んだ半固定抵抗は露出計の高輝度と低輝度の調整用で、Cds式の標準的構造。Cdsの受光範囲はレンズにより 規制されていて、意外なほど狭く、TTLの中央部重点測光に近い感度分布だ。上下分割測光を開発したメーカーらしい。 露出計は小型でユニット化されている。



 距離計は反射鏡が回転するタイプで、フレームの左右連動はこの反射鏡が受け持ち、上下のみマスクをリンクで動かす 方式だ。合理的な構成でわかりやすくパララックス矯正が確実、清掃は容易だ。

 ミノルタの作りは、それぞれが作られた時代の同格カメラと比較して考えると非常に上位だ。レンズは好みの要素が 大きいが、ロッコールのピントの良さ、どぎつく無い色調、穏やかで広いトーンは間違いなく一流だ。内部的には スペックは平均的だが部品の質が良く、メンテナンスしていれば確実に動作するのが好もしい。作られてから50年近く経つ 今、手に入る中古機の外観で塗装やメッキが痛んだものをほとんど見ない。後にライカと提携できたのはそれらの品質を ライツ社が認めたというのは想像に難くないところだ。

 シャッターの感触は後のEやFのぐにゃっとした曖昧なものではない。針押さえ式露出機構なのでストロークが長く 重いが、はっきりとした節度があり、このシャッタータイプとしては使いやすい。



 コンパクトではないが、手に余るほど大きくはない。手ブレするほど軽くはないが(760g)、ダンベル代わりになる程 でもない。レンズの汚れは少なく、シャッターが快調だったので前玉のみ清掃した。



 距離計基線長は30o強で、45o1.8のロッコールに不足は無い。アイレットが非常にがっちりしている



 いかにもすっきりしている。このような形を「クラカメっぽい形」として模倣するデジカメさえ見られる



 まだホットシューは装備されていない



 巻上げストロークは大きいが非常に軽く、ラチェット式分割巻上げができる



 フイルムの装填はフタが飛び出していて、その分パトローネの下が開くので楽だ

《試写》

 モノクロはプレスト、ネガカラーはフジ業務用400にて。撮影はEEにて実施(逆光補正無し)

















切れのあるすっきりした描写、周辺まできちんと出るピント、ロッコールらしさがしっかり入っている。逆光では 多少の反射はあるが、自動露光で使えるレベル。

☆後のHI-MATICEやFに人気があるが、個人的にはマニュアル露出ができず、全てカメラの推奨値で処理されるそれら より、必要なら完全マニュアル可能でレンズは十分明るく性能差は無いのでのHI-MATIC7が好みだ。もちろん大きさでは EやFに負けるが、大きい故に撮影時の安定度に勝る。電子シャッターは経年劣化で整備不能になりやすい。機械式は 適切なメンテナンスで確実に電池無しでも動作する。その点でも7が良い。


☆淡々と確実に写す優れた道具ですね>爺さん様


December 2014


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