小西六 手持小型航空写真機


 久しぶりのエアロカメラをSコレクションからの依頼で整備とテスト撮影をした。







 アルミケースに入った一式、小西六が昭和37年に作ったとプレートに書かれている。レンズは非交換式で66 だから、軍用の極小型航空写真機、いわゆる99型として小西六、日本光学、東京光学で作られたものとほぼ同一の 機種だろう。バリエーションはあるが、基本としては20年ほど前のものと変わらない構造だ。



 3s強で両手で支える。照準するのと引き金以外に操作は無い。従って、手持ち撮影は確かに可能だが、 寒い高空で激しい風圧が掛かったら大変だろう。

 



 基本形通り、両手で支え、透視式の照準器兼ファインダーで獲物を探し、右手のトリガー(黄色)で発射、いや撮影する。 照準は手前に黄色い頭の照門(赤)に相当する指標が立ち上がり、凹レンズ面の十字を照星として中心を見通す。 第一次大戦の戦闘機の光学照準と似た構造だ。もちろん無限遠専門だからパララックスの補正などは無い。



 底部の大型ノブでスプリングを巻く。非常に固くて最初はこれで良いのかと心配になった。120フイルムを巻き上げ、 リンクでレンズシャッターをチャージするのだからこの重さが必要なのだろう。



 背中にはメモを書けるボードが付いている。面白いのは矢印の小さなポッチで、巻上げ時に供給側のリールの回転を ポッチが動いて伝える。確実に巻き上げられているかがこれでわかり、空振りを避けられる。



 フイルムは全てフタ側に取り付けられる。このフタはカートリッジ兼用で、複数をセットして用意すれば連写が 可能になる。装着は軽く実用性が高い構造だ。アパーチャー下部(画面上部)にはフイルムナンバーの写しこみ装置が 入っている(回転式でフイルムナンバーと同じ数字を写しこむ)。フイルム面の左右と上には大きい指標が付けられている。 これらはファインダーの十字線と一致している。フイルムをセットして5ー6枚空写しすると一枚目になるので、 カウンターを1にセットする。



 ヘキサノン135o3.5、美しいレンズだ。シャッターは1/50-100-200-400秒、F3.5-22で用途的に必要ではないから 低速は無い。全て明確なクリックで上から簡単にわかる。撮影時に操作するのはこれだけだから、フイルムをしっかり 装填すればカメラ側からの失敗はほぼ無い。



 キャリングケースに同梱されていたもの。掃除用のシリコンクロスとハケ以外は揃っている。安全紐の使い方は 良くわからなかった。モノクロ用のコントラストフィルターからパンクロ専用に設定されているのがわかる。

《試写》

 無限固定なので近距離は期待できない。プレストにて1/200秒固定で写し、追加でTMX100を併用した。





以下はTMY100





 一枚目は16まで絞れたのでそこそこ近距離も使えている。二枚目で靄が掛かった富士山は目視よりくっきり出ている。 三、四枚目は絞り8の結果。スキャン後は輝度とコントラストの調整とサイズ変更のみで、スキャン時および事後に アンシャープマスクは一切使っていない。5枚目ではスキャンしたままだと翼の文字や数字が読める。

☆極小型と言ってもこの大きさと重さで135o固定焦点の66、つまりちょっと望遠の航空カメラを地上で使って 意味があるのかと思っていたが、意外なほどしっかり写った。過焦点距離を考慮すると絞られれば20メートルくらいから 絵になる。無限では真価を発揮する。スプリングモーターは実用的で、音はうるさいが軽快だ。巻上げ角度が固定なので コマ間隔が次第に広がり、きちんと使えるのは11枚というあたりは設計の古さか。

 軍用で育っただけに、機能と結果のみを求める光学兵器だ。信頼性と安定度は抜群で、これでピントが合わせられたら 面白いだろう。目測でも良いから、など夢想させる立派な道具だ。


 さすが軍用品、素晴しい道具ですね>Sさん


May 2015


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