C. P. Gorz TENAX



 ゲルツのテナックスはアトム判の乾板カメラで、]型のタスキで立ち上がるフォールディングカメラだ。小さいながら ダゴール75o6.8を積む。煙草並みの大きさだから、乾板撮影ならまさにベストのポケットにちょっとという撮影が楽しめる。 ゲルツは報道に良く使われたアンシュツ・アンゴーやボックステンゴールなどのユニークかつ高性能のカメラと ダゴール、ドグマーなどの銘玉を生み出し、後にツアイス・イコンに統一されたドイツを代表するメーカーの一つだ。 テナックスシリーズは各種あるが、このアンゴーのミニサイズのようなタイプが有名だ。



 現代で使うにはフイルムをどうするかと言う大きなネックがある。本来的には原始的な127ロールフイルムのホルダーを 使える。しかし、この時代の旧式ホルダーには統一規格が存在しない。微妙に幅や厚みが異なり、合うものを見つける のは極めて難しい。それに、127のホルダーは数がある物ではないから先ず手に入らない。割り切って現代の645ホルダーを 使うことにした。





 手持ちのマミヤ645スーパーのホルダーを使うことにしたが、フランジバックが5oほど合わない。ホルダーの枠を外し、 本体側の乾板ホルダー部を切り落として3mm稼いだ。



 この個体はSコレクションに転がっていて、後玉に傷などいろいろ損傷しているが、遊ぶならどうぞと頂いたもの。 後玉の傷は黒のサインペンで塗った。610先輩の教えだが、乱反射を防ぐから有効だ。わずかにレンズ面積を 減らすことになるが、実際にはほとんど悪影響が無い。中央を反射鏡で邪魔している反射望遠レンズを考えれば わかることだが、レンズの結像光路を見ればわかる。ある一点に集まる光は、原理的にレンズ全ての面を通過して 一点に達する。レンズ面に傷があると屈折方向が変わってノイズ≒乱反射(屈折)になる。この時に光を通さない部分が あれば光の全体量に影響するだけで特定点の異常(ノイズ)にはならないのだ。外から見えない後玉の傷は塗りつぶすのが 吉ということ。

 頂いたのがずいぶん以前で、その時にシャッターや絞りの整備などを実施しているが、使うことはおそらく無いだろう と思っていたので写真記録は無い。前板の中にオーソドックスなシステムがあり、ギアで絞りやシャッター調整を 外に出している。これらの取り付け位置に注意すれば、整備自体はそれ程難しい部類ではない。







 ボンドウルトラ多用途SU(黒)と毛糸で遮光と接着。ピントグラスを使って無限を出す。2o程度レンズボードを 交代させる必要があるので、タスキの動きを制限して仮固定した。











 この状態でテストしたが、蛇腹の角切れがひどく、補修は無理なので暗室用遮光幕を蛇腹周りに巻いてテスト撮影に 望むことにした。蛇腹の痛みは補修より作り直し、とにかく撮影したいなら遮光幕を巻くのが手間要らず。



《試写》

 T-MX100にてテスト。一枚目は光漏れで失敗した中から一部補修したもの。



 以下はリベンジから









 暗いレンズなのでシャッターは1/100程度に固定し、1枚目は絞り開放、その他は11程度で撮影。ただし、ファインダーは 後ろが大きく飛び出すのでほとんど使えない。対物レンズのみ起こして水平などを見、撮影範囲はカンで補った。 本格的に使うにはスプリングカメラのファインダー流用などが必要だ。

☆ピント修正は大体良かった。目測のヤード表記だから無限以外は適当そのもの。6.8レンズなので開放でもそれ程 深度が浅くならないからヤードをほぼメートルとして使えた。レンズの傷補修の影響は明るい遠景にちょっと 感じられるが、ダゴールのしっとりとした描写はこのレンズでもはっきり感じられる。1920年代のカメラがこれだけ 使えれば文句は無い。シャッターレバーは使いにくい位置なので、レリーズつきグリップ併用が望ましい。今回は 645の日協賛のやっつけ仕事だから指標の見え難さなどを直していないが、実用するならこれらは当然直すべし。
 このホルダーは本来電動駆動で、巻上げ中に手が引っかかってもトラブルにならないためか、ワンウエイクラッチ か゜入っている。手巻きではこのクラッチのロックが弱く、一枚目を出す手前で空回りしてしまう。いろいろ調べたが 組んだ後では分解できないので、ノブに穴を開け、下の駆動ギアにピンを入れて強制ロックした。それでも巻上げ 最後のところでトルクに勝てず空回りした。そんなわけで、現像時はカメラごとダークバッグに入れて対処した。 応急手段はクラカメを実際に使う時に必須のスキルかもしれない。


 面白いです、使えますね>Sさん


June 2015


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