MAMIYA35 Super Delux



 フォレスターさんからシリーズ第三弾はF1.5のレンズをつけた1960年代の巨砲、マミヤ35・スーパーデラックスである。

 これは重レストア対象で、ざっと、シャッター不調・絞り渋りと羽根外れ・後群にカビ・ファインダー周り汚れ・距離計ズレ など、古い距離計カメラにありそうな故障のオンパレード、何はともあれ前板を外す。



 後玉を外すには後からはカバーがあって無理だ。前板から外すと露出計の配線が2本(電池・絞り検出抵抗・シャッター 検出抵抗・Cds・メーター・電池とシリーズ回路になっている)だけなので、非常にわかりやすい。



 前群・後群レンズを外す。それぞれ組み立て式なので全ての面が清掃できた。幸いにも致命的なカビや傷は無い。



 見事に油が乗っている。絞りの羽根外れは、シャッターがギア駆動は簡単に外れるから良いのだが、分解するとすべり 抵抗とシューなどが面倒なので、多めにジッポーオイルをつけて、手探りで定位置を探した。外れていたのは一枚だけなので 何とかピンが所定位置になり、分解せずに復元できた。この方法は構造がわかっていないとピンを飛ばしたり羽根を曲げて 致命的な故障の元なので、一般的には分解が必要だ。

 シャッター羽根にも油が廻っているが、これも清掃で大分軽くなった。ガバナーは特に問題が無い。分解していないから 羽が粘る事はまだありうる。その時は簡単に前玉が外れるので、下記の方法で対処すれば良い。



 シャッター羽根を簡易に清掃する時、良くこの方法を使う。途中まで締まった状態は張り付く部分が良く見える。この状態で 裏表から清掃すると効果的だ。シャッターをバルブにしてコットンチップを挟むだけなので、羽を痛める事が少ない。

 私は「動けばカメラ」と思っているので、よほど興味を惹かれない限り不要な分解はしない。もちろん必要なら最後まで 分解するが、それには詳しい作動解析と手順の記録と時間が掛かる。壊す確率も上がる。危うきには近寄らずだ。



 距離計はとんでもなくずれている。普通の使い方では、ずれは生じてもとんでもなく外れる事は無い。何らかの故障が 考えられる。



 理由判明。ハーフミラーの接着が外れていたのだ。修復するにはハーフミラーをおよその位置に固定し、微調整ネジで 上下と左右を併せればよい。

 しかし、このカメラの距離計は微調整ネジが極めて固く、調整不能だ。やむなくミラー位置で上下のズレには妥協し、 左右のみおよそで合わせた。目測併用で何とかなるからこれで良しとした。



 これでレストア完了とし、テスト撮影したら大歩危だ・・・

 いくらなんでもこれは無い。考えられるのは・・・後玉を裏返しに入れてしまったこと。曲率が裏表で似ているので、 うっかり逆さにしてしまったのが考えられる。改めて分解し、曲率が大きい方を後ろにして入れ直した。













 電池ボックスのフタが欠損していたので、適当なネジを貼り付けて目立たないようにしてある。露出計は動作して いるが、定点式かつファインダー内に表示がないので参考程度にしか使えない。テストはカン撮影とした。

《試写》

 いつも通りプレストにて。SPDの20℃で普通現像している。









 一枚目は絞り開放で、ピントは左端の価格表示に合わせた。最後のカットはテーブルに固定し、絞り開放距離目測による。 二、三枚目の遠景は梅雨時の湿り気で遠いものはうっすら煙っているのだが、それらもきちんと再現された。暗い室内の 近距離から明るい遠距離までしっかり再現している。ピント、コントラストは申し分ない。

☆台頭する一眼レフに対抗し、大口径レンズと露出計などで付加価値を高めた時代の代表的な機種だ。スーパー(万能) デラックス(豪華)というネーミングは概ね看板に偽りなしだ。

 レンズとしての評価は高いが、それでは使いたくなるかというとなかなか難しい。理由は何より持ち難く大きく 重いことだ。前側の角が立ったデザインの弊害で、ずらさないと指がシャッターボタンに届かない。私にとってスムーズな 撮影の必須条件に欠けている。重さはレンズのためなので仕方ないが、その他は及第点なだけに、人間工学的には構えにくい というのは残念だ。今の技術で小型化し、このレンズをC35程度のボディーにつけられたら、などと夢想した。


☆さすがセコール、ですね>フォレスターさん


July 2015


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