小西六 PEARL V (再)



 二台のパールV、Kzさんの愛機だが一台は落としてもう一台も距離計不調でドック入りしてきた。



 どちらも外観は非常にきれいだ

 

 距離計がおかしい方を開く



 距離計は一見原始的だがしっかりした構造だ。1が距離計窓からの光を90度反射させるフルミラー、2はレンズボードの リンクからつながる駆動部、3は画像合成用のハーフミラー、4が前板の移動量を伝えるリンク。上下の調整は1のネジで 一般の左右調整は前板のネジで行う。



 どの程度ずれているのか確認のためのセット。ピントグラスにレリーズ、ルーペに固定用のテープなど





 先ずは3メートルでピントグラスと距離計のズレを確認する。三脚に乗せてバルブでシャッターを開いて、ターゲットにピント グラスで合わせる。その後、前板根元のネジで距離計を合わせる。普通はこれで一件落着だが、この後に無限遠を確認すると ピントグラスでは良いのだが距離計では画像が一致しない。途中で距離計の動きが止まってしまうのだ。これは距離計の指標的 には正しいが、画像が無限遠まで動かない≒可動範囲が足らないことを示す。距離計の可動範囲に無限が入っていない。

 そこで、前板のネジを中間程度にして、3のハーフミラーでほぼ無限が出るようにする。こう書くと簡単だが、これは極めて 厄介な作業だ。ハーフミラーはネジを緩めれば簡単に動くが、これがなかなか合わない。しかもロックすると簡単にずれる。 ねじをきついくらいに締め、何度も行ったり来たりで追い込み、最後は前板のネジで微調整した。

 一号完成。

−−−−−−−−−−−−二台目を試写チェック−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 こちらは重症で、距離計で無限が出ているのだが現実にはどこにもピントが来ていない。全てが大幅後ピンで根本的に合って いない。これは断じてヘキサノンの描写ではない



 一号と比較して確認。正常な方より1.2o程度前板が後退している。ぶつけたのか落としたか。幸い、後退した位置ながら 前板は比較的しっかりボディーと平行に固定される。つまり後退しているだけと言える。

 しかし、これだけ下がっていると普通のシムでの調整は無理だ。セットリングのストロークと畳む時の干渉の問題があるが、 レンズバレルを大幅に前進させねばならない。




 0.3ミリのレジンペーパーを4枚重ねにして圧迫接着し、シム代用にした。レジンペーパーは紙にプラスチックを含浸させた ものだが、硬くしっかりしているので耐久力に不安は無い。リング状は無理なので、小片を120度の位置三点に接着して固定する。 ピントグラスで確認すると、無限位置になった。この状態でも開閉に問題は生じない。



 本体で無限が出たので矢印のハーフミラーと前板のネジで最終調整、蛇腹の手入れをしてテスト撮影に進んだ









《試写》

 二台を水平比較するためにNEOPAN SS一本を二台で使ってみた

《一号》








《二号》







 条件をそろえるため、三脚に乗せて同じ条件で写してみた。全て絞り開放の結果だ。どちらも自販機は最接近で写した。 距離計もレンズもきちんと動作している。雨の中、非常に暗くコントラストが無い被写体だから、これだけ写れば 問題ない。

☆このカメラについて、距離計が原始的などと過去に書いているが前言を撤回する。各部はきちんとかつしっかり作られていて、 普通の調整は前板で、大きな狂いが出た時は内部で調整できる。曖昧な動きは無く、前板のネジで調整すれば問題ない。

 今更言うまでもないが、ヘキサノンは優秀でシステムとしてもしっかりしている。パールは良く出来たフォールディング カメラだ。使い易さでは同等の機能を持つスーパーセミイコンタに勝る。テッサーかヘキサノンかは単に好みの問題だ。 長く珍重されて来たのは先輩方がそこを見抜いたからだろう。


☆祝・愛機復活>Kzさん


December 2015


トップに戻る