MAMIYAPRESS 250mm8.0



 今回はマミヤプレスの報告ではなく、プレス用の望遠レンズ、250oF8.0が主役である。普通は記事にしないレンズ整備だが、 考えるところがあって発表する。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ー−

素人研磨の怖さは「何が正しいかわからない」に本質がある。リューターの先につけた布パッドで磨いたら、一見はピカピカ になったが、画面がゆらゆらになってしまったなどが典型的失敗例だ。本来は曲面に合わせてピッチ(アスファルトに近い)で 研磨アタッチメントを作り、レンズとアタッチメントの軸をずらして回転数を制御して、レンズが回る時に非同期させて 新鮮な研磨液を流し続ける。もちろん正しい曲面の雌型があり、それと重ねてニュートンリング(干渉縞)で仕上がりを確認して 行っていた。

 今ではほとんどのレンズは鋳込みになり、磨く系は特殊なものだけになっている。メーカーは再研磨に応じず、ユニット交換で 処理するのはそのような製造上の事情がある。

 天体望遠鏡の自作の時代があった。ジグと軸をずらしながら何日もかけて行う作業で、それらは「**鏡」など固有名詞で 語られる名人芸を必要とした。レンズの曇り取り程度ならともかく、レンズ本体まで磨きこむとはそういう作業に近い。 我々素人が手を出せるのは、壊れてもかまわないもの限定のお遊び、上手く行ったら奇跡と心得るべし。もちろん個人が研磨した レンズでそのレンズを評価するなど持っての外なのは言うまでもない。

-−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 これが整備依頼のレンズの前玉、一枚目の状況。まさに真っ白で向こうが見えない。今までこれに匹敵するのはマミヤRBの 50oだが、今見返すとこの250oはそれ以上、最低最悪、送りつけた三色氏の「ひどいです」は掛け値なしだった・笑



 このRBのもので磨き直しに数日掛かったから、このレンズには一週間を覚悟して研磨に入った。

 今回の報告でも研磨の詳細は一切発表しない。この作業はレンズを決定的に壊す可能性がある。見てわかるほどやさしくない。 平面は平面に、曲面は正確に曲面に磨くのが絶対条件だ。曲面にはその面に合うジグの自作が必須である。生兵法は全く通用しない。 愚直な手抜き無しの方法しかないから安易に真似してレンズを再起不能にさせたくないからだ。



 途中経過、ここまでに数千回転した結果。大きな荒れは取れた。まだ曇りが多いと見るか、ずいぶん直ったとみるか・・・



 そこそこきれいになったつもりだが、仮組みするとすっきりしない。理由は二枚目のレンズの前面も後面にも荒れがあるから。 おまけに一枚目のレンズの前面のコーティングも傷んでいて曇っている。都合四面に研磨が必要な状態だった。何の呪いかと ブツブツいいながらひたすら磨いては仮組みして様子を見る。



 前玉がほぼ均一になった。コーティングは既に前後とも全く無い。二枚目もほぼ同様になった



 ルーペ代わりに見ると少しコントラストは落ちるがチャンと見える。ここで一先ず研磨を止めた



 組み上がり。この間にももう少しと何度か磨いた。少なくとも絞りが見えるし何とかなる、、、かも知れない



 先日整備したプレス・スーパー23にセット。このレンズにはカムがなくて距離計に連動しないからピントグラスも持って試写へ

《試写》

 アクロスにて実施。一、二枚目はピントグラスで確認、以後は無限設定(4枚目は目測設定)全てフード無し。





 同じ位置で5m弱と無限遠。ピントのズレははなさそうだ。









 5の中心部の切り出し

 スキャン後の処理は軽いアンシャープマスクだけだがピント、コントラストに問題なし。完全ならこれ以上の画質が期待できる。 暗いレンズというハンデは別として立派なものだ。

☆このレンズは望遠250oだが距離計には連動しない。ピントグラスで運用が正しい使い方のようだ。開放8.0は望遠だからスナップでは 使いにくい。ほとんど開放で使うことになるから、目測は20メートルと30メートルではっきり違うのだ。およそであわせて使うなど ありえない。その代わりに開放でも全く破綻を感じない。四面を磨いたにもかかわらずきちんとピントが来るのだ。

 しかし、これをピントグラスで運用する被写体はなんだろうか、マミヤプレスはマルチフォーマットだから、35o換算は100o前後 と考えると四分割ではない証明用のポートレート撮影だろうか。学校などの行事報告用としては、距離計が無く機動性が期待 できないので使えない。とすると、三脚とピングラによる風景切り取り用か。どうにも不思議なレンズだ。


☆再研磨の怖さは数点ある。ピントがずれる。画像が歪む。コーティングが消える、などだから、四面磨いてこの結果は大成功の 部類だ。コーティング無しフードせずで逆光がきちんと表現されたのは、レンズバレルなどの内面反射が少なくて、研磨したのが 前玉だったからではないだろうか。また、フイルム面積が大きいので歪みなどが目立たないのも有利に働いている。

 「***コーティングの効果」とか「逆光にフード必須」という言葉は希望・願望でしかなく、カメラ自体の本質的構造が一番大事な 要素であるというのは確認できた。


 全く使えない状態から画像が残せた。この報告が出来たことに達成感を感じている・・・I got it!(2)


☆大いにご活用を!>三色さん


January 2016


トップに戻る